85 ビジネストーク『らっこ帝国』(お泊り) (イラスト付)


「『変態女優がおじさん騙す趣味がバレた!全国注意!!』みたいな記事?そんなチャットばかりしたから浅井みたいに学生のときいい彼氏と出会わなかったよな」結城さんは言った。

  「チャットはただ去年からだよ!」

  彼女たちの会話に私はよく笑うだけだった。


  干した自分のワイングラスを気づかずにワインボトルを取って注いで、するとある話に私が言ったのは『面白いですね』じゃなくて、『面白い!』だったんだ。ひどい、多分みんなは敬語を使わないせいか私も忘れちゃった。


  でも彼女たちは、私の友だちか。


  学校の友だちもこんな感じだけど、これは芸能界の先輩たちで、しかも知り合ったのはそんなに長くないのに、私はあえてそう考えたらいいのか……

  結城さんはまたちょっと芸能界から消えることを話した。彼女みたいにかわいい、私より遥かに売れているがまだ心配しているのか。三十、四十代のとき私もどうすればいいか、彼女の冗談を実現して金持ちの旦那を探すか、または隣のスーパーにバイトからやり直すのか。

  だけど、将来はどうでも、今夜は楽しい。こんな食事と会話、みんなとまた一緒にいたい。そのとき私は芸能界から消えたら、またみんなと会えるかな……


  そして私は食べる前に撮ったテーブルの料理の写真をお母さんに送ると、結城さんはちはるとのビジネスについて話していた。

  まだ二十一歳だがちはるはいろんなビジネスをしていると聞いたことがあったが、『らっこ帝国』というお弁当専門店がちはるの店だったと初めて聞いた。

  知人の勧めで中三から彼女は埼玉のファストフードのチェーン店に投資して、ただ運営の仕組みを学ぶためだが、上手くいったので今では三店を持っているとちはるは説明した。お弁当の店ならば、人形町に二店あって、はじめたきっかけは高校の文化祭で串揚げの店をしたからだった。彼女は近くの商店街のお肉屋さんに数回通ってオーナーと仲良くなってから供給のことを教わったので、自分もやったら意外とできるんじゃないかと思ったそうだ。

  ちはるの家族から見ると彼女はお嬢様というよりお姫様だと言えるが、今までのビジネスは彼女が自分のお金ばかり使って、黒字にしたそうで結城さんと半田さんも彼女と投資していると聞いた。


  そのあとちはるは携帯で弁当屋『らっこ帝国』の貸借対照表をこっそり見せると私に言った。「実はあと五、六支店広げられるけどさ、まだ味を研究していて、仮に半年分のバリエーションを作っておきたい」

  「へー、すごい!ちはるちゃんは忙しいのにね!」酔っ払った私はいっぱいうなずいた。

  「あ、それは店員さんたちに任せてるの、でもよく店に通うべきだしいつも店のことを考えてちょっとストレスだけど……競争激しい?」ちはるは聞いた。

  「えっと、今コンビニ以外にも多いよね、お弁当を売ってる店って。ちはるちゃんの店は大丈夫なの?」

  ちはるはなぜか笑った。「激しくないよ」

  「え?」

  「そんなに激しいならもう新しいビジネスは誕生しないね、でも毎年定着しているビジネスがどのくらい赤字になって買収されたり合併されたりするか知ってる?どの企業でも見ると弱点があるの。専念したらなんでも君は倒すことができるよ、現状を認めないってお母さんはよく言ったね」

  ちはるは私をまた見ると続けた。

  「偉い外見で怯えられて、大人しく従って一部として吸収されるのは日本人の育ち方かもね。コンビニならローソンやセブン、ファミマ……でも美月ちゃんは気づいた?だれもそんな店からお弁当を買いたくないんだよ」

  「そう?」

  「うん。コンビニの例えはピンと来ないね、もし自動車メーカーのトヨタとホンダみたいと言ったらさ、いい車をいっぱい作ったけど、学生たちは『将来トヨタを買う!』なんて言わないね。これで人は高級な車がほしいと見えても、そうじゃないと思う。人はただなにを愛したいかじゃないかなって」

  急に半田さんは言った。「ホンダが愛されない、半田ハンダも愛されない!」

  「関係ないよ!……一般にいい車じゃない、人は『私の車』がほしいんだ。それはね、リストのなかで一番嫌じゃないものをえらぶじゃない、繋がりたい、買いたいものだ。家に置いて毎日見てこれは『私のだ』って感じね。だからさ、人が高いメーカーの車をえらんだらただ普通のメーカーはこんな気持ちを与えられないの……あとは私は以前気づいたのはコンビニのお弁当を買う人もそんな感じ。食べたくないものの中で一番大丈夫なのをえらぶって。普通の天井の蛍光灯に照らされたお弁当より、『らっこ帝国』のお弁当を買うからいい感じ、これは平凡な人のための平凡なお弁当じゃない、あなたのためのお弁当にしたい。こんなポジショニングって市場には結構余裕があると思うね」

  「ちはるちゃんは店に自分の名前を使った方が人気になるじゃない?『by Chiharu』を付けるとか」結城さんは聞いた。

  「だめでしょ。ただのお弁当ってだれも興味ないと言ったよ。逆にスキャンダルとかがあったら店に入りたくないばかりでどっちも悪いし……君たちの顔を看板に載せれば?」

  「あれ、芸能人の居酒屋みたいね。福岡にもあったよ。やだやだ!」

  結城朋子さんは福岡県出身だ。

  結城さんは笑うと、ちはるは言った。「もう少し運営が安定したら一緒の写真を店にかけられたらいいけどさ、まず君たちはもっと助けてくれない?パートナーならお金をポンと投げてなにもしないわけじゃないでしょ?」

  結城さんと半田さんは見合うと結城さんは答えた。「あたしと聖ちゃんも詳しくないからさ。店員はそんなにがんがん働いて邪魔するだけで、しかも私たちの契約にはそうするなんて必要だと書いていないでしょ」

  「それは常識だよ!」

  

  その話からちはるのあり得るスキャンダルは脱税のことじゃないかとみんなは言って笑うと、思い出したようにちはるは私に撮影が終わるときになぜよく花束をあげるか理由を聞いた。私は頭を振った。「感謝するために?」

  「いえ、そのなかにギャラの現金を入れたんだよ」

  「え?」

  「冗談!」

  みんなはまた笑うけど、今まで真剣にいろいろ語ったちはるを見ると、それは本当に冗談か確かじゃなかった。


  夕食のあと、私たちはちはるのベッドルームに移動した。

  最初に服を借りた日、そしてロイさんの誕生日パーティーから私は数回ここに入ったことがあるけど、いろんなものがあっても潔癖に整えられていた。ぬいぐるみのコーナーはないが、優しい色のベッドシーツや編み物の雑誌みたいなのもあって、宮殿みたいだってそとを見ただけならこんなにかわいらしい部屋があるなんて想像できない。

  ……編み物?

  ちはるはそんな趣味もあるの?

  中学生のとき私は挑戦してマフラーを作れたが、店で遥かにきれいなものを見たせいで自分は得意じゃないと思ってから諦めた。ちはるのベッドルームでニットを見なかった私は彼女のキラキラしたジュエリーの棚に注意を移して、ちはるの許可を得てネックレスを取って首にあててみたり、鏡で左右を見ていた。

  その間ちはるはテレビの棚の下からゲーム機を出した。





――――――――――――――――――――

後書き


ちはるはもともとお金持ち??


『専念したらなんでも倒すことができる』と教わった彼女は、怯えずに必死に勝つ方法を考えるようになった。だがビジネスの世界より、将来彼女は何と戦うのかまだ知らないだろう…


イラストはちはるが『らっこ帝国』の店をチェックしに行っている時です。

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330655366971172

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