84 美月 vs. 恋バナ (お泊り) (イラスト付)
「そんな嫌なことしないよ」
「本当?」
「芸能界なんて確かなことがないからさ、いつ私は売れなくなるかもわからないし、同じようにともちゃんに言いたいよ」
結城さんはうなずいた。「……そんなドキュメンタリーを見たことある?六十、七十代昔の有名な女優や歌手さんたちのことってさ。見るとだれ?って思って、でも芸歴はすごい長かったね。たまに考えたのはさ、二十、三十年後、今の芸能界は過去になって、ちはるちゃんとほかの有名人はもうだれも知らないじゃないかな」
「……まだお金があったらいいじゃない?」ちはるは答えた。
「うん。知名度に執着するまでじゃないけどさ、そのときは懐かしいかもね。今の知り合いのみんなはばらばらになって、まだ友だちかもしれないけどさ、多分結婚して、こう会うのは旦那がだめと言ったりして……」
そして半田さんは言った。彼女は一人で完璧にコスプレをして、今金髪のかつらを付けていて意外とかわいいけど。
「そうそう!聞いたことあるね、毎晩夕食が準備されていないと不機嫌な旦那って。あとは親戚だけどさ、奥さんの友だちは家に来るのも嫌だそうだ。結婚するのはちょっと大変なことじゃないかなと思うけど」
ちはるはちょっと考えた。「ひどい旦那ね。私はとくに結婚するつもりなんてないの」
「え、そんな人いるでしょ。相川は?」
「もう別れたよ」
半田さんはちはるに笑いかけた。「信じない。携帯を見せて」
「嫌だ」
「ならまだ連絡してるね」
ちはるはため息をついた。「ちょっとだけ。そんな男って、セックスばかり考えてだめ」
セックス……?
あの相川さんって、俳優でしょ……
私は初めてこの交際のことを聞いて、いろんな芸能界の関係と同じようにこれはニュースにならなかったけど。
相川孝太郎さんは百八十二センチくらいかな。でも彰くんとは結構身長差があるし、ちはると相川さんなら三十センチ近く差があって、どうやってキスするかなと想像していた。
半田さんはグラタンを自分の皿に取ると言った。「前に読んだことあるけど。女が美容のことを考える回数と男が性的なことを思うのと同じくらいの頻度って本当かな」
「いいえ、普通でしょ。私にはそんなに問題ないけど。でも出かける度に、終わるとそういうことをデザートみたいに期待するなんて全然だめ。疲れたんだ」
「……一夜に何回?」
「その疲れじゃないよ!関係に疲れるの」
ちはるに結城さんは言った。「え、私の彼氏はそこまでじゃない、かわいいと思うの。なにかしたいときは私に許可を聞くし」
「なんの許可?」ちはるは聞いた。
「だって、疲れるとか、気分はいいかどうかを聞いて、だめだと言ったら彼は平気だよ」
「いいね、だから最近ハッピーに見えるのかな?」
実はしばらくして気づいたけど。みんなほろ酔いかな。
普段しゃべらないことを飲むとしゃべるなんて、『シロハシ』のロケでよく見たけど、楽しく聞いている私もワインの影響じゃないか。そして数回聞かれると結城さんは説明した。「え、ただハグしたまま寝る日も多いよ……彼氏はあばれないね。休みの日とかもうちょっとセクシーなランジェリーを着て彼をサプライズするときもあるかな」
え?
しばらくそんな会話が続くと、大人しく待つだけより、たまに男子は彼女がはじめる側になってほしいそうだ。ある日の朝、結城さんは寝ている彼氏の大事なところを楽にするためにさわってみると、彼は怒らず喜んでいるようで、そのあと日中に彼は珍しく六、七回メッセージを送って来たそうだ。彰くんがこんなに私に連絡しないのは私がまだこの技を使わなかったせいか?
そう考えているとちはるは私の彼氏はとてもイケメンだと言った。「わ、私の?」
ちはるは私にうなずいた。「でしょ。あの島根の男子って。前に私に見せたよね」
結城さんと半田さんを見ると彰くんの写真を見たがって、ツーショットのはちょっと恥ずかしいし、去年の高二の文化祭でのグループ写真が格好いいと覚えていたのでそれを見せた。イケメンと言ったのはお世辞だと思ったが、半田さんの反応がちょっと……
「
その写真から、ほかの写真があるかとさっき半田さんが聞いたので私はもっと見せた。そして半田さんはちはるに素早く手を振った。「全然よ!イケメンなら私はだれでも好きなんだ」
「そう、聖ちゃんはちょっと彼氏のことってこだわりがあるみたいね。珍しいけど」
「私の『旦那様』は数人いるけど、厳選するよね。ねえ、彼は浅井の同級生?」
「はい、中学校のときだけど」
「えー、学生時代私はこんなに運がよくなかったね。彼とはいい関係?」
「あ、そうね。彼はいろいろ心配してくれるし、芸能界で活躍できるようにずっと支えて、だから……」
「上手い?」
「え?」
突然、結城さんは私に聞いた。
上手いって……なに?
どう答えたらいいかと考えながら、それは学校に上手いと結城さんは解釈してみんなは笑った。
そして半田さんは言った。「あー!彼氏、彼氏、彼氏のことばかりなんだ……私は彼氏がいないからもう勘弁してよ」
「君は二次元派でしょ」結城さんは笑った。
『二次元』は現実に存在しない、漫画やアニメなどの作品にあるキャラという意味で、主に女子のキャラに使うが。「そんなことないの、いい人と出会ったら付き合いたい……この前ネットでチャットしたけど」
「あのおっさん?」
「そうそう、ともちゃんは覚えてるの。しゃべるのは本当に好きだけど。え、おじさんでも見た目が悪くないね、でも私よりすっごい未成年の好みかと思うんだ」
さらに聞くとこの男は五十歳くらいで、映画と本のコミュニティのサイトから知り合ったそうだった。彼のそういう趣味は犯罪じゃないかと結城さんが聞くと、半田さんは自分の方が変態かもしれないと言った。
「……聖ちゃんはさ、周りにいい男子が山ほどいるのに」
半田さんは結城さんに答えた。「交際するまでならさ、気楽に連絡を取れる人の方がいいね。彼もそんな感じだけど。もしオフで会って週刊誌に撮られたらどっちが変態と言われるかわからないね」
「『変態女優がおじさん騙す趣味がバレた!全国注意!!』みたいな記事?そんなチャットばかりしたから浅井みたいに学生のときいい彼氏と出会わなかったよな」結城さんは言った。
「チャットはただ去年からだよ!」
彼女たちの会話に私はよく笑うだけだった。
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彰のこと、美月の女優友達にも好感触?変な展開にならないように……
次、友達も投資しているちはるのビジネスについて語ります(酔っぱらっているままに)。女優の仕事は不安定なので、色んな収入源があった方がいいと。
イラストは半田聖節が「あー!彼氏、彼氏、彼氏のことばかりなんだ……私は彼氏がいないからもう勘弁してよ」と言っています。
https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330655275160852
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