第67話 マジックバッグを作ってみよう

 買い物を済ませて、金熊亭に戻る。部屋に入ると白猫レオが起きていて、置いて行ったのが不満そうだ。

「我を置いて行ったな!」

「寝てたじゃん!」


 従魔として私を護らなくてはいけないとか、ぐずぐず文句を言っているが無視しよう。

「お昼を食べたら、マジックバッグを作るから、白猫レオに教えて欲しいんだ」

「フン! 我の知識を分けてやろう!」

 まぁ、機嫌がなおったから良いか。白猫レオを連れて食堂に降りると、朝食をたんまり食べたルシウスとジャスが、昼食をガッツリ食べている。


 私は、お買い物で結構歩き回ったから、野菜多めにしてもらった煮込みを完食! 白猫レオは、寝ていただけなのに、女中さんに細かく切って貰った肉を食べている。

 前は、女将さんが大きく切っていたけど、今は女中さんが親切に食べやすく切ってくれている。 

 本当に、味がまぁまぁなのと、ベッドマットがへたっているのと、掃除がいい加減なのを除けば、とても良い宿なんだよね。


 白猫レオが食後、寝てしまうのではと心配したけど、午前中に寝ていたから、起きている。

「俺の部屋に集合な!」

 こういう時、アイテムボックスは便利だよね。ルシウスの部屋に道具を持って行かなくて済むもの。


「これがサンドウォームの皮かぁ」

 落札したうちの一枚を出してみる。

「ああ、こいつって嫌な魔物なんだよなぁ。砂の中から突然攻撃してくるからさぁ」

 ジャスが眉を顰めている。


「先ずは、広げようぜ!」

 ルシウスは、畳んであるサンドウォームの皮を広げようとするけど、デカい。

「広げられないぜ!」

 三人で皮を引っ張るけど、まだ広げきれていない。


「半分ずつ広げて、ハサミで切っていけば良い」

 白猫レオに低脳と呆れられた。

「これって、大きな袋にする方が収納量は増えるのか?」

 ルシウスの質問に、白猫レオは尻尾をパタンと床に打ち付けて答える。

「サンドウォームの皮なら、容量は小だ。だが、作り方によって微妙な差はできるだろ」

 つまり、サンドウォームの皮でいくら大きな袋を作ろうと、容量は小のままだけど、やはり差は出るんだね。


「ねぇ、これで二つ作ったら、それでも容量は小なの?」

 白猫レオは、少し考えて頷く。

「少し容量は小さくなりそうだが、マジックバッグ小はできる」

 取らぬ狸の皮算用を三人で始める。


「俺たち用のは、一枚丸ごと使って作ろうぜ! 売る奴は、半分で作ったら、二倍の儲けになるんじゃないか?」

防衛都市カストラ交易都市エンボリウムの両方のオークションに掛けたら、ボロ儲けだ!」

「三枚作るのって、大変そうだけど、やってみよう!」


 白猫レオが呆れて「先ずは切れ!」と言うので、買ってきたハサミで切っていく。

 ジャスとルシウスに皮を引っ張ってもらいながら切るのだけど、伸縮性があるから真っ直ぐに切りにくい。

 それに、やはり床に広げた方が切りやすいよ。


「アレク、家具を収納したら良いんじゃないのか? できない?」

 ジャスに言われてハッとした。

「ベッド、机、椅子!」

 アイテムボックスの中に収納した。埃も浄化ピュリフィケーションして、皮を半分広げる。


 それでも皮を引っ張ってもらわないと切りにくいけど、床に広げた方が格段にスピードアップしたよ。

 長い長方形に皮を切断した。それと、細く細く切った革紐もね!

「ねぇ、この残りの皮でマジックポーチはできない?」

 かなり端が多く残っているんだよね。

「マジックポーチかぁ……できるけど、容量は小だぞ」

 

 金に細かいルシウスの目が光る。マジックポーチは、金級や銀級は持っている冒険者もいるが、持っていない方が多い。それに、商人達も貴重品とか入れたいだろう。


「それは、後にして、先ずはマジックバッグだろう!」

 このマジックバッグ、縫うの大変だった。目打ちで、皮の端に穴を開けていくんだ。

 皮の端に、ペンで線を引く。そこに、一センチ間隔で穴を開けるのだ。

「目打ちを三本買って正解だな!」と思ったけど、ルシウスは途中で失格!


「ちゃんと同じ間隔に穴を開けないと駄目だろう!」

 ジャスに叱られて、大男がしょげている。

「ルシウスは、魔石を粉にして!」

 魔法陣の時も魔石を粉にして混ぜたけど、マジックバッグの方がより多くの魔石を混ぜる方が良いみたいなんだ。


 ポツポツ、ダンダン、皆で真剣に作業しているけど、白猫レオはやはり寝ている。まぁ、癒されるから良いんだけどさ。

 目打ちで穴を開けたら、ジャスと縫っていく。

「この革紐で、縫っていくのだけど、サドルステッチが良いと思うんだ。馬具とかに使う縫い方なんだけど……ジャス、知らないよね?」

 革紐の両端に針を二つ通して、クロスさせながら縫っていくのだ。

 ジャスは、サドルステッチは知らなかったけど、見たら、裁縫の技能があるからできるようになった。


「なぁ、床に座ったままでするのか?」

 ルシウスに言われて、ベッドと机と椅子を出す。

 ルシウスは、椅子に座って机の上でガンガン乳棒で魔石を潰していく。

 私とジャスは、反対側からサドルステッチ縫いをベッドに腰掛けて頑張る。

 白猫レオは、床で寝ていたけど、ベッドに移したよ。


「ああ、これで縫えたな!」

 ジャスが肩が凝ったと腕をグルングルン回している。

「ねぇ、白猫レオ!」

 白猫レオを抱き上げて起こすと、不機嫌そう。本当に寝過ぎだよ!


「魔法陣は、アイテムボックスの中の方が綺麗に描けるだろう。インクに魔石の砕いたのを混ぜ、中に入れろ!」

 えっ、それならこれまでの魔法陣もそうしたら良かったのでは?


 文句は言いたいけど、不機嫌な白猫レオには逆らわない。寝起きの白猫レオの目、瞳孔が小さくなってちょっと怖い。まぁ、それも可愛いと思うのは猫好きだからかも。


 アイテムボックスに縫った袋を入れ、インクに魔石の砕いた粉も混ぜて入れた。

「ほら、アレク! 魔法陣を袋の内側になるべく大きく描くのだ」

 そんな簡単に言うけど……でも、いつも白猫レオ任せなのは良くないよね! 


「ええっと、マジックバッグの魔法陣は……それをなるべく大きく描く!」

 白猫レオがホッと溜め息をつく。

「少しだけ使えるようになったな」

 ううう、まぁ、仕方ないんじゃない?


「できたのか!」

「マジで!」

 二人が騒ぐので、マジックバッグを取り出す。

「おお、小さくなっているぞ!」

 入れる前は、ベッドぐらいの大きさだったからね。今は、ルシウスが持っているマジックバッグと同じぐらいの大きさだ。肩掛けの、中型のバッグぐらいかな? 肩紐とかつけないといけないな。


「どのくらい入るのだろう?」

 ジャスが椅子を入れようとしているけど、鑑定を掛けるよ。

「鑑定! 鑑定! 鑑定! ああ、マジックバッグ小だよ」

 三人で抱き合って喜ぶ! このままでは使いにくいから、肩紐をつけよう!

「肩紐は、普通の魔物の皮で良いんじゃないのか?」

 ケチケチルシウスの提案で、そうすることにした。肩紐が伸びても使いにくいからね。


 三人で「エールを飲もうぜ!」と言っていたら、白猫レオに「まだ作るんだろう!」と叱られた。でも、一息したいんだ!

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