第64話 オークションで落札しよう 1

 飲みすぎないように気をつけて、チビチビお酒を飲む。

「美味しいなぁ!」

 そう、ハチミツ酒では無いけど、かなりアルコール度数が高い。

「ジャス、飲みすぎるなよ!」と注意するルシウスも小さなグラスだけど飲み干している。


解毒ミトリダテースしろ!」 

 白猫レオに言われて、二人に掛ける。ちょっと良い気分になっていたジャスに嫌な顔をされたけどね。


「ふぅ、これは危険だな! 気分を大きくさせて、高額入札させるつもりかも」

 ルシウスも、これ以上は飲む気はないみたいで、酒とグラスをテーブルの向こうに押し出す。


「ふぅ、強い酒だけど何なんだ?」

 ジャスに聞かれて、鑑定を掛ける。

「ウイスキーだってさ!」

 この世界にも蒸留酒があるんだね。ハチミツ酒も度数が高いけど、蒸留酒じゃなかった。

「ふうん、高い酒は美味しいなぁ」

 鑑定を深く掛けると、原産地が出てくるんじゃないかな? 手に入れたいよ。

「鑑定! 鑑定! 鑑定! ……ふむ、ふむ、えええっ! 食物ダンジョン産!」

 

 ジャスとルシウスの目が光る。

「食物ダンジョンの深い階でドロップするのか! それは行かなきゃいけないな!」

 でも、チーズを食べ終わった白猫レオが怒る。

「暗闇ダンジョンで、アレクにホーリーアローとホーリーランスの練習をさせないといけないのだ!」

 あっ、そんな話をしていたかも? でも、暗闇ダンジョンより、食物ダンジョンの方が楽しそうだよね!


「まぁ、アレクは暗闇ダンジョンと相性も良いし、ピカピカの剣や斧もある。最奥まで踏破したい」

 ふぅ、神聖魔法の私と暗闇ダンジョンは確かに相性が良いけど、ホラー苦手なんだよ。


「そうだな! 暗闇ダンジョンを踏破したら、基礎ダンジョンを踏破しようぜ。

あそこは、基礎ダンジョンと呼ばれるだけあって、色々なバージョンがある。前は……」

 うん? ジャスが途中で言葉を止めた。怪しい!


「もしかして、十一階からは暗闇ダンジョンになるの?」

 これ、嫌だよね!


「そう言われているけど、十六階からは鉱山ダンジョンになるって噂だぞ! 鉱山ダンジョンは自由都市群パエストゥムの近くにしかないから、金になるそうだ」

 ルシウスは、金儲けに真っ直ぐだね。


「基礎ダンジョンは、何階まであるの?」

 中級者用のダンジョン、大体は二十階程度だと聞いたけど、基礎ダンジョンと迷宮ダンジョンはギルドで貰った紙にも書いてなかったんだ。


「基礎ダンジョンは……まだ誰も踏破していないんじゃないか? いや、金級の奴らなら、しているのか? 普通の冒険者なら、足慣らしに十階まで行った後は、他のダンジョンを潜るからな」


「ふうん? それって! もしかして、基礎ダンジョンのボスがベビーモスって可能性もあるってこと?」


「ボスは、決まっていないからなぁ。暗闇ダンジョンは、何組か踏破したと聞いたけど、ボスは色んなバージョンがいるみたいだ」

 それって、嫌だなぁ。なんて、話しながらも、オークションの出品リストもチェックするよ。


「やはり、竜の肝があるぐらいだから、メインは竜の牙、皮、肉だな! おっ、アレクの黄金の毛皮もかなり後ろだし、宝石付きの金鎖、遠見鏡もまぁまぁの順番だ」


「竜の肉って美味しいのかな?」

 ルシウスもジャスも食べた事がないと首を横に振る。

「竜の肉は美味しいぞ」

 白猫レオは食べた事があるのかな? 

「いつか、竜を討伐して食べてみたいな!」

 あれ? ルシウスとジャスが考え込んでいる。


「なぁ、竜を討伐できる奴って『金の剣』のマックス以外にいたか?」

 ジャスの言葉に、ルシウスも頷く。

自由都市群パエストゥムにも金級のパーティはいるだろうが、これは……上級者用ダンジョンを制覇したのか?」

 二人で話し合った結果は、わからないだった。


「オークションに予め出品予定が掲載されていたんだ。少なくとも、二日前はギルドマスターは『金の剣』がダンジョンから出たとは知らなかったし、制覇したなら大騒ぎになった筈だ」


 ギルドマスターは、オークダンジョンの捜索を『月の雫』に依頼したけど、捗々しい成果が出なくて苛ついていた。『金の剣』が戻ったら、すぐに連絡させる筈だ。クランだから、本拠地があるので、連絡も取りやすいよね。


「つまり、『金の剣』ではない誰かが竜を討伐したってことなのか! それも、どこのダンジョンも制覇されていないってことは、竜はボスじゃなくて中ボスなんだな!」

 ジャスが吠える。煩いけど、気持ちは分かる。

「上級者用ダンジョン、半端ないね!」

「馬鹿者! オークダンジョンも上級者用ダンジョンに成長しているぞ! 外にオークジェネラルが出没する事態なのだからな」

 白猫レオに叱られたよ。


 そんな事を言っているうちに、オークション会場には客がいっぱいになった。金持ちって多いんだね。


「御来賓の皆様、お待たせ致しました。オークションを始めさせて頂きます」

 うん、台の上に司会者が立ち、リストの一つ目からセリが始まった。

 札を挙げている人も多いけど、あまり価格は高くない。とはいえ、落札価格は百金貨ゴルディを超えている。


「おい、楽しみだな!」

 先ずは、お化け花がドロップした宝石! 二十個程が纏めて出してある。

 

 何だかドキドキして見学していると、何人かが札を挙げて、三百金貨ゴルディになった。

 金の王冠は、二百五十金貨ゴルディ


 次は、待ちに待ったサンドウォームの皮だ。

「三百金貨ゴルディまでは、他の落札相手も出すかもしれない。兎に角、落札するぞ!」

 リーダーのルシウスに札を任せる。


「どうか、他の落札者が高値をつけませんように!」と祈ったお陰か、一人が札を挙げたけど、ルシウスが二回揚げなおしたら、諦めた。

 

「二百五十金貨ゴルディだ!」

 私とジャスは、目標額より低価格だったので喜ぶ。

「次もあるぞ!」白猫レオに言われて気を引き締める。

 同じ出品を続けるのは、避けて、何個か挟んだ後、サンドウォームの皮が出た。

「今度は、しぶといな!」

 私には、同じサンドウォームの皮に見えたけど、違いがあるのかな? それとも、一つは落札したいと考えていたのか?


「こちらは三百金貨ゴルディを超えそうだな」

 ジャスとドキドキしながらオークションを見つめる。

「三百金貨ゴルディ、これ以上はありませんか?」

 早く木槌を打てよ! と司会者に怒鳴りそう。

 コン! と木槌が打たれて、三百金貨ゴルディで落札した。


 ルシウスもホッとして、机の奥に押しやった酒をグラスに注いで一気飲みした。

「乾杯しようぜ!」

 ジャスがグラス三杯に酒を注いで「乾杯!」したよ。

 二人は目的を達成して、お寛ぎモードだけど、私は竜の肝を落札したいんだ。

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