第48話 迷宮ダンジョン十五階を目指すぞ 1
一日、休みにして、私とジャスはエールの大樽を買ったり、木のジョッキも何個か買い足した。
冒険者によっては、携帯のコップを持っていなかったり、大きさもまちまちだからさ。いつか喧嘩になりそうなんだもん。エールの恨みは恐ろしい。
「まぁ、冒険者達が機械兵に慣れてくれたら、エール販売はやめたら良いだけだ」
ジャス、考えが甘いよ! 冒険者のエール好きを軽く考えちゃ駄目な気がする。
「機械騎士にも背負い籠を持たせて、そこにエールの小樽とジョッキを入れておこうぜ! 毎回、アレクのアイテムボックスから出していたら変だと思われる」
それと、お泊まりに必要なテント、水の樽も入れておく事にする。
私とジャスは、大樽のエールを金熊亭で受け取ったり、籠に
その間、ルシウスには魔導具の部品以外を、ギルドに売れる物は売り、楽器とかはゲイツ商会に売りに行く。その時、中級回復薬(優)と下級回復薬を何本か売って、優位に交渉するそうだ。
「ルシウスなら、高い値段で売ってくれるさ」
ジャスは、宝飾品の中からルビーの付いたネックレスを一つゲットして、昨夜はルミエラちゃんにプレゼントしに行って機嫌が良い。これが無ければ良い男なんだけどさ。
◇
一日休んで、本格的に迷宮ダンジョンの十五階を目指す。
金熊亭の部屋は、借りたままにする。二日か三日で帰る予定だからね。女将さんは、泊まらない日は半額にしてくれるそうだ。お風呂代と朝食代は割引だね。
肉詰めのパンは、多めに作ってもらったよ。アイテムボックスに入れておけば、保存ができるから。
ただ、ルシウスとジャスは、自分のかばんに今日食べる分は入れている。水も各自で持ち歩く。
こういった冒険者としての心得はしっかりと身についているんだよなぁ。まぁ、私はアイテムボックスがあるから、つい油断しちゃうんだ。
馬車から降りて、借りている部屋に転移陣を設置する。途中でどうしても無理だって場合に避難できる手段は講じておきたいからね。
「部屋には、貴重なドロップ品も置いてあるから、入らないように! 入ったら、コイツが電撃を喰らわすからな」
ルシウスと相談して、雷雲を出して脅したけど、嫌われて貸してくれなくなるんじゃないのかな?
真っ青になった亭主は「入ったり致しません!」と断言していた。
「機械兵士が組み立てられたら、部屋に置いておくのも良いな」
ふぅ、あともう少し部品が足りないんだよ! こういうのって、苛っとするよね。少し、ドロップ品を部屋に置いておく。
「一階の隠し部屋に転移陣をおこうか?」
ルシウスがそう言うけど、まだ沸いてないかも?
「いや、十五階を目指そう!」
今日も、ダンジョンの入り口で、これから召喚獣を出すと警告してから、魔導具の機械兵と機械騎士を出す。
兵達は、前よりは慣れたみたいだね。ただ、その場に出会した冒険者達は、ギョッとしていたみたい。
十一階の隠し部屋は探索済みだから、最短ルートで十二階に向かう。
「
ただ、扉とか通路がないのに部屋があるのは、隠し部屋じゃないかなと推測して、そこを目指して進む。それと、魔物の赤の点がいっぱいなのは、長年見つかっていない証拠だよ。
「うっ、十二階、マジでヤバい!」
十一階も、これまでのボスレベルの魔物がうじゃうじゃ居たけど、十二階になってからは、隠し部屋にいた魔物が現れるようになった。
流石にまだ隠し部屋のボスは現れていないけど、段々魔物のレベルが上がっているのを感じる。
一番嫌なのは、顔面蝙蝠だ! 段々、大きくなって、人の形の身体まで付いている。
「もしかして、隠し部屋には……」
霊安室とか、地下にあるんじゃないの! と内心で
段々と魔物が強くなっているから、隠し部屋だけでなく召喚している。それに、
「多分、ここから隠し部屋に行けると思う」
嫌な予感がするから、パスしても良いんじゃない? 私が戸惑っているのを、ルシウスとジャスが笑う。
「もし、暗闇ダンジョン系の魔物だったら、ピカピカの剣を頼む」
そう、ルシウスのピカピカの剣とジャスのピカピカの斧をアイテムボックスに預かっているんだ。
どうか違いますように! と願って階段を下りたら、ゲー、やはり霊安室だった。
棺桶から吸血鬼が出てこようとしている。アイテムボックスから、ピカピカの剣とピカピカの斧を出して、二人に渡す。
それと私は木桶と柄杓を出して、浄水で満タンにする。バシャバシャ! 水掛け婆だ。
ルシウスとジャスもピカピカ装備で無双している。
天井には、顔と身体のついた蝙蝠がビッシリ!
「アレク、あいつを倒せ!」
「そなたも私の愛人にしてやろう」
吸血鬼の愛人なんて御免だ!
「ホーリー!」を全力で掛ける。
「ぎゃぁぁ」と周りの吸血鬼は消えたが、ボスはしぶとい!
それに、棺桶から次から次へと吸血鬼が現れてくる。出ていたのは、ホーリーで消せたけど、限りがないのは疲れる。
「ジャス、棺桶を斧で壊すのだ!」
ジャスは棺桶を斧でぶった斬っていく。ルシウスは、吸血鬼を剣で切る。
私は、吸血鬼のボスにホーリーを掛けて、かなり弱らせてはいるけど、なかなか倒せない。
「アレク、そいつは魔法耐性が強い! ホーリーランスかホーリーアローで攻撃しろ!」
木桶の浄水を矢に掛けて、ボス吸血鬼を射る。
「ホーリーアロー!」
ビュンと光と共に矢が吸血鬼の肩に吸い込まれた。
「ガオオォ!」と苦しみにのたうちまわりながら、ボス吸血鬼は蝙蝠と吸血鬼を召喚する。
「下手くそ!」
もう一度、浄水に矢をつけて「ホーリーアロー!」と心臓を射抜く。
吸血鬼のボスが灰になって消えた。疲れたよ!
「浄水は不要だ!」
「兎に角、討伐できて良かったぜ!」
ただ、吸血鬼のボスのドロップ品、棺桶と吸血鬼のマントなんだけど……要らないよね!
普通の吸血鬼と蝙蝠からは、魔石、中級回復薬、それとマント。
ボス吸血鬼の周りにいた美人吸血鬼からは、魔石と美容液!
「一応、ボスのドロップ品だから鑑定しておくよ。えええ、この棺桶の機能凄すぎるんだけど! 入って寝たら、十分で一晩寝たのと同じ効果だってさ。その上、瀕死の怪我も一発で回復!」
ただし、棺桶の中で寝たいかは微妙! ルシウスとジャスも微妙な顔で棺桶を見ている。前世の高酸素カプセルだと思えば良いのかな? いや、見た目が悪すぎるよ!
「
「中はどんなんだ?」
ジャスが棺桶の蓋を開けると、綺麗な布で覆われている。寝心地は良さそうかも?
「回復したぞ!」とすぐに飛び出たけどね。
「吸血鬼のマントは、魔法耐性が強いそうだ」
全員が私が装備したら良いって言うけど、あの吸血鬼のマントだよ! ちょっと嫌! それにダンジョン内は、定温だけど、外は暑いんだもん。
「今度は暗闇ダンジョンだな! アレクはホーリーアローの練習をするべきだ。ホーリーランスも使えるようにならないと大物は倒しにくいぞ!」
ルシウスとジャズは、元々、暗闇ダンジョンに潜りたかったから、頷いている。
「まぁ、十五階まで潜ってみてからだな!」
ルシウスがそう締めて、十三階を探索することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます