第57話 地図を作ろう
✳︎前話 アレクの休日と一部内容が被ります
休日一日目、朝から三人で武器のメンテナンスを頼んでから、シャツを受け取りに行ったよ。ジャスは、私の二倍は生地を使っているよね? ちょっと不満だけど、細かい奴だと言われたくないので黙っている。だって、二枚欲しくなるクオリティだったからさぁ!
「また、あの隠し部屋には行かなきゃな!」
早速、着替えたら、蒸し暑さを感じないんだ。
ここで、二人とは別れる。花街の顔役との話し合いには、私は不参加だ。
木工品店を探しながら歩く。きょろきょろと探しながら歩いているからか、相変わらずぶつかってくる子どももいるが、前よりは減っている。
顔を見慣れてきて、何もスレないのが分かってきたのかも。
木工店を見つけたけど、思うような品が無い。困ったなぁと思っていたら、
「
「あっ、そうか! ええっと……」
紙にどのような物が欲しいのか描いて説明する。
「エールの小樽を置いて、ジョッキに注げる高さが必要なのですが、背負い籠に入れてダンジョンに持ち込みたいので、折りたためるようにして下さい」
木工屋の親父は「ダンジョンの中でもエールを飲むのか! 気に入った!」と笑って「早く作ってやるぜ!」と引き受けてくれた。
「本棚は、百冊ほど並べられるのを作って欲しいのです」
親父は驚いている。
「百冊かい? そんな金持ちには見えないがなぁ」
確かに私の格好は、白いシャツにカーキ色のズボン、それに胸当てだからね。ただし、この白シャツは買えば凄く高価だと思うよ。
「ダンジョンで本がドロップするんだ。売るよりも、いつかクランを作った時にメンバーにも読んで貰いたいと思っているのさ」
親父は「クランとは豪気だぜ!」と笑ったが、引き受けてくれた。
「エールの台は、明日にはつくっておく。だが、本棚はちょっと時間をくれ。扉にガラスを入れるだなんて、贅沢品だから、きっちりと仕上げたい」
エールの台は、五
店を出た途端、
ランスねぇ。あれって騎馬騎士が持っているけど、重たそうなんだよね。やっと弓が使えるようになったのに……ちょっと。
「先ずは槍を使えるようになってから、ランスを買うことにするよ。だって『槍の初歩』だからね」
そう言ったら、
「ちょっと
町中で頭の上に
せめて肩に乗せようとしていたら、隙があると思ったのか、子どもがぶつかってくる。
「ルシウスとジャスはどうしたのだ?」
「あの二人は……花街の顔役と取引をしに行ったよ」
やっと、
「ランスを買わないのなら、ギルドに売る地図の紙とインクを買ったらどうだ?」
それは、
羽ペンは、腐るほど持っているから、大きめの紙とインクを買う。
「そろそろ、お昼だけど……森亭は、猫も大丈夫かな? まぁ、行ってみよう! 駄目だったら金熊亭で食べたら良いだけだからね」
「あのう、この
「可愛い猫ちゃんですね。躾ができているなら、良いですよ」
ウェイトレスさんが入店を許可してくれた。
『猫ではない!』
「ダンジョンの中で食べたシチューは、ビッグエルクの赤ワイン煮だったんだよ。お昼は、ランチメニューだけだから、何が来るのかな?」
ランチメニューしかないから、選べないけど、森亭に外れはない。
私の前には、
森亭は、ランチは一種類なのに? チラリと厨房を見ると、亭主が柱の陰から、
わざわざ、
ウェイトレスさんは、椅子を並べてサービスしてくれている。これは、チップを弾まなきゃいけないな。
レオは、シチューを食べ終わったら、うとうとと寝てしまった。この姿を見ると、
「猫ちゃん、寝てしまったのですね」
ウェイトレスさん、猫好きだね!
「ええ、まだ中猫なので、寝る時間が長いのです」
まぁ、成猫になっても猫は、よく寝るけどね。
転移陣、大男二人が場所を取るから、羊皮紙を継ぎ合わせても機能するか確かめたい。
継ぎ合わせたのがあれば良いのだけど?
それと、
石鹸を売っている店で、ブラシも見つけた! 石鹸もついでに買うよ。金熊亭でよくお風呂に入るからね。
金熊亭に戻って、
「矢が使えるか、試し撃ちしなきゃいけないんだ」
女将さんに、洗濯場で練習しても良いかと許可を取る。
「アレク、弱かったらダンジョンで死んじゃうよ! まぁ、あんたは魔法を使うみたいだから、後衛だろうが……兎に角、練習はして良いよ!」
相変わらず気が良い。掃除は、
矢は、アルシア町で貰ったのより、上等だった。つまり、使える!
ここで、エールを飲んで休憩! 女将さんが「しっかりと食べないと大きくならないよ!」と干し肉をサービスで持って来てくれた。それもかなり大盛り!
固い干し肉は苦手だけど、ちょこっと食べて後は、アイテムボックスに入れたよ。
「さて、地図を描こう!」
部屋に戻ったら、まだ
机に紙を広げ、インクを羽ペンにつけて描こうとするけど、記憶がごっちゃになっている。
「ええっと、十一階は……」
うんうん、思い出そうと唸っていると、
「アレク、紙とペンとインクをアイテムボックスに入れろ!」
「えっ、
ふふふ、ブラシ、結構高かったけど、地肌を痛めたら駄目だからね。
バスケットから
「猫ではない!」とか文句を言っているけど、初ブラッシングにしては大人しい。暴れて、爪を立てる猫もいたからね。
それには慣れているから、優しく言葉を掛けながらブラッシングを続ける。
「綺麗にしてあげるよ」
あっ、
『こんな事より……アイテムボックスの中で……地図を……眠い……』
「寝ちゃったね」
ソッと
「そう言えば、紙とインクと羽ペンをアイテムボックスに入れろ! とか言っていたね。もしかして、機械兵をバージョンアップさせたのと同じ感じかも?」
アイテムボックスに入れてから「
「やったね! これなら楽チンだ!」
出して見たら、迷宮ダンジョン十一階の地図が描かれていた。
「うううん? しまった! 隠し部屋も書き込まれているよ!」
がっくりしたけど、隠し部屋を省いたこれを書き写したら良いだけだ。思い出しながら書くより楽ちんだよ。
夜までに十五階までの精巧な地図を描いた。横には出る魔物の種類も記入したよ。
やっと起きてきた
「私の指導が良かったのだ!」と言われたけど、寝ていただけじゃん! まぁ、ヒントは貰ったから、森亭のシチューを出してあげた。
金熊亭の食事は、まぁまぁだからね。
今夜は、ルシウスもジャスもいない。昼は花街の顔役との話し合いや取引だっただろうけど、夜は? ちょっとモヤモヤするけど、
魔導灯だと、火が揺れないから本が読みやすい。
それにしても
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