第39話 これからどうする?

 休日一日目の夕食の後、ルシウスの部屋でこれからの活動について話し合う。


 迷宮ダンジョンの十階まで踏破した。とはいえ、十階の隠し部屋はパスしちゃっているし、機械騎士や機械兵などの半端な部品がアイテムボックスに溜まっているんだよね。


「まぁ、先ずは十階の隠し部屋を攻略して、十五階を目指そう! ただ、十一階からは魔物も強くなるぞ」


 ルシウスは、まだマジックバッグを諦めていない。


「それは、良いけど……マジックバッグが十五階まで探索しても無かったら、どうする? 二十階まで続けるのか?」


 ジャスの懸念も理解できる。マジックバッグは手に入れたいけど、星の海シュテルンメーアで二十階は厳しいんじゃないの?


「そうだなぁ、兎に角、十五階まで行こう! それと、隠し部屋に魔物が沸いているか確認もしたい」


 まぁ、それは決定で良さそう。それに、ルシウスとジャスは、魔導書で手に入れた魔法を使いたくてうずうずしている。


「それと、白猫レオの件だけど、やはり従魔登録しておいた方が良い。攫われる危険もある。まぁ、素直に攫われたりはしないだろうが」


 ルシウスは、ギルドで従魔についての規則を調べて来てくれた。今は、テイマー専門で活動している冒険者は、殆どいないけど、昔の規則が残っていたそうだ。


「それと、クレアはスレイプニルを従魔とは認めるのは嫌だろうが、クレージーホースも従魔登録をしているそうだ」


 ふうん、クレアがアルフィに宥められながら、渋々手続きをする姿が目に浮かぶ。


「従魔が人を傷つけたら、テイマーの責任になる。勿論、相手が襲ってきた場合は、正当防衛だ」

 

 これは、白猫レオによく言い聞かせておかなきゃ! そう思って、白猫レオを見ると、パタン、パタンと尻尾を打ち付けている。


「従魔登録するのが不満なの?」

 プライドの高い白猫レオだから、腹を立てているのかな? 


「機械兵、機械騎士、機械馬を従魔として登録すれば、大っぴらに使用できるようになるのか考えていたのだ」


「でも、それは白猫レオの召喚だよね? 従魔とは違うんじゃない?」


「現在、召喚士はいないのであろう? それなら、従魔登録した方がわかりやすいのではないか? それと機械ハチドリもいずれは召喚できるようになると思う」


 ルシウスとジャスは、魔道具としての機械兵、機械騎士、機械馬とは違い、白猫レオの召喚する魔物は、レベルアップするのに気づいている。


「従魔登録すれば、その従魔を攻撃するのは規則に反することになる。これからダンジョンの十階以上を探索する時、セーフゾーンで泊まる必要も出てくる。機械兵を配置できれば、かなり楽になるが……夜中、召喚し続けて大丈夫なのか?」


 ルシウスの懸念も尤もだよ。今は、隠し部屋とかで戦闘中にだけ召喚しているよね? レベル5になって、召喚できる回数は増えたみたいだけど、夜中に消えちゃわない?


「無礼な! 敵に倒されない限り、大丈夫だ」


 白猫レオは怒るけど、倒されたら消えるんじゃん!


「どちらにせよ、見張りは必要だな。人数を増やすか?」

 ジャスは、機械兵だけに見張りは任せられないと言う。


「いずれは人数を増やしたいが、アレクの秘密を話しても良いと信頼できる奴じゃないと駄目だなぁ」

 ルシウスは、リーダーとして信頼できるメンバーじゃないと難しいと腕を組む。


 白猫レオは、呆れたように話す。


「人間は、夜眠らないと駄目なのであろう? アレクのバリアで囲っておけば良いだけだ。だが、それでは目に見えぬから、ちょっかいを出す愚か者が多そうなので、機械兵を配置するのだ」


「えっ、バリアを張ったまま眠れるのかな?」


 白猫レオが苛立たしそうに尻尾をバタンと打ち付ける。


「愚か者! 女神様クレマンティアの知識をまだ……」

 慌てて白猫レオを抱き上げて、口を手で押さえる。つい、つい、後回しになっていたよ。


「今すぐやれ! この怠け者!」

 白猫レオに叱られて、女神様クレマンティアの知識を整理しようと頑張る。

 

 インデックスを作るんだよね? ええっと……。


 私が無言で頑張っているのを、ジャスとルシウスは「何をやっているのだ?」と怪訝な目で見ている。そんなのを気にするぐらい、集中できていない。


「低脳!」白猫レオが私の肩に飛びのり、冷たいピンクの鼻を顔に押し当てる。


「おお、凄い!」

「愚か者! 魔法陣を調べるのだ」


 うん? バリアを一晩中張れるかだったよね?


「夜中にずっと魔法を掛けておくより、魔法陣を使った方が効率が良いだろう」


 白猫レオに言われて、魔法陣を調べる。


「ふむ、ふむ、へぇ……使える魔法の魔法陣だけしか使えないんだ」


 ルシウスとジャスは、魔法のことは詳しくない。


「アレク、その魔法陣とやらは使えそうなのか?」


「多分、大丈夫……一度、試してみたい。魔石の消耗も調べたいし」


 遣り方は、女神様クレマンティアの知識で分かったけど、実際にやってみないとね!


「あっ、でも従魔登録したら、ずっと外に出しておかなきゃいけないんじゃないのか? 召喚獣なら、使う時だけで良いのでは?」


 ジャス、大男で大雑把に見えるけど、細かい事によく気がつくんだよね。


「ずっと機械兵を連れ歩くのは目立つな。いや、目立った方が良いのか?」


 ルシウスは、あれこれ考える傾向が強い。


「それと、機械兵に籠を背負わせてダンジョンに潜るのは駄目なのか? 秘密が増えていっているし、どうせドロップ品はマジックポーチかアイテムボックスに入れるのだろう? ただ、荷物持ちを連れていないと不審がられるからさぁ」


「それ、良いかも! セーフゾーンで泊まる時、マジックテントを使いたいけど……荷物持ちには秘密にしたい。それに、俺たちだけ快適なテントで寝るのも心苦しく感じそうで……」


 ジャスとルシウスは、荷物持ちはテントの外に寝させたら良いだけなのにと笑う。


「それは良いかもしれないな。魔導具の機械兵に荷物運びを偽装させれば、アイテムボックスを使いやすくなる」


 白猫レオも賛成するから、普段は魔導具の機械騎士と機械兵に荷物運びをさせる事になった。魔石は使うけど、白猫レオの魔力の節約になるからね。


 後は、バリアの魔法陣がどの程度の強さなのか。それをダンジョンで調べる事になった。


「召喚獣……ギルドの扱いは、従魔と同じみたい」


 白猫レオに整理して貰った女神様クレマンティアの知識で、ギルドの規則も調べたんだ。


「召喚獣かぁ。そちらの方が、便利かもな」


 ジャスは、ギルドには違いが分からないだろうと笑う。


「まぁ、白猫レオの召喚獣なのだから、嘘ではない! 機械兵、機械騎士だから、マジックポーチの中に入れていると主張する事もできるが、いちいち説明するのも面倒だ!」


 マジックポーチは、ギルドにぬいぐるみなどを売りに行った時に公表している。マジックバッグは、滅多に出ないけど、マジックポーチは金級で持っているパーティがちょこちょこあるみたい。


 ルシウスは、ギルドを謀る訳じゃないと笑う。


「では、決定だな!」


 白猫は、妙に機嫌が良い。何かたくらんでいるのかな?


「馬鹿者!」と叱られちゃった。


「早く強くなって、女神様クレマンティアの神命を果たさなくてはいけないのを忘れたのか!」


 オークダンジョンを殲滅しろ! かなり難しい。


「なぁ、金の剣は、マジックバッグを持っているんじゃないのか?」


 ジャスがオークションで落札したのでは? と期待の目で話す。オークダンジョンを殲滅するには、物資の補給が必須だからだ。


「多分、落札していると思う。だから、上級者ダンジョンの最奥を攻略しているのだろう」


 ダンジョンごとに、セーフゾーンのある階は変わる。迷宮ダンジョンは奇数階にあるけど、他の中級者用ダンジョンはそんなに無いみたい。


「上級者用ダンジョンは、十階までは各階にセーフゾーンがある。十五階からは、二箇所あると聞いたが……はっきりは知らないんだ」


 ギルドに情報を売れば儲かるけど、クランやチームの機密にしている場合も多い。私達も、迷宮ダンジョンの隠し部屋は秘密にしているしね。


 それと、ルシウスは上級者用ダンジョンは、まだ潜り始めたばかりだから、最新地図は買っていない。ケチだけでなく、まだ正確ではないから。


「あと二日休もう! その間に、武器の手入れと召喚獣の登録、後は食料の買い出しだ。まぁ、一日目は十階の秘密部屋の攻略と、十一階のセーフゾーンでバリアの魔法陣を試したら、一旦戻るけどな」


 ふぅ、それと私は準竜の肝で中級薬草(秀)を作りたい! 三日連続のお休みは、うれしいな!

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