90 彰が蔦双葉の保護者になった話 (イラスト付)


そして私たちは渋谷109に行った。


  蔦の東京での部屋はもう家具が揃っていて必要なものも結構買ったが、まだちょっと空いていると彼女は言って、気に入ったなにかを発見したらもっと買いたがった。そしてアパレルショップをまわったときには、もう二時過ぎで蔦はまだお昼を食べていないと思い出したので私をレストランに誘った。私は答えた。

  「私はもう食べたから、ただ一緒にすわれる店でいい?」

  入ったのは近くにあるはなまるうどんで、だけどこの店のメインのうどんじゃなくて蔦は唐揚げ丼をオーダーして、なんのためにこの店に来たかと思った。本当に私がなにもオーダーしないかと蔦が聞いた。「ドリンクとか、揚げ物もいいし」

  

  「するする!」


  蔦の後ろのテーブルのオタクみたいな男はおいしそうにうどんをすすって、実はほかのテーブルも同じような音を立てていた。まだ本格的なアイドルじゃない蔦は、たまに人に見られるのは桜田STのメンバーだというより、ただ彼女がかわいいのが理由らしく安心した。芸能界に異性といるのを発見されて一番問題となるのはアイドルたちだから。

  「松島さん見て!」

  ドリンクメニューを見ているときに、蔦は自分のショルダーバッグからなにかの封筒を出すと、そのなかの一万円札の数枚を取り出して私に見せた。「え、それは?」

  「お父さんお母さんからもらったの。私はもう金持ちだー、松島さんになんでも奢れますよ!」

  は?「いや!それはいろんな費用のでしょ?もう藤間ふじまさんに預けたかと思った」

  「だって学費とかもう支払ったし、あと彼女にあげたらは使えないよー、はーはっはっはっはっ!」


  彼女の悪の笑い声で隣のテーブルも振り向いて見た。


  美月のお母さんは美月がキャッシュカードとクレジットカードを持つのに反対しないが、蔦の両親の場合はもし現金を使ったら、払う度に手で紙幣とコインの価値を感じられてカードより無駄に使わなさそうなので、今年は現金で試したいと彼らは私に言った。今の蔦を見ると彼らの心配は根拠があるらしい……

  蔦の両親は二人とも公務員だ。蔦のアイドルになりたい夢について最初ほかの家みたいにただ子どもの夢として取り扱って応援していたが、本当に蔦が何万人のなかから受かって東京に引っ越すこととなったのは想像しなかったはずだ。仕事をやめて娘と一緒に来ることもできないし、十二歳と言ったら子どもだが難しい年ごろだ。事務所の寮に住めるけど、どんな人からなんの影響を受けるか全然わからないし、アイドルを諦めることを両親は持ち出すと蔦と喧嘩になった。

  その事情は蔦から代弁するよう頼まれて、ある夜私は彼女のお父さんと電話する機会があった。


  今まで聞いた蔦の気持ちを語った以外、去年のその時期にそろそろ私も東京に進学するつもりなので、蔦の面倒を見られるかもしれないとお父さんに言った。

  「メッセージで事情を聞いて、できれば会いに行くことができます」

  大学生になるとそんなに忙しくなさそうと思った。あとはこうも言った。

  「えっと、母は心理学者ですけど。彼女から聞いたのは子ども年齢によって達成感がありますね。例えば私は今受験のことを大切にしていて、小学生を見ると彼らに人生はわからないよねと思ってしまいますが、多分大人も私を見ると、学生の生活は楽ね、自分たち社会人の苦しみを知らないとも思いそうですし……蔦さんお父さんの視点がわかりますね。アイドルで成功する人は数少なくてちゃんと就職した方がいいですけど、双葉ちゃんがいい仕事につくことを望むのは彼女の幸せかもしれません。でももし今双葉ちゃんが自分の夢をつかんだら、まだ中一なので大学の進路を決める時間があるし、それにアイドルの生活に良し悪しがあっても、勇気を持ってその道に踏み出すのは、彼女の年齢に対して精神発達に大切なことだし、健康的な大人になる一つの段階だという意見です」

  説得するため私はちょっとめちゃくちゃを言った。十八歳の私も両親からしたらまだ子どもに見えて、やっと彼らが私の言葉を少し信用したのは私の大学の知名度のおかげだったのかな。


  実はその時期、受験のことより私はよく蔦のことを心配していた。私は彼女の両親に同意だが、芸能人やアイドルになりたい同級生がいて気持ちがわかるし、でも蔦がアイドルになりたいのはただ甘えたいだけじゃなく、だ。このまま福岡にいても、大学を卒業した途端に仕事がはじまって学生時代と変わらず束縛されると彼女は言った。蔦はたまに大人っぽく、女の子だからかあまり両親を信用していなさそうだった。

  『松島さんもお母さんとこんな日々ですか』

  蔦のメッセージに私は答えた。去年の九月にオーディションの結果が発表され、それから一ヶ月くらいが経っていた。『そうでしょ、大人だから』

  『なら、もし私がアイドルになって、楽しそうな日々を過ごせたら、それは自分が大人じゃないという意味ですか』

  『……このやり取りを消してね』

  『え?』

  『お母さんは見ているでしょ』


  蔦がアイドルになる道で東京へ引っ越すことより、一番邪魔するのは『私自身』かもしれない。

  もし蔦の両親が私が彼女を狙っていると見たら、東京に信用できる人がいなくなるのと同じで、全体的に疑わしいとさらに思って、引っ越しが難しくなりそうだ。 この心配を蔦に伝えると彼女はもういろんなメッセージを消したそうで、必要なことだけ連絡するという印象にしたそうだ。私が高三になる前の春休みに初めて彼女の両親と会って、彼らは私をそんな男子と思っていないらしいが、念のために私はそういう芝居をしなければならなかった。

  今年の二月に蔦は東京に引っ越して、事務所の寮ではなく美月の女優友だちと一緒にシェアハウスに住むことになった。彼女は藤間ふじま穂花ほのかという名前で、美月の一つ上、一回会ったときの彼女はフレンドリーでしっかり者のようで、蔦への心配が解消した。

  まだ私が東京に引越していないとき、ちょうど美月と会うために東京に来ていた際、蔦の桜田STの会議があって来られない彼女の両親の代わりに参加するよう頼まれた。


  事務所が所属するグローバル音楽企業のビルの会議室で行われ、話は予定と用意するもので普通の内容だったが、三期生の新メンバーは十五、十六歳未満の子が多いと見ると、保護者の存在はただ情報を正しく伝えるためらしい。アイドルになるのはほかの芸能界の仕事と同じように不安定かもしれないので、メンバーの保護者たちも心配がありそうでお互いの会話をよく見た。

  十八歳の保護者の私は当然に目立って、そのあと蔦と仲良しの三期生メンバーの両親と話したときに、私は蔦の遠い親戚うそだと自己紹介した。その内の一人のメンバーは戸田杏奈、カリフォルニア州出身だそうで、若いときにお父さんがそこで働いていたそうだ。

  会議のあと蔦と私も彼らと一緒にレストランに行って会話はアイドルのことが多かったが、お父さんは言った。

  「稼げてる人は、桜田STにでも鈴木茜と飯野愛未くらいじゃないかね」

  私のそばで蔦と戸田杏奈はメニューを一緒に見ていた。鈴木茜と言えばグループのエースで、去年彼女のグラビアを美月に送ったが間違って楓さんに送ってしまった。

  お父さんに私は答えた。「そうですね、双葉ちゃんの両親もよく難しいと言いました。ですけど、女優と比べたらアイドルはまだ有利だと思います」

  「それはなに、女優と?」

  「えっと、例えば成功する可能性が同じくらいことにしたら、アイドルがトップじゃなくてもメディアに現れる機会が多くて、ファンも結構いるし、応援って目の前で感じられますね。将来はどうなっても、つらいときがあっても、ほかの芸能界の仕事より楽しめるらしいです」

  そう言ったのは私が美月からいろんな芸能界の話を聞いたので。


  彼らは今埼玉県に住んでいて、桜田STのレッスンとほかの用事があれば戸田杏奈もそこから通うが、冗談か、お母さんも彼女の面倒も私に任せると言った。





――――――――――――――――――――

後書き


『自由に生きたい』蔦双葉と彰は共鳴するところがあり、だから彼は協力して蔦を助けた。


彼はそれだけを考えているが、今までの彼の女子への怪しい経歴を見ると、今回も下心があり?戸田安奈という桜田STのメンバーも新しいハーレムの一人だと憶測出来ます(ΦωΦ)フフフ…


※彰は子どもの頃から知的でカリスマ性があって、見た目や言動で簡単に信用されるキャラクターです。


イラストはうどん店でのシーンです!

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330655919476454

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