第66話 帳面を買おう
昨夜は、飲んで騒いで終わった。二日酔いにならないのは
朝食の間に、お湯を運んでもらう。
「おお、アレク……」
うん、ルシウスとジャスは二日酔いだね! 休日だから、下級回復薬も飲まないで節約している。
「
「本当によく食べるなぁ」と感心しちゃう。
金熊亭、食事の量が多いんだよね。女将さんは、私があまり食べないのを心配しているみたいだけど、大男を標準に考えられても困る。
サーシャは、貴族の血が流れているから、女の子としては長身だ。庶民の男の人ぐらいの背はあるけど、細い。
それに成長期は終わっているから、そんなに爆食しないよ。
うん? ルシウスもジャスも成長期は終わっているよね? 年齢知らないんだ!
ジャスは、二十代後半に見えるけど、意外と若いのかも。クレアに年齢を聞くなんて命知らずじゃないけど、二十代前半だと思う。クレアに育てられた弟だから、もしかして十代?! それはちょっとねぇ、二十歳ぐらいだと思いたいな。
ルシウスは、ジャスよりは年上だと思う。出会った頃は、三十歳ぐらいに思っていたけど……もっと若い。クレアと同じ歳ぐらいかな?
「風呂に入ってから、帳簿と裁縫道具を買ってくる」
お代わりまでしているので、付き合っていられない。
「ああ、昼からは作業だな!」
ジャスには、裁縫を手伝ってもらうし、ルシウスには魔石を粉にしてもらおう!
風呂上がり、冷風機で汗を引かせてから、綺麗めの普段着に着替える。
シャツは、快適生地のだけど、ズボンとジャケットと靴は新しく買った奴。
ただ、鞄が前から使っているから、少しくたびれてきている。
「
お買い物へ出発だ!
「
女将さんに、部屋で
白シャツ、麻の生成りのジャケット、麻のベージュのズボンに茶色の靴。どこも変じゃないよね? 女将さんが、じろじろ見ている。
「アレク、拐われないように気をつけるんだよ! 細い路地とかには行ってはいけないよ!」
えっ、そっち!
「女将さん、一応、俺も銀級の冒険者なんだから、大丈夫だよ」
ああっ、言ってなかったっけ! そうか、ギルドでお祝いしたんだ。
「そうかい! それは、おめでとう! 銀級なんて、なかなかなれないと聞いたよ」
そう言ってくれたけど、金熊亭に泊まる冒険者は、殆どが銀級だと思うよ。
部屋に風呂があるから、一泊二
帳簿にする帳面を探して歩くけど、文房具店なんて見つからない。こう言う時、これまではカインズ商会に尋ねに行ったんだけど、上級回復薬を作れるのではないかと察知されているから、行きにくい。
「そうだ! 木工屋に行こう! あの親父さんなら、裁縫道具を売っている店も教えてくれそう!」
エールの小樽の台を作ってくれたし、今は本箱を作って貰っているんだ。
「お客様、何の御用でしょう?」
顔を忘れちゃったの? 何だか凄く丁寧な応対だ。
「えっ、親父さん、俺だよ!」
ジロジロ顔を見て、アッと思い出したみたい。
「ああ、エールの台の! まだ本箱はできてないぜ! そんな良い格好をしているから、お偉い様のご子息かと思っちまったぜ!」
まぁ、サーシャは庶子とはいえ、あのクズ聖王の娘だから、お偉い様の子だけどさ。
「本箱の件じゃないんだ。親父さんに、鞄のもう少し上等なのと、裁縫道具と帳面を売っている店を教えて欲しいと思ったのさ」
鞄は、チラリと私が肩から下げているのを見て頷いている。服装に似合わないボロけている鞄だからね。
「鞄は、この通りにもあるぜ。裁縫道具は、万屋に売っているだろう。帳面? もしかして、本気でクランを作るつもりなのかい?」
信じていないから、シャツから銀級のギルド証を取り出して見せる。
「ほぉぉ! ダンジョンでエールを飲むって聞いた時から、やるなぁと思っていたけど、銀級なんだな! クランは金級にならないと作れないって噂だけど、金の管理に目を付けるのは良いことだ!」
ちょっと横道に逸れて、金勘定の大切さをグチグチ言われたけど、帳面を売っている店を教えてくれた。そこは、下町ではなく、少し高級な品物を扱っている店が並んでいる辺りだ。
「この地図の店にも行きたいんだけど?」
パテスリー・ナナの地図を見せると、帳面を売っている店の近くだと教えてくれた。
「ありがとう!」
先ずは、同じ通りにある鞄屋で、今よりもマシな鞄に買い替える。これまでのは、その中に入れる振りをしてアイテムボックスにしまう。
ついでに、そこで万屋の場所を聞き、裁縫道具も買った。
そこから、かなり歩いて……道に迷った。
「
うっ、凄く高級感のある外装! それに、ここにも警備員が……まぁ、魔道具屋のような強面ではなく、優男のドアマンだけどね。
ただ、ここで揉めたら怖い警備員がやってくる感じだよ。
「あのう、紹介状を貰ったのですが……」
ドアマンにハモンドさんから貰った紹介状を見せると、扉を開けてくれた。
良いの? 中身を確認しないで? 兎も角、中に入ったら、良い香り!
「いらっしゃいませ」
おお、綺麗な従業員さんだ。この人に紹介状を渡せば良いのかな?
「カインズ商会のご紹介ですね」
あれ、中身はチェックしないの? まぁ、買えるなら良いけど。
えっ、扉を開けてくれたら、そこはサロン? 猫脚のソファーとか、お城のサーシャの部屋にも無かったよ。冷遇されていたからね。
でも、嫁入り行列の高級宿にはあったかもね。逃げ出すことに集中していたから、家具なんかチェックする余裕はなかったけどさ。
「どのお菓子をご所望でしょうか?」
あっ、良かった! 名前だけでは、わからないよ。銀のトレイに、何品ものチョコレート菓子を並べて見せてくれる。
「あのう、ここで食べて選ぶのは駄目でしょうか?」
にっこりと笑って、ティーセットとチョコレート菓子をお皿に盛り付けて持ってくる。
「ううう、悩むけど、全部二つずつ貰います」
どれも美味しくて選べない。十六
でも、一応は聞いておこう。
「ここは、従魔と一緒でも入れますか? あっ、見た目は子猫みたいな従魔なのですが……」
駄目だよね? と半分諦めて聞いたけど、従業員さんはにっこりと笑う。
「躾ができている従魔なら、大丈夫ですよ。またお越しください」
うん? パテスリー・ナナの名刺を貰えた。って事は、また来られるんだね。
帳面を売っている文具屋も、高級そうだった。帳面だけでなく、レターセット、インク、定規、画帳も買ったよ。
『
銀級になったのを知らせたいな。
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