第20話 火食い鳥を見つけよう!

 オークなんか探していないのに遭遇した。肝心の依頼の火食い鳥カセウェアリー、いないんだけど。

 依頼を失敗したら、ペナルティがあるのかな? 優男に聞いておけば良かったよ。罰金を取られるのは、嫌だな。


 だって、サーシャのサンダル、元々、ボロだったけど、森歩きに適さない。ブーツが無理でも、靴ぐらい買いたい。

 それに、兵士の服、毛織物だから、南の大陸では暑いんだよ! ルシウスやジャスは、麻が入った綿のシャツの上に皮の鎧を着ている。

 皮の鎧は無理でも、胸当てぐらいは初心者も装備しているから、欲しいよ!


「もっと、森の奥なのかも?」

 資料室で見た生息域、ここら辺だと思う。あの三角岩が目印に書いてあったから。

 でも、火食い鳥カセウェアリーも移動するだろう。


 転移を繰り返し、火食い鳥カセウェアリーを探す!


 見つけた! けどさぁ、オークが羽を毟って食べようとしていた。


「俺の火食い鳥カセウェアリーに何をするんだ!」

 依頼部位の羽が無茶苦茶じゃん! 腹が立つから「バリア」で首を切っておく。


「嫌だ、嫌だ! またオークが増えたよ。その上、火食い鳥カセウェアリー、これではあの優男に買い叩かれそう」


 オークは、兎に角、アイテムボックス行きだ。無惨な姿の火食い鳥カセウェアリーを見て、暫し考える。


浄化ピュリフィケーション!」

 ああ、綺麗にはなったけど、毟られた羽はそのままだ。

 それに思っていたよりデカい。背負い籠に入るかな? 解体しないとむりかも?


 アイテムボックスに火食い鳥カセウェアリーを入れて「肉だけ!」「羽だけ!」「魔石だけ!」「骨だけ!」「内臓!」と分けて出す。


 うん、羽はこれなら良いんじゃないかな? あの優男の受付がどう判断するかは知らないけどさ。

 なるべく揃えて、袋に入れる。この袋は、ルピナス号の二等客船で、お城のシーツを貰ってきた裁縫道具で縫ったんだよ。


火食い鳥カセウェアリーの骨、スープに使えないかな? 防衛都市カストラに行って、金を貯めたら、台所付きの部屋を借りたい!」


 これも、縫った袋に入れて、アイテムボックスに入れる。羽を入れた袋を背負い籠に入れる。肉は、幅広の葉っぱに包んで背負い籠に入れる! 

「やったね! 依頼達成だ!」 


 後は、さっさとギルドに戻ろう! オークがうろうろしている場所に長居は無用だよ。


 オークに羽が乱暴に毟られていたから、ドキドキしながら受付の優男に出す。

「えっ、もう狩ってきたのですか? 肉は、ミネルバから聞いていましたが、本当に綺麗に解体されています。少し、上乗せしても良いですね。羽は、少し乱暴に抜いたのもあるみたいですが、これなら十分です」


 やった! 肉と羽で二十銀貨クラン! それと、魔石が四銀貨クラン


「ギルドで荷車を借りたい」


 依頼から帰ったばかりなのに? って顔をされたけど、十銅貨ペニーで貸してくれた。


「返却されない場合は、十銀貨クラン貰いますから」

 ゲッ、十倍返しじゃん!


「荷車を買い取るのは幾らなんだ?」

 変な顔をされたけど、聞いておこう。

「五銀貨クランです。売却する時は、二十五銅貨ペニーですね」

 

 これも買った方が安いのかも? ただ、ずっと荷車を引っ張ってうろうろするのは嫌だな。


「あっ、買った荷車もギルドに置いておけますよ。保存料として一銅貨ペニー貰いますが」

 

 ううん、悩む! ずっと交易都市エンボリウムで冒険者をするなら、買った方が得だ。特に、アイテムボックスがあるから、狩に行く時に持っていけば良いから。


 ただ、門の兵士、基本、冒険者はスルーで出してくれるけど、意外とよく見ている。

 行きに普通に歩いていて、帰りに荷車を引っ張っていたら、変だと思われる。


「レンタルにする!」

 防衛都市カストラに着いたら、買おう!


 ガラガラ荷車を引っ張って門を出る。

 冒険者の中には、初心者を雇って荷車を引っ張らせているのもいるから、兵士はスルーだ。


「荷車って、森では引っ張り難いな!」

 獣道ならぬ、冒険者道を通り過ぎたら、木の根っこや草に引っかかる。


 きょろ、きょろと、人気の無いのを確かめて、森の奥に転移だ。


「おお、かなり距離を飛べた!」

 火食い鳥カセウェアリーの生息域の三角岩を覚えていたのが良かったのかも?


「先ずは、ビッグボアを解体しよう!」


 肉、皮、牙、魔石、それと骨! 内臓は埋めよう。こちらの世界では、モツ鍋は無しだね。貧しい修道院でも、内臓は食べなかった。コンポストに入れて、菜園の肥料にはしていたけどね。


「一応、チェックしておこうか?」

 内臓を鑑定すると、ウヨウヨと菌とか寄生虫とか! ゲー、やめておこう! 即、穴を空間魔法で掘って埋める。


「肉の美味しい部位は、自分用と海亀亭トゥラトゥラ用に取っておこう」


 これも鑑定で調べる。

「おっ、鑑定レベルが少し上がったみたいだ! ヒレ肉、バラ肉、モモ肉って出たよ」

 

 私が前世で好きだったのは、ヒレ肉とバラ肉! カルビは出なかった。あれは店によって違うと聞いた事があるから、もっと鑑定レベルが上がらないと無理なのかも? 


 広めの葉っぱに丁寧に包んでいく。海亀亭トゥラトゥラのと自分用は、アイテムボックスにしまうよ。

 後のは、背負い籠に入れる。荷車に、オーク二匹を乗せて、森の浅い場所に転移!


 ここからは、冒険者道までは引っ張って行こう! まだ昼頃だから、依頼から帰る冒険者は少ないかもしれないけど、転移を見られたら拙いからね。


「はぁ、はぁ! 重い!」

 レッドウルフ五人より、オーク二匹の方が重いし、荷車から脚や手がはみ出しているから、木に引っかかる。


「解体したら、運び易いのだろうけど、触りたくないし、アイテムボックスに入れるのも嫌だ」

 一度は入れたけど、出して見てみると、本当に嫌悪感しかない。

 首は、身体の下に放り込んだけど、本当に女神様クレマンティア、こんな醜悪な魔物を何故作ったのかな?


 ぶつぶつ文句を言いながら、やっと冒険者道に着いた。

 少し休憩して、水とパンを食べる。オレンジは、冒険者に見られたら困るから出さなかった。


「おい! それはオークか!」

 今日も、門で兵士に止められた。

「オークを討伐してはいけないとは、ギルドに書いて無かったぞ!」

 中級の常設依頼があったぐらいだ。うん? 討伐依頼ではなく、通報依頼だったかも?


「二匹も初心者が行く森に出たなら、大問題だ!」

 また、隊長がやってきた。

「初心者じゃない! 中級だ!」

 紐を引っ張って出して、銅の冒険者証を見せる。


「そうか、それは悪かった。だが、オークが二匹いるという事は、十匹以上いるって事だ!」

 まるで前世のゴ◯◯◯だね! 嫌われ者なのは一緒かも?

 

 冒険者ギルドまで、隊長が付いてきた。昨日のは、冒険者同士の問題だけど、森にオークがウヨウヨしているのは、交易都市エンボリウムの防衛問題だからかも?


 交易都市エンボリウムの街の人も、オークを見て顔を顰めている。

 これを美味しい! と思えるのは、ジャスぐらいじゃないかな?


 今日も噂が流れたのか、ギルド長の出迎えだ。目立っているじゃん! オーク、森に捨ててきたら良かったかも。


「アレク、お前はどうして問題ばかり起こすのだ?」

 はぁぁ、疲れがドッと出たよ。その上、三日連続でギルド長室に連行されそう。


「荷車は返しましたよ! それと、背負い籠の中のビッグボア二頭、欲しい部位は背嚢に入れているから、後は買取りをお願いします!」

 優男に頼んで、ドナドナされる。何故か、隊長も一緒だ。

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