クズ聖王家から逃げ出して、自由に生きる！

第55話 ドロップ品の仕分け

「いつかは、しなきゃいけないんだぞ！」

　ルシウスは、さっさとドロップ品を、売る物、取っておく物、今は外に出すと悪目立ちしそうな物とに選抜したいみたい。

「あっ、それと白猫（レオ）の召喚獣が増えたから、それの登録もしなきゃいけないんじゃないか？」

　ジャス、知っていたけど、ギルドマスターに会いたくないから、スルーしていたんだよ。

「アレク、機械ハチドリは何羽組み立てられるのか？」

　前は三羽だったけど、部品は増えている。

「五羽、いけそう。それに機械兵もバージョンアップしたのも一体増やせる。機械騎士も増やせそう。機械馬もバージョンアップできるかも？」

　白猫（レオ）が部屋の隅にレベルアップした機械馬を召喚し、アイテムボックスの中で、魔導具の機械馬をバージョンアップさせる。

「機械ハチドリ五羽、機械兵、機械騎士、それと機械馬一頭が魔道具として増えたよ」

　これらの召喚獣を登録して、魔導具に星の海（シュテルンメーア）の印を描かないといけない。

　ちょっと、ギルドマスターに会わなきゃいけないので落ち込んでいると、ジャスがとんでもない事を言い出した。

「どうせ嫌な事をしなきゃいけないのなら、迷宮ダンジョンの十一階からの地図をギルドに売ろうぜ！　勿論、隠し部屋は秘密にするけど、出てくる魔物とかも記入すれば、金と昇級ポイントが稼げる」

　ルシウスには、前に断ったと思うけど、真面目な顔で頷いている。

「アレクは、強さから言っても銀級なんだよな！　それにファイヤーウルフを捕まえてギルドに差し出している。回復薬もカインズ商会経由だけど、納入している。ポイントの計算の細かな所は分からないが、護衛依頼も一回はしているし、中級ダンジョンの十五階も踏破しているから満たしていると思う」

「でも、同じ銀級のルシウスやジャスほど強くないよ。それに、ギルドの昇級規則を調べたけど、最終的にはギルドマスター、ギルド長の判断なんだってさ」

　ジャスは、前のギルドマスターを罵る。

「最後の最後で、バッカスを金級にしやがって！　耄碌していたんじゃないのか？」

　ルシウスが嗜めている。

「バッカスは、確かに金級に相応しい強さがあるかは疑問だが、俺たちよりは強い。兎も角、強くならなきゃ駄目って事だ！」

「だが、月の雫の銀級の奴らより、アレクの方が絶対に強いぜ！　まぁ、まだ俺やルシウス程は強くないけど、後衛だから当たり前だ！」

「月の雫って、前のギルドマスターに贔屓にされていた感じなの？　でも、ヨハンセンギルドマスターもオークダンジョンの探索を月の雫に依頼したんだよね？」

　ルシウスとジャスが苦虫を噛み殺したような顔をする。

「前のギルドマスターは引退時期を見誤ったのさ。新人の教育とかも熱心で、俺も世話になったけど、最後の一年は駄目だったな。ヨハンセンは、相棒が引退したから、ギルドマスターを引き受けたのだろうが、本当は向いていない」

「パンサーがギルドマスターになれば良かったのにな。冒険者を引退したんだから、なっても良かったんじゃないか？」

　知らない人の名前だ。私が首を傾げていると、ジャスが簡単に説明してくれた。

「パンサーとヨハンセンは、本当に強い金級のパーティだった。でも、上級ダンジョンでパンサーは片腕を失ったのさ。それで引退したが……あそこは、パンサーが頭脳、ヨハンセンが筋肉って感じだったから、ギルドマスターに向いていないんだよ！」

　ううん、つまりパンサーがルシウス、ヨハンセンがジャスかな？　でも、ジャスって意外と細かい事も気がつくんだよね。ただ、ギルドマスターに向いているタイプではないよ。

「まぁ、アレクがヨハンセン・ギルドマスターを嫌うのは分かるけど、そんなに悪い奴ではないって事さ。ただ、ギルドマスターにしておくのは問題が大有りだし、交易都市（エンボリウム）や防衛都市（カストラ）のお偉方が黙って見過ごさないだろう」

「つまり、地図を売れって事？」

　ルシウスとジャスが頷く。

「迷宮ダンジョンは、中級者用ダンジョンとしては難関すぎるんだ。地図があれば、命を落とす冒険者を減らせる！」

　ルシウスの言う事も理解できるから、地図を描いても良い気分になったよ。

　そこからは、真面目にドロップ品の仕分け作業になった。

「武器は、ある程度は備蓄しておきたい。アレク、矢は試し撃ちして使えるようなら、全部取っておけよ」

　剣と盾と槍と斧と弓は各十個、大鎌は五個、矢は私が使わないとしても初心者が使うから全部取っておく。

「これだけでも大荷物だぜ！」

　いつもは機械兵と機械騎士に背負わせている籠にいらない武器を入れたら、四籠とも満杯だ。

「これはギルドに売ろう！　売店で売って貰えば、初心者も買いやすいだろう」

　ケチだけど、ルシウスって意外と初心者を気に掛けているよね。まぁ、馬鹿な初心者に絡まれたら、ぶん殴りそうだけど。

　楽器は、ゲイツ商会に売ったけど、貴族人形がドロップした礼服やドレス、ベッドの上に出したら、小山になっている。

「これは要らないけど、何処で売るか悩むなぁ」

　ゲイツ商会では、やんわりと「何処で手に入れたのか？」と探りを入れられたそうだ。下級回復薬と中級回復薬を見せたら、飛びついて、余計な詮索をするのはやめたとルシウスは苦笑いしていた。

「花街の顔役に売れば？　可愛い子ちゃん達はドレスが必要だし、金持ちの顧客も多そうだぜ」

　ルシウスと顔を見合わせる。花街は苦手だけど、秘密は守ってくれそう！

「女吸血鬼からドロップした美容液を一緒に売ろうぜ！」

　それ、名案だよ！　ギルドには不審がられるから売れないけど、花街では凄く需要がありそう。

「宝石付きのナイフとか宝飾品は、ギルド経由でオークションかな？　宝箱を見つけた！　で言い通せる物だからな」

「問題は、煌びやかシリーズだな。ジャス、装備するか？」

「いや、リーダーのルシウスが装備したら良いのでは？」

　二人で押し付け合いだ。

「女王様のボンデージ……」とジャスが口に出した途端、軽く蹴っておく。

「ボンデージ……クランのメンバーが着るかな？　いや、嫌だ！」

　これは、ちょっと間をおいてオークションに出す事にした。煌びやかシリーズは保留。

「本当に強敵に遭ったら、煌びやかでも装着する気になるかもしれない。ジャスがな！」

　ジャスは「ルシウスがな！」とすかさず言い返している。

　棺桶は、取っておく事になった。機能としては優れているからね。それに、危機の時に、形にこだわっていられない。

「女王様の鞭、これ機能は良いんだけど……ちょっと使う気はならないな。でも、鞭を武器にする奴がいたら……保留だな」

　ルシウスは悩みに悩んで、保留にした。

　指揮棒（バトン・クラウンステッキ）と指揮者の指揮棒は、取っておく。

「ルシウスが指揮棒（バトン・クラウンステッキ）を持ったら？」

「いや、前衛が敵に囲まれた時、後衛のアレクに飛ばして欲しいから」と渡された。

　指揮者の指揮棒は、エアーカッターが出るので、一応は魔法使いの私だけど、他のメンバーが増えたら考える事にする。

「片眼鏡もとっておこう！　二組に別れて探索する事もあるかもしれないから」

　私は鑑定できるけど、宝箱とか鑑定しないで開けたらヤバい時もあるからね。これはルシウスがマジックバッグに入れておく。

　本は全部取っておくよ！　一旦、出して、其々が一、二冊を持ち帰る。

「本棚が欲しい！　本が選びやすくなるから」

　これは、エールの台と一緒に買う事になった。

　床いっぱいに落ちていた羽ペン、其々が何本か取る。後は、少しずつギルドに売る事にする。

「なぁ、魔導灯を使っても良いか？」

　それぞれ本を手にしたので、全員が欲しがる。三個出したよ。

「アレク、あと何個組み立てられそうか？」

　かなりシャンデリアから部品が落ちたので、四個できた。

「これは、カインズ商会で売ろうと思う」

　ギルドは、ちょっと自由都市群（パエストゥム）を気にしているみたいだからね。これも大問題だと思う！

　ふぅ、やっと整理できたけど、アイテムボックスの中には、塩漬けドロップ品が多い。

「あの魅了効果のある宝石は、オークションに掛けたら莫大な値段になりそうだな。今回は、様子見でドレスや礼服や美容液だけど、花街の顔役を通して出しても良いかもしれない」

　花街の顔役って、良いイメージがない。

「信頼できたらだが、俺たちが金級になれば、何を出しても誰も文句は言えなくなる。それまで、保留だな！」

　ルシウスも、信頼できるか疑問視しているみたい。

「だが、オークションを仕切っているのは、花街の顔役だぜ！」

「えっ、知らなかったぜ！」

　ルシウスが驚いている。私は、当然初耳だよ。

「ううむ、まぁ、考えておこう！　あっ、そろそろアレクの黄金の毛皮と俺たちの宝石付きの金鎖、機械花の宝石、遠見鏡のオークションがあるんじゃないか？　見に行っても良いな！」

　明日は、それぞれの武器をメンテナンスに出し、裁縫屋にシャツを取りに行き、ジャスとルシウスは花街の顔役と交渉する。

　私は、矢の試し撃ち、木工屋に行って本棚、エールの台を買う。そして、地図の作成！

　明後日、三人揃ってギルドに行く事になった。