94 ハイフン - E ・ 月の神 (イラスト付)



『ハイフン‐E』のドラマはSFの中で『サイバーパンク』というジャンルだ。


  六十年後くらいの近未来を舞台に、災害だけではなく、前代未聞の宇宙線嵐などで日本が滅びる寸前になり最先端の技術のおかげでまだ人間が生き残っているが、生活必需品を取り合う暴力事件、そしてギャングの戦いが増加した。

  それを抑制するために数十年かけて日本憲法を改正し続けたことで結果としてこのドラマの時代に『安全官ウォッチャー』という警察が既存した。彼らは全身恐ろしい防護服AD-11姿で厳しく巡回して、自分の判断で犯罪者ヴァイオレータを因果なしに殺せる特別部隊だ。ドラマのいろんなシーンで市民は無事だけど、どこからかよく銃声が聞こえて恐怖だらけの生活をするという描写で、よくあるディストピアの設定だが新しい感覚だと言えた。

  安全官による治安維持の影響は東京や周辺までで、ほかの都道府県テリトリーには複数の派閥の領土メトロに仕切られ彼らにとって東京の中央政府OJCGはただの僭主団体ドブネズミで常に糾弾し日本の支配権を取り戻そうとした底流が多かった。


  本作は大きなプロジェクトで去年の五月くらい、『静かなプロローグに近い』に出演しながら美月は『ハイフン‐E』の出演オファーをもらったと聞いて私も驚いた。

  キャスト全員が大物でサポート役の俳優たちにいたってもだれもが美月より有名だと言えて、なぜ緊急にえらばれたのか今まで理由がわからなかった。当然これは天羽監督の大作だが、SFだから定番のドラマより視聴率が予測しづらいので、最初テレビ局が『ハイフン‐E』はよくあるホームドラマ風にすると提案した。しかし、SFの方針に進みたい天羽監督が努力してプロデューサーに働きかけてやっと複数のスポンサーがつき、戦争までじゃなくても美しいバトルシーンを毎話入れることができた。

  高齢者の視聴者にも配慮したので、いろんな年代のキャラクターの関係を強調して家族ドラマの成分を強めた。その話題は、ほぼ毎日ニュースサイトにドラマ関連の記事がアップされた時期があり、まだ覚えている。最終話で二十二パーセントの視聴率を取ったのは長いことなかった出来事だった。


  このドラマは多くのキャラクターの視点から伝えて、そのなかの『KANAGAWA-07』という地域の領主の養女『マリヤ』が美月の役だった。

  子どもの頃、売春から救われた彼女は、世界の悲惨な出来事を見せないため養父の領主はマリヤを神奈川で保護して、戦争で亡くなった彼の妻と娘を贖うようにちゃんと彼女をいい学校コンサバートリーに通わせ、かつての日本の女性のようにまともな教育を受けさせた。

  マリヤはそとの苦しみを知らずに思春期を過ごすが、彼女の友人が東京を旅する際に不正に謀反人だと裁かれ処刑された。彼らの死をきっかけに平和を取り戻そうとマリヤは条件交渉をするため勝手に敵の領土メトロ丹沢山TZWに行った。

  危険でしかも彼女は上手く話せなかったが、丹沢山TZWの領主が彼女の勇気に感動し彼らは『KANAGAWA-07』の領土メトロと休戦することを約束して、それからだんだんとその協定がほかの地域にも広がった。主役ではなかったが、目立つ役のおかげで多くの日本人が彼女の顔と名前までも覚えてくれ、大ブレイクだと言えた。

  気づくと彼女はもう有名女優になっていた。


  冬に撮影が行われ相変わらず美月はたくさんの現場写真を私に送った。こっそり撮ったものもあるかもしれない……。キャストのコスチュームはたまにコスプレ衣装に見えるのは日本流の実写だからか、美月のマリヤ役はそこまで漫画っぽくなく、よく白いワンピースに上着を着た姿で登場してかわいかった。ニュースサイトの『ハイフン‐E』の記事のなかにたまに美月のこともあって、覚えているのは彼女の写真についてだった。

  共演者の樋口海帆みほさんは有名な三十代前半の女優で安全官役の一人だ。彼女はインスタに自分で撮った美月のちょっと逆光の写真をアップしたのだが、それが奇妙で美月の後ろに大きな虹色の円光が見えた。

  私は美月といるとき一緒にこのニュースのコメントを読むと感動した、美しいや彼女は天使ではなく『神様』じゃないかと言う人もいた。美月は説明した。

  「実はほかの人も撮ったね、あのときのアングル」

  「……だれかが君のことに気づいたら、嫌なんじゃない?」

  「しょうがないけど」


  美月はため息をつくと続けた。


  「私はさ、生まれてから変なことが多いようね、それを家族のみんなは秘密にしてくれたけど。でも私はなにか珍しいことができても意味がないでしょ、結局ただ変な人だから、お祭りに連れ出されて見せものみたいね」

  「いつでも美月に付き合うよ」

  「私がそんな変な人になっても?気が向いたら東京中、路線の周りに野草を生やせるくらい」

  「まじで?」

  「冗談……なぜ彰くんはまだ一緒にいるの?私はこうなのに」

  「いいよ、みんな奇妙なところはあるからさ。美月は今大人気だし、私のことが嫌になるかなと心配してるんだ」

  「そんなことないよ!ただ彰くんに相応しい女の子、長く一緒にいる子がたくさんいると思うけどね……私の女優の友だちにもさ、明るい子が数人いるね。彰くんともっといい感じじゃないかって」

  「美月」

  「うん?」

  「私は君に相応しくないってこと?」

  私たちは見合うと美月が答えた。「いや……でもお祭りで運ばれた人って大丈夫?普通の女の子ってそういう意味かな」

  「美月は普通の女の子だよ」

  「そう?」

  私はうなずいた。「うん。私は君が好きだから、急に自分は私の愛を受けないなんて珍しいこと言わないで」

  「……彰くん」


  

美月のCMの仕事は『白いままに走る』のときからたまにあったが、『ハイフン‐E』の放送がはじまると驚くことに二つの大手企業から提案書が同時に来て、テレビ番組やイベントの出演が何倍も増えて美月が忙しくなった。

  こんなスケジュールで美月がしばらく将来の不安を話さなくなって、事務所の手数料と税金を納めて残った何千万円かは十八歳の美月には多い。それは早すぎたせいかもしれないが自分の努力で稼いだお金より、盗んだみたいと彼女自身はよく言った。

  日本で質素に生活するのは当たり前で、芸能人みたいにお金があると高い服装などを見せびらかす人がいて、過剰になって常に変な姿をする有名人もいる。お金で人は変わるとよく聞くが、美月もそうかもしれない。

  ブランド商品などの高い物に詳しくなった彼女のマンションにたまに行くとそれを見せ、なかには数十万円のカバンもあった。

  そして私は言った。「きれいだね、だから女の子はほしいかな」

  ベッドの端っこに一緒にすわった美月は答えた。「そうでしょ、いつもあのカバンを使ったら恥ずかしいよ」

  美月が言ったのは前に愛用していた六千円くらいのショルダーバッグで、今はクローゼットの隅に置かれているらしい。

  美月の友だちの何人かは有名な女優だし、みんなは高い物を使うそうで、身なりをちゃんときれいにしないといけないプレッシャーがあるらしい。「……え?あのネックレス。新しい?」

  私に美月は答えた。「あ、言い忘れてた!これはダイヤでちょっと高いけどね」

  美月のデスクにあるジュエリーの棚には繊細なネックレスがあり、さっき部屋のライトで小さく白い輝き放つと私の目を惹いた。

  何万円、いや何十万円かと思うと私は聞いた。「なんで買ったの?イベント用?」

  「一回使ったけど、まだわからないね。かわいいと思わない?」

  「うん。でもいっぱい買ったら貧乏になるよ」

  「それは君に任せるよ!」

  それは投資のことだった。


  二年前くらい、高校のときに私は株を売買しはじめたから、よくそのことを美月に話したせいで、ちょうど芸能界で稼いでいる彼女はだんだんと私と一緒に投資するようになった。(つづく)





――――――――――――――――――――

後書き


祭りで運ばれるー>神輿です


ストーリーの裏側で彰はよく半分冗談で美月は神様だと言う。

でも一般的に神様の概念は『用』があるからではないか、希望を叶えられる何かで、実態があったらただ人に捕まって祭りの神輿で運ばれるんじゃないかと美月は思う。


『神様』とは実際どんな者か、誰か、と一切誰も聞く気がなかった。今まで美月の人生、無用の存在から女優になると急に知らない何万もの人から好かれ、人は外見しか見ないのではないかとまたトラウマになっていた。


この価値観の社会にいることと神様は、周りが自分の『用』にしか興味がないという永遠の話で、美月にとっては怖い想像です。


(『ダイヤ』は前にちはるから借りたダイヤのネックレスのレファレンスです。今美月も持っています)


イラストは美月が自分の本当の姿?にコスプレしています

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330656478930108

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