第42話 ルシウスとお買い物

 ギルドを出た後、ルシウスとエールや食料品の買い物をした。

 エールの樽は、小型にしたよ。最終的には私のアイテムボックスに入れるから、大樽でも良いのだけど、店ではルシウスのマジックポーチに入れるから。


 それと、大樽だと飲みすぎてしまいそうだからね。三人ともエールが好きだから。酔っ払ってダンジョン攻略は危険だもの。

 

「ねぇ、ジョッキがないと困るんじゃない?」


「ああ、それとお泊りなら簡単な食器や調理器具もあった方が良いかもな。アレク、料理はできるか?」


 サーシャは修道院育ちだから、簡単な料理はできる。


「粥とかシチューとか焼くだけならな。調味料も必要になるし、食器も……ああ、銀食器、売らなきゃ良かったな!」


 ルシウスは、ダンジョンで銀食器で食事なんかしないさと笑う。


「これまでは、どうしていたの?」


 前に貰った紙にダンジョンの潜った階数が書いてあった。十五階はまだ踏破していないけど、かなり進んでいるよね。


「ああ、泊まりもあったが、干し肉とパンを齧っていたからな。水が無くなったら、戻るって感じだ」


 魔物の肉がドロップしても、生では食べられない。


「あっ、だから食物ダンジョンが一番進んでいるんだね」


 果物がドロップするから、水分の補給にもなる。


 建物の陰で、エールの小樽を私のアイテムボックスに入れる。マジックポーチの収納量は、あまり多くないからね。


「薪も買わなきゃいけないし、火打石もいるな。鍋とフライパンも必要になるのか?」


 ルシウスと話し合いながら、食器類、鍋、フライパン、薪などを買っていく。


「明後日は、日帰りの予定だけど、銀熊亭の女将さんに多めに肉詰めパンを作って貰おうぜ!」


 私のアイテムボックスの中に入れておけば、保存できるからね。


「うん? それなら、調理したシチューを鍋ごと入れておけば良いんじゃないか?」


「それ、良いかも! 大鍋にシチューを作って貰って、小鍋で出せば良いんじゃない?」


 また、金物屋に戻って、大鍋、小鍋を買う。ついでに水の樽、桶と柄杓も買っておく。暗闇ダンジョンでは浄水が無双するからね。


「シチューなら、森亭が良いな!」

 ルシウスも、金熊亭の女将さんは好きだけど、料理はまぁまぁなので同意する。


 森亭に大鍋を預けて、ビッグエルクの赤ワイン煮を作ってもらう。これは、明日、ルシウスが取りに行って、私のアイテムボックスに入れる予定!


 パンは、焼きたてのが店頭に並んでいたので、思いっきり買う。

 それと、ハムも! 干し肉の方が保存期間は長いけど、ハムの方が柔らかくて食べやすい。


 これらは、紙に包んでもらい、建物の陰でアイテムボックスに入れる。


「我の食べ物も用意せよ!」

 カバンの中で寝ていると思っていた白猫レオに言われて、好物のミルク、チーズを取っておけば良かったとルシウスと顔を見合わせる。


「それは、金熊亭の女将さんに頼もう!」

 アルミラージの茹でたのとか、大量に作ってくれるからね。それを薄切りにしたら、良いと思う。


「我も森亭とやらのシチューが良いから」


「えっ、味が濃いのは駄目なんじゃないの?」


「猫ではない! 何度も言わせるな」


 猫は、腎臓が悪くなりやすいから塩分注意だった。そのイメージが強かったみたい。


「それと、アンジェラの焼き菓子も!」


 ふう、贅沢な白猫レオだよ。

「あれは、たまの贅沢品なの!」


「まぁ、まぁ、白猫レオの言うことを聞いてやれよ」


 ルシウスは、白猫レオ女神様クレマンティアが付けてくれた従魔だと思っているので、ご機嫌を損ねない方が良いと忠告する。

 確かに神様ガウデアムスだからね。


 アンジェラで何個か焼き菓子を補充しておく。


「なぁ、食物ダンジョンに行こうよぉ!」


 白猫の好物のミルクやチーズ、ちょっと高額だった。


「まぁ、迷宮ダンジョンの十五階まで攻略したら、気分を変えても良いかもな。それに、トレント肉も食べたくなったし!」


 錬金術の部品や絹などがドロップする迷宮ダンジョンは、機械系の魔物は雷に弱いから、私との相性は良い。ただ、飽きてきた感じもするんだよね。

 それをいうなら、一番攻略しやすいのは暗闇ダンジョンなんだけど、私はホラーが苦手なので、あまり気が進まない。

 

「迷宮ダンジョンは、隠し部屋が美味しい! まぁ、あそこまで魔物が沸くには時間を置かないといけないだろうが……」


 ただ、毎回、一階から潜り直すのって凄く面倒! 


「馬鹿者! 転移の魔法陣を使えば良いだけだ!」


 白猫レオって、『馬鹿者』と罵らなきゃ会話ができないの! って腹が立つけど、名案だ!


「そうか、使える魔法なら、魔法陣も使えるんだね!」


「低脳!」と馬鹿にされたけど、これは良いんじゃないかな?


「えっ、隠し部屋に転移できるのか?」


 ルシウスは驚いている。


「一度、試してみよう! 隠し部屋の全てに魔法陣を設置する必要はないけど、何回も行きたい隠し部屋もあるから」


 ルシウスは「子ども部屋!」と叫ぶ。


「魔導書は貴重だからな!」

 あそこ、他のドロップ品はイマイチだけど、魔導書は良いよね。


「隠し部屋には図書室があるかもな」

 ぽそっと白猫レオが爆弾発言をする。


「そうか! 図書室なら魔導書が多くドロップするかも! 兎に角、十五階を目指そう」


 ダンジョンは潜れば潜るほどドロップ品が良くなる。隠し部屋もその方式が当てはまるのかはわからないけどね。だって、一階の隠し部屋で白猫レオを見つけたから。


「ねぇ、魔法陣って石に刻むの? ダンジョンの転移の魔法陣は石に刻んであるよね?」


 白猫レオに馬鹿にされつつ、細かい魔法陣の作り方を教えて貰う。


「低脳! ちゃんと知識を読めば分かる筈だ!」

 読んで知識は得られるけど、魔法陣を使うのって初めてなんだもん。


「ダンジョンは固定だから、石に刻んである。魔石は、魔物から補っている。お前がバリアの魔法陣を使うなら、羊皮紙か紙で良いだろう」


 ペンキで良いのかも不安! だって前世のファンタジーでは、血とかおどろおどろしい物で描いていたじゃん!


ゲーム脳めニャンニャン!」と笑われた。


「魔法を通しやすい方が良いのは確かだ。魔石を砕いて染料に混ぜた方が効果は長持ちするだろう」


 血じゃないなら、良いかもね! 魔石を砕く乳鉢と乳棒を買って帰る。これから、竜の肝とかを砕くのにも便利そう!

 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る