13 背が高い女の子にドキドキ



よく私は、アニメで日本の文化祭の風景を見たことがあった。だけど中学校のだからか、自由に出店して楽しむのではなくて、紗季が言っていた通りただ学生のみんなは体育館にすわって順番に部の演技を見る内容だった。朝九時から私は保護者と後ろの椅子にすわっていた。演技のなかには面白いのがあったけど、科学部のペットボトルロケットとかただ義務で出演しなければならないみたいなのも少なくなく、実は私は数回眠った。昼は学校でお弁当を売っていたから私はそれを買って食べて、また体育館に戻ると眠くならないため私は携帯であそんだ。すると午後一時半にアナウンスがあった。『次は英語部です。十四人の部員は『スカーレット・ウィステリア』という恋愛ストーリーの舞台を提供いたします』

  朝から勤めた先生の声は、退屈そうな口調で視聴者の気分とあまり違わないけど、今回は大きな拍手が聞こえた。なにこれ?

  『スカーレット・ウィステリア』の台本はちゃんと書かれたが、開演時の社交ダンスシーンから大分めちゃくちゃで英語の訛りとスピーカーの音質のせいで台詞があまり聞き取れなかった。見ながら心配したが、コスチュームとえらんだ音楽もいいし、ビンタのシーンが多くて、しかも女の子の部員は、みんな熱心に演技してたから楽しく、終わったときも体育館に声援が響いた。私は遠くにすわっていても、閉幕でお辞儀した出演者の笑顔がはっきりと見えた。

  学生たちのなかに紗季がどこにいたかわからないけど、三時くらい文化祭が終わると急に彼女は保護者のところに現れて、一緒にカラオケ店に行くかと誘った。「カラオケ?」

  彼女はうなずいた。「歌うのよ。行ったことある?あ、私の友だちも一緒に行くの、かまわない?ささちゃんは会ったことあるね」

  紗季以外三人の女の子も一緒に行った。カラオケ店の部屋は、そとにならんだ小屋で、入るとなかにモニターと大きなソファがあって多分都会のと一緒かな。近くにこんなところがあると気づかなかった。

  

  文化祭、そしてカラオケ店の話を美月にメッセージで伝えると、私は歌ったかと彼女は聞いた。『ううん、すわっただけ』

  『だめじゃない?』

  『おやつを食べれたからよかったよ。美月具合はよくなった?』

  少し待つと彼女の返事が来た。『うん、大丈夫。たまに人がいるところはちょっと疲れるから』

  実は彼女は文化祭に行ったが、元気が出ないと感じたからお母さんと一緒に家に帰ったそうだ。『そうなの』

  『でも私も見たかったね、舞台って。紗季のお姉さんも男装したでしょ。格好よかった?』

  『うん!もうすぐ彼女たちは動画をアップするらしいから、あとで私チェックしてみるね』




文化祭から一週間後父側の祖父母とおじさんが訪れた。


  祖父母と一緒に来たおじさんは、私の父の弟だった。東京に住んでいるみんなは、この辺りを旅行していて島根にも寄ったそうだ。朝に出雲大社と稲佐の浜に行った彼らは、話すと私も行ったことがあるかと聞かれた。「はい、母とでした」

  祖父は微笑んだ。「よかった。島根は文化が豊かだからね」

  たまに祖父母と連絡していたので、彼らが来るのは先に知っていたが、平日の午後だったから母は職場にいて、おばあちゃんは『ラッキーランスロット』から挨拶するために来た。おばあちゃんはしばらくいたが、店に戻ると私は一人になった。

  このおじさんは、まだ若く見えて知性もありそうだった。彼は、デンマークで私のイヤホンを取った人かと思いながら会話すると、祖父は私が東京に進学しないのかと聞いた。「え、どういうことですか?」

  「『林ヶ坂』という学校だね、ここ」

  わかったのは祖父は七十四歳で、半袖のシャツとズボン姿は特別じゃないけど、なぜか富裕だと感じた。微笑んでいる祖母の穏やかな行動もそんな印象だった。

  祖父は携帯でその学校の写真を見せた。一般の校舎と違ってガラス部分が多いキラキラした十一階の高いビルで、すべての教室がそこにあるそうだ。祖父がきれいなグラウンドとほかのところも見せると、おじさんは言った。「おじいちゃんの家から近いね、駅二つだけだよ」

  祖父はうなずいた。「私の家に住めるね。いろんな部屋があるけど、書斎の隣の部屋は庭が見えるし、彰くんが好きかな」

  「庭ですか」

  「うん!もう写真を見せたことあるね。池もあって、でも木陰が多くてちょっと暗いかな。あ、学校の話だったね、林ヶ坂の修学旅行はオーストラリアに行ったと聞いたね」


  オーストラリア?


  祖父は続けた。「去年のことね。クラス全員が行って楽しそうだった」

  最初ちょっと違和感があったが、午後二時彼らが着いてから帰る四時半まで話すと、私のことについてばかりだったからか、彼らの車が遠くなると妙にさみしさを感じた。

  祖父母たちは、学校の小冊子を置いていって、忘れていたとあとから祖父が学校の写真も送ってきた。学校を訪問して自分で撮ったその写真は、いろんな教室のほか、二、三枚に教室の後ろに貼られた学生の写真もあった……この女の子、ちょっと背が高いじゃないか。

  一緒に立っている男子の四人と同じくらいの身長の彼女は、かわいくて、唇の左上に小さなほくろがあった。よく漫画にある女の子がつま先で立って、そのコマが彼女の足しか描かれていないなら、いつもキスという意味だ。でも彼女はこんなに背が高いなら、もしキスしたらただ普通に立っていていいかな。


  うん?


  私、なにを思っていたか。


  でも彼女は中一?もし来年入学したら会えるかな?


  ……


  バカバカバカ!


  しばらくここで毎日日本語を使ったからか、十月に私はいろんな日本語をしゃべる夢を見た。自分は目玉焼きを作りながらリッケに日本語を教える夢から、釣りのやり方をあるおじさんに聞くのもあった。だけど最近ちょっと変な夢で、私がよく自転車に乗って渡った川につくと、川沿いに歩いた。夜みたいだけど、暗くなかったのは月光のおかげかな。そして私はそこである女の人と会った。

  彼女となにを話したのかほとんど覚えていないが、彼女は自分の家がちょっとしょぼいと謝ると、ここに家があったのかと私は聞いた。「毎回通るとき見なかったですが」

  「ずっとあったよ。野草みたいに人は気づかないだけなの」

  私はうなずくと、彼女は続けた。

  「あなたとまた会えるのは嬉しい。だけど、もし私がいなくなったら私の家は、すべてまだあなたのもの」

  深夜に起きた。トイレから戻ると、窓のそとにちょっと曇ったけど、銀色の明かりが見えた。


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