第22話 オーク討伐隊

 パーティリーダーは、二階で討伐隊の分担を話し合うから、私とジャスは酒場でエールを飲んでいる。

「なぁ、ナタを取りに行きたい。武器無しでは、心許ない」

 ジャスに弓があるじゃないかと目で言われた。

「弓は、まだ構えるまで時間が掛かるんだ。練習している途中なんだよ」


 ジャスは、少し考えて口を開く。

「今、ギルドを出て行くのはまずい。受付のお姉ちゃんに手紙を書いて、武器屋に行って貰え。勿論、チップを弾むんだぞ!」


 ふぅ、そうした方が良さそうだ。ジャスはミネルバちゃん推しだけど、オークが交易都市エンボリウムの近くにいると怯えているかもしれない。優男に頼もう!


「ちょっと頼まれてくれないか?」と声を掛けたら、清算をしてくれた。ビッグボア二頭、オーク二頭で、十金貨ゴルディになった。嬉しいけど、素直に喜べない気分だ。


「詳しく説明しましょう。オークの通報依頼、一金貨ゴルディ。それにオークの肉が四金貨ゴルディ。オークの魔石二つで二金貨ゴルディ。オークの睾丸がニ金貨ゴルディ……どうされましたか?」


「いや、オークは本当に食べられるのか? それに睾丸が魔石より高いのは何故だ?」

 

 少し驚いた顔をしたが、丁寧に説明してくれた。

「オーク肉は美味しいですよ。オークは嫌われ者ですが、肉は美味しい。皮肉ですね。睾丸は四個、全て無事でしたし、精力剤として交易都市エンボリウムでは人気なのです。魔石が安いのは、身体の割に小さいからです」


 いや、魔石一個、一金貨ゴルディは安くないと思う。

 解体料金、それにビッグボアの買取り値段もちゃんと説明してくれた。

「良い部位が少し取り置きされていますが、本当に綺麗に解体されているから、上乗せしておきました。オークも解体していれば、もっと買取価格が上がりましたよ」

 

 それは遠慮しておきたい。うん、優男とずっと呼ぶのは悪いな。有能な受付だ。名札を読む。


「アンディさん、少し頼まれてくれないか?」

 一銀貨クランで武器屋へナタなどを取りに行ってくれた。

 

 ぎりぎり間に合ったよ。新品のナタを手に持って、感覚を試していると、二階からぞろぞろとギルド長とリーダー達が降りてきた。


「皆も知っていると思うが、オークは魔物だが夜は寝る習慣がある。つまり、朝までに巣を見つけ、殲滅するチャンスだ!」


 へぇ、知らなかったよ。女神様クレマンティアの知識で確認する。女神様クレマンティアの知識、殆ど受け取れなかったけど、鑑定というか、それを意識的に調べたら出てくるんだ。


 オークって、魔物だけど、人間に近いのか? 肉を食べ難くなるけど、それは人間と認める事に繋がりそうだから、魔物として食べるのだろうか? なんて悩んでいたら、考えている事を察知したのかジャスに怒鳴られた。


「アレク! あれは魔物だ! 女を犯して、繁殖する最悪の魔物だ! それに、繁殖した後の女も食べるんだぞ!」


「ああ、それは無理だ! オークを殲滅するぞ!」

 神聖魔法を使った訳でもないのに、髪の毛がバサァと伸びた。女神様クレマンティアの神命だからかな?


「アレクさん、その髪は?」

 驚いているアンディに弓矢と背負い籠と背嚢を預かって貰う。銀髪を後ろで縛る。

「身軽になって、オーク殲滅に全力を尽くすつもりだ!」

 ルシウスとジャスと一緒に三角岩を先ずは目指す。松明があちこちに見える。オークの件が無ければ、綺麗とも言えるかも?


 兵士は馬で先行している。巣を探しているのだろう。

 バンズ隊長が、冒険者達の前で馬から降りる。

「一つ目の巣を見つけた! 三角岩のすぐ奥だ。それは、兵士達で討伐するが、まだまだありそうだ。探してくれ!」


 オークの巣、一個だけでは無いのか? 何個あるのか、わからないのだろうか?


「森のオークの巣をサーチ!」

 今夜は女神様クレマンティアが憑いているのかも?

 頭の中に森の地図が浮かび、五ヶ所が赤く光っている。


「至急、ギルド長と話したい!」

 持ち場を離れる事になるけどと、ルシウスに言うと、すぐに許可してくれた。

「オークの巣が分かったのだろう? それなら、ギルド長に言った方が良い」

 

 ギルド長のいる場所もサーチする。割とすぐ側にいた!


「ギルド長! オークの巣の場所が分かりました。地図を持っていませんか?」

 一瞬、長い銀の髪に目をやったが、斜めがけしている鞄から地図を取り出した。


 ジャスが松明で地図を明るくしてくれるので、赤く光る箇所を、ギルド長が差し出したペンで丸く印をつけていく。


「ここが一番大きな巣です!」

 一番、赤く光っている箇所に、二重丸を付ける。


「ここは、パルサー村だ! 開拓地が襲われたのか!」


 ギルド長は、首から下げている笛をピーと吹いた。リーダー達が集まってくる間に、少し考えて口を開く。


「アレクは女神の愛し子か? いや、そんな事を詮索している場合ではない。ルシウスとジャスとアレクは、私と一緒に一番大きな巣のパルサー村に向かう! 他のチームは、三組ずつ、この印の場所に向かい、オークを殲滅しろ!」


 銀級のリーダーが三人選ばれて、パーティを率いて、其々のオークの巣の討伐に向かう。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る