第8話 交易都市《エンボリウム》
マギーがおまけしてくれた果物は、マンゴーみたいに甘かったし、パパの料理はまぁまぁ美味しかった。
部屋は空いていたから、二等にしてくれたけど、食事は三等のままだったからね。
値段の差は、すごく明確にされていた。
それに、日数が経つにつれて、材料が干し肉や、干し魚、それに乾パンが多くなるのは仕方ないよね?
「
間違ったんじゃないの? と船員に尋ねると、笑われた。
「
なるほど! 狙われやすいと言われるのが分かる繁栄ぶりだよ。
追っ手のことが無ければ、ここで暮らしたい。あっ、エンボス島でもそう思ったね。北の大陸より暖かいのが気に入ったんだ。
あの凍る湖の覚醒、トラウマになっている。
さて、サリーにはおさらばして、アレクになろう。
サーシャはアレックスの愛称でもあるから、そこから男女どちらでも良い名前、アレクにしたんだ。船旅中、食事とバイトの他は船室に篭って、名前やこれからの事を計画したよ。
それと、魔法の練習も少しね!
では、先ずは、この目立つ銀髪を切らなきゃね!
この世界、金髪や銀髪、キラキラした髪は貴族に多い。多分、
ナイフしかないから、ざん切りだけど、髪をザクザク切っていく。かなり痛い! それに臭い!
船室に髪の毛がいっぱい落ちていたら、不審に思われるから、トイレの個室で切っているんだ。
トイレは、ポットン式で海が見えているから、髪を切っては落としていく。残った髪は足で穴に蹴り落として、証拠隠滅!
頭がスースーするけど、これなら男の子で通るだろう。これに中に兵士の服を着て、修道女見習いの時から着ているマントを着る。フードを深く被れば、髪の毛を切ったのもわからないと思う。普段から後ろに纏めていたからね。
船長さん、パーサーさんに頭をペコリと下げて、
計画では、ここでアレクとして冒険者ギルドに登録し、
冒険者ギルド、サーシャが暮らしていた田舎町でもあったけど、規模が違い過ぎて、入るのを躊躇う。
だって、あっちのは薬草を売りに行って、
それも、農業の傍らとか、兼業冒険者すらいたレベルだからね。
聖王国、名前負けの
近頃は、町の近くの森にも出てくるようになって、サーシャが討伐していたけどね。
まぁ、
二回、冒険者ギルドの前を行ったり、来たりをしたけど、深呼吸して中に入る。
ああ、視線が突き刺さる。それに臭い! 汗と汚れと金属の錆びたような臭い。血の臭いかも?
「おぃ、兄ちゃん。ここには、ママのおっぱいは無いぜ」
ああ、うざい! サーシャは、顔が凄く整っている。
「いや、姉ちゃんの間違いじゃないか?」
もう一人、うざい大男が寄ってきた。
「俺に触れたら、許さないぞ!」
一応、警告は与えておこう。でも、ゲラゲラ笑われた。
「ふうん、どう許さないのかな? 兄ちゃん」
最初に声をかけた赤毛の大男が私の肩に手を掛けた。
「バリア!」
船旅の間、神聖魔法、空間魔法を練習したんだ。
バリアは、空間魔法で私の周りを切り取る。
スパッと指が切れて、血が外に飛んだ。
「痛え! 手前ぇ何をするんだ!」
後から声を掛けた黒髪の大男は、警戒している。
「ジャス! こいつは魔法使いだ。手を出すな!」
ただし、ジャスは頭に血が昇ったのか、剣を抜いた。
「剣を俺に向けたな。命はいらないと言う事か?」
内心ではドキドキしているけど、最初に舐められたら負けだ。
「いや、こいつは酔っているのさ!」
黒髪の大男が合図して、周りのゴツイ男達が、ジャスと呼ばれた赤毛の大男を取り押さえる。
「お前、名前は?」
黒髪の大男が尋ねる。
「人に名前を尋ねる時は、自分から名乗れと教わらなかったのか?」
周りが騒つく。どうやら、この黒髪の大男は、ここの顔なんだろう。知るか!
「そうか、悪かったな。俺はルシウス! 彼方の馬鹿は、ジャス。あんたは?」
素直に名乗るとは思わなかった。乱闘を覚悟して、ビビっていたのだ。
「俺はアレク。冒険者登録に来たのだ。ジャスの指、今なら五
全員が騒ついた。それをルシウスが制して、質問する。
「お前は、神聖魔法使いなのか? もしかして、神官様なのですか?」
皆の視線が痛い。
「神官ではない。ただの神聖魔法使いだ!」
わぁお! と冒険者ギルドが揺れた。
どうやら、南の大陸では、神官も神聖魔法使いも少ないみたいだ。
追っ手がいる身なのに、派手な冒険者デビューになってしまった。やれやれ!
「冒険者登録の前にジャスの指をくっつけてくれ!」
五
「俺の指! おお、マジで兄ちゃん凄いな! おおぃ、この兄ちゃんに手を出したらジャスが相手だぞ!」
いや、あんたが手を出し掛けたんじゃん。
まぁ、顔役のルシウス、それと相方のジャスが睨んだら、全員が「チース!」と叫んでいたから、良いのかも? チース? 運動会系なのか?
冒険者ギルドの受付、美人揃いだった。中には優男もいて、そこには数少ない女の冒険者が並んでいる。
「冒険者登録に来ました」
先ほどの騒ぎは見ていたのか、すんなりと紙をだす。
「名前と年齢、それと特技を登録しておけば、パーティを組む時有利になったり、依頼も入るかもしれません。後、登録料として五
「いや、書けるから結構だ」
名前はアレク、年齢は十五歳。特技は身体強化と神聖魔法。それと五
「えっ、身体強化も?」
受付のお姉さんが驚いている。サーシャ、細身だからね。冒険者証を貰った。後は宿だね!
「ええ、それと安くて清潔な宿を探しています」
これ、安くて! が重要! さっさと、
ここでは、失敗したからさぁ。お金貯めなきゃね!
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