第41話 召喚獣連れて買い物に

 ギルドマスターの部屋で召喚獣を一旦は消して、下に行く。


「皆に機械騎士と機械兵を召喚獣として認識して貰った方が良いのではないのか?」


 階段を降りている途中で白猫レオがそんな事を言うので、ルシウスとエールを飲みながら話し合う。


「可愛い猫ちゃんね!」

 

 白猫レオは、少しゴツイ感じの酒場のお姉様達の心もゲットしたらしく、お皿にミルクを入れたのをサービスしてもらっている。チップは余分にあげたけどね。


 素知らぬ顔で、私の膝の上に乗って、テーブルにふかふかの手をおいて、ミルクを飲んでいる白猫レオ。二人で頭を悩ませる。


「騒ぎになるんじゃない?」

 

 私は、冒険者が大騒ぎするんじゃないかと心配だ。


「そりゃな! でも、ダンジョンでいきなり機械兵や機械騎士に出くわすよりマシだろう」


 ルシウスは、そう言ってエールを飲み干す。


「そうだな! ここなら、ギルド職員も召喚獣だと認めてくれているんだから、きっと大丈夫だ」


 そう思ったけど、大騒動になっちゃった。


「機械兵と機械騎士だ!」

 冒険者達が、それぞれの剣を抜く。


「これは、私の召喚獣だ! ほら、ここにギルドが発行した召喚獣の証もある」


 攻撃されたら嫌なので、バリアで囲ってから、皆に召喚獣の証を見せる。


「召喚獣って機械なのに?」

「魔物だ!」

 

 ああ、煩い! 何人かは、人の言う事も聞かないし、ギルド発行の召喚獣の証を見もしない。


「俺の召喚獣の機械兵や機械騎士に攻撃したら、電撃をお見舞いするぞ!」


 ギルド一階の天井に雷雲を出す。暗い雲の中で稲光が走っている。


「電撃のアレクだ! ビリビリ攻撃されるぞ」

 蜘蛛の子を散らすように、ギルドから冒険者が居なくなった。


「アレク、今度の二つ名はまだマシだな」

 ルシウスに爆笑されたけど、一応は召喚獣としてお披露目できたんじゃないかな? 皆に嫌われた気はするけどね。


「迷惑をかけて御免!」と残っている受付や酒場のお姉様達に謝って、雷雲を消す。


「アレクさん、遠くからでも魔物ではなく召喚獣とわかるように、旗とか持たせたらどうでしょう?」


 ルーシーが心配してくれる。


「そうだな! 何か考えよう!」

 ルシウスも、ギルドの受付の中で一番しっかりしているルーシーの言葉には従う。


「旗かぁ……良いかも!」


 私の頭に浮かんだのは、戦国時代の足軽とかが敵、味方の区別ができるように、背中につけていた旗印だ。


「背負い籠も買わなきゃな! 丁度良い。こいつらがどのくらいの重たさを背負えるのか試してみようぜ!」


 冒険者が逃げ出した人気のないギルドの売店で、背負い籠の大きいのを試す。


「魔導具のほうでも、中に荷物を入れても大丈夫か?」


「嵩高くて、軽いのから試してみよう」


 コソッと、ルシウスと話し合う。今は、白猫レオの召喚獣だから、レベルアップしているんだよね。


「この背負い籠(大)を三個貰おう!」


「えっ、もしかしてソレに籠を背負わすつもりなの?」


 売店のお姉さんは、機械兵に荷物持ちをさせるのかと驚いている。


「ついでだから、旗印も作ろう!」


 まだ防衛都市カストラの中を機械兵を連れて歩くのは、大騒動になりそう。

 本当は、機械兵と機械騎士に慣れて欲しいけど、冒険者もあんな態度だったからね。

 一気に見慣れて貰うのは諦める。売店で材料を買って、金熊亭で作ろう!


「旗印?」

 こちらには無いのかな? 持ち歩いている鉛筆擬で、地図の裏に絵を描く。


「ほう、これを背負い籠に挿せば、遠くからでも魔物ではないとわかるな! これでも攻撃してきたら、アレクの電撃だ!」


 名案だと、ガハハと笑うルシウスだ。でも、ギルドマスターが下りてきたんだよね。


「アレク! ギルドで騒ぎを起こすな!」

 

「召喚獣の証を見せたのに、攻撃しようとしたから、脅しただけだ。実際に攻撃はしていない。それより、ギルドの権威が軽んじられているんじゃないのか?」


 ギルドマスターとルシウスが、睨み合ってある間に、私は売店で、棒と布とペンキと筆を買った。


「へぇ、ペンキも売っているんだ!」

 

「籠とかに自分の名前やチームの印を描く冒険者もいますから」


 ペンキで、マジックテント、マジック馬車にも印を描いても良いかな? これは、三人で相談しよう。

 売店の売り子さんににっこりと笑って支払いを済ます。


 白猫レオに籠を背負ったままの機械兵、機械騎士を消して貰って、ギルドを去る。


「ヨハンセン・ギルドマスターって金級だったって本当なの? あまり融通が効かないし、頭も固そう!」


 ルシウスに悪口を言ったら、意外な言葉が返ってきた。


「金級にも色々いるからなぁ。マックスみたいに圧倒的に強い金級もいるし、バッカスみたいに何故金級に上がれたのか理解できない奴もいる。ギルドの依頼を多く受けてなったのかもしれない。ヨハンセンが強い金級だったのは確かだが、ギルドマスターに向いていなかったのかもな!」


 冒険者にとって強さは正義だ。だから、金級は他の冒険者から常に注目されている。

 ヨハンセンは、冒険者としては強かったのだろう。ただ、交易都市エンボリウムのガンツ・ギルド長の方が、上手く運営している気がする。


「あっ、ギルド長とギルドマスターの違いはあるの?」


 微妙な呼び名の違い、気になっていたんだよ。


「えっ、ああ! アレクは北の大陸出身だから知らないのか。冒険者ギルドには格付けがある。南の大陸で一番高いランクは、防衛都市カストラのギルドだ。だからギルドマスター! 交易都市エンボリウム自由都市群パエストゥムのは、ギルド長! まぁ、防衛都市カストラには他にも西と東にも小規模なギルドがあるし、自由都市群パエストゥムにも何ヶ所かギルドがある。それらも一応はギルド長と呼ばれている」


 万里の長城みたいな防衛都市カストラ、まだまだ探検不足だね。中央の地区のちょこっとしか見ていない。


「それは、わかったけど……あの人が冒険者ギルドのトップで良いの?」

 

 ルシウスも不満が溜まっているみたい。


「本当なら、ガンツ・ギルド長の方が適任だと思うが、かなりの年だからなぁ。まぁ、それにギルドマスターになったばかりで、冒険者の感覚のままやっているのだろう。だが、このままだと突き上げを喰らうぞ!」


 それにしても、ジャスも『月の雫』のバッカス達を不安視していた。


「なぁ、草原の風、大丈夫なのか?」


 ルシウスも心配しているみたい。


「そろそろ、何か報告があってもいい頃だと思うが……」


「無事だと良いな……」


「そうだな! 明後日は、泊まらない予定だが、食料品を買っておこうぜ」


 えええ、ルシウスと買い物したら、干し肉オンリーになりそう! アイテムボックスがバレているのだから、美味しいものを備蓄したい。


「エールの樽、アイテムボックスに入るか?」


「おっ、それは賛成! ただ、ジャスが飲みすぎないようにしないとね」


「アレクもだろう!」


 ふぅ、これは三人でルールを作らなきゃいけないね。一杯だけ! とか。

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