第43話 三連休の最終日

 昨日は、ギルドで従魔と召喚獣登録した後、ルシウスとあれこれ買い物をした。


 途中でルシウスと別れてからは、アンジェラでティータイム! 白猫レオは、可愛いさアピールして従業員のお姉さん方の心をキャッチしているから、ミルクと焼き菓子を堪能した。


 私も、お茶と新作のナッツ入り焼き菓子を食べて満足!


 今度、食物ダンジョンでバラのジャムやローズヒップとかドロップしたら、お姉さん達に差し入れしよう。

 白猫レオを優遇して貰っているからね。普通は、ティールームに猫はダメなんじゃないかな?


 今日は三連休の最終日、ジャスもいるから朝食の席で、星の海シュテルンメーアの印を王冠の上の三つ星で良いか確認する。


「それで、良いんじゃない」

「問題ない」

 まぁ、ジャスもルシウスも拘りはなさそう。


「旗印を機械兵と機械騎士に付けようと思うんだ。昨日、ギルドで騒ぎになったからさぁ」


 旗印の旗は、金熊亭の女中に縫い賃を渡して縫ってもらっている。

 私も縫えない訳じゃ無いけど、まぁ、縫って貰った方が縫い目とか揃っているよね!


「今日は、旗印と背負い籠、それに魔導具に印を描こうと思っている」


 それらは、ルシウスとジャスも手伝ってくれる事になった。馬車とかにも描くよ!

 この世界は、所有者をきちんと示さないと、盗まれたりするみたい。治安悪いからね!


「午前中は、あれこれに印を描いてすごそう!」


 そう言う事で、三人で金熊亭の馬小屋に向かう。


 魔導具の機械兵の三体、そして機械騎士の胸と背中に印を描く。ギルドで召喚獣に現れたのと同じ感じにする予定!


 それと旗印には、縦に印を三個描くと良い感じだ。背負い籠にも大きく描く。


「へぇ、ジャス上手いね!」


 ルシウスは意外と大雑把! 消耗品の籠に描かす。ジャスと私で馬車やテントに描くよ。これは、丁寧に描かなきゃね!


「機械馬はどうする?」

 馬車を引かしたら移動が楽になる。それに乗れるのかな?


「機械馬を出してみるよ」

 これって、魔道具としては使い勝手が良いのか疑問。裸馬の状態だからね。


「乗って移動するなら、鞍が必要だな。馬車を引かすにも馬具がいるぞ」


 話し合って、移動するまでに馬具を買う事にする。それに、もしかしたら迷宮ダンジョンでドロップするかも知らないから、今すぐは買わないよ。


 額と身体に召喚獣と同じように描く。マジックテントにも印を描いて、これで書き物は終了? 


「あっ、魔法陣を描くのに魔石を砕かなきゃいけないんだ」


 これは力のあるルシウスとジャスに任せる。乳鉢に魔石を入れて、乳棒でゴリゴリ潰してもらう。


 それをペンキの残りによく混ぜる。


「バリアの魔法陣と転移の魔法陣を描いてみるよ」


 女神様クレマンティアの知識頼りで、大きい羊皮紙に魔石混じりのペンキで描いていく。


「魔石を置いてみろ!」

 白猫レオに言われて、魔石を魔法陣の真ん中に置くと、バリアが張れた。


「魔石、一個で何時間バリアが張れるのか、試さないといけないな」

 ルシウスは慎重派だ。


「転移の魔法陣は対にした方が良い」

 白猫レオが珍しく親切に教えてくれた。いや、これまでも教えてくれた事もあるけど『低脳!』とか『馬鹿者!』とかが先に付いていたからさぁ。


「対にするなら、迷宮ダンジョンの隠し部屋と何処にしたら良いのかな?」


 ルシウスはケチだけど、転移魔法陣の便利さを確かめたいと思っている。


「迷宮ダンジョンの近くの宿屋の部屋と隠し部屋に転移魔法陣を置いたら良いと思う」


 宿代は掛かるけど、それが良いよね?


「兎に角、明日、十階の隠し部屋を探索してから、十一階に挑もうぜ! そこのセーフゾーンでバリアの魔法陣を試そう!」


 午前中は、描きもので終わった。何となくペンキ臭いから、浄化ピュリフィケーションを全員に掛けておく。



 午後からは、自由時間になった。

「回復薬を作っても良いけど……準竜の肝を乾かさなきゃいけないんだよね」


 準竜の肝を休日一日目に乾燥させておけば良かったんだ。それに、乾燥させるザルも買わないといけなかった。


「魔物の肉を乾燥させているんだよね。何か装置とかあるのかな? 燻製機はありそうだけど、燻す必要はないんだよ」


 こんな時は、ついついカインズ商会を頼ってしまう。


「乾燥させる機械はありますよ。干し肉を作る時、燻製肉だけではなく、料理の材料として乾かす場合もありますから」


 燻製肉とは別にただの干し肉の需要もあるそうだ。ジャーキーとか、スープの出汁にする時はこちらの方が良いとか。


 因みに、ルシウスやジャスが休憩時間に齧っているのは、干し肉だけど燻製肉やジャーキー! 見た目の違いはよく分からないから、干し肉と言っているけどさ。


「アレク様、どうぞ乾燥機をお使い下さい」


 様付けられると、ちょっと腰が引いちゃうけど、中級回復薬(秀)は作ってみたいから、ご厚意に甘える。


「準竜の肝をスライスして、乾燥させるんだ」


 セットして、後は待つだけ。あっ、本を持ってくれば良かったな。これからは、アイテムボックスに入れておこう。

 夜、読んだ後、ベッドサイドに置きっぱなしにしていたよ。


 そんな呑気な事を考えて、椅子に座って待っていたら、ハモンドさんがお茶でもと誘ってきた。


「そんなぁ、乾燥機を使わせて頂くだけでも……」と遠慮したけど、あちらは遣り手の商人! 口では負ける。


 香りの良いお茶とお菓子を綺麗なメイドが持ってきた。これ、チョコレート菓子! アンジェラでは見かけない。何処のだろう?


「これは、パテスリー・ナナの新作のお菓子なのです」


 うっ、私がスイーツ好きなのを見透かされている。でも、初チョコ菓子! 一口食べる。


「美味しい!」

 この世界で食べた物の中で一番美味しいよ。


「パテスリー・ナナは、紹介状がないと購入できません。これをお持ち下さい」


 簡単な地図と紹介状を貰った。でも、紹介状で、不愉快な店を思い出しちゃったんだ。


「おや、如何されましたか?」

 ハモンドさんに丸わかりだね。私は、魔導具店で追い払われたと告げる。


自由都市群パエストゥムは、少しこのところ天狗になっていますね。海賊の寝ぐらを提供している都市もありますし……防衛都市カストラにも圧力を掛けているみたいです」


 えっ、そんな事情を私に話して良いの?


「ふふふ、このくらいは誰でも知っていますよ」


 そうなんだ! ルシウスやジャスも話していたけど……防衛都市カストラ自由都市群パエストゥムに忖度しているのは問題だよね!


「あのう、星の海シュテルンメーアは迷宮ダンジョンに潜っているのです。あそこは、魔導具の部品がドロップするのですが、自由都市群パエストゥムじゃないと組み立てられないのでしょうか?」


 ハモンドさんは、グレアムさんを呼び出して、一緒に相談する。


自由都市群パエストゥムの錬金術師が魔導具を作るのですが……もしかして、アレク様は作れるのですか?」


 二人の圧が強い。


「簡単な魔導灯とかなら、普通の人でも組み立てるだけだからできますよ。鍛冶屋や武器屋ならできるでしょう。機械兵とかは、少し難しくなりますが、部品を組み立てるのは錬金術師でなくてもできます」


 二人が口々に「自由都市群パエストゥムめ!」「偉そうにして!」と叫ぶ。


「錬金術師を独占して、やりたい放題なのです。その上、このところ魔導具の値段は高騰するばかりです」


 これ、良いんじゃないかな? ルシウスに相談しなきゃいけないけど、魔導灯とかギルドを通さずに売るルートができそう。


「リーダーと話し合ってみますね!」

 乾燥した準竜の肝を受け取って、カインズ商会を辞そうとしたけど「中級回復薬ができましたら……」とハモンドさんに言われちゃった。

 まぁ、乾燥機を使わせて貰ったしね! 何本かは納めても良いかも。

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