74 藤間穂花 (イ付)
彼女はロビーでしばらく迷っているようで、するとエレベーターを見つけて進んでいった。彼女のことちょっと見覚えがあるんじゃないかと思った……
ロイさんの誕生日パーティーに戻るときに偶然ロイさんとその友だちに会ったから紹介してくれた。CAの女性の一人以外、一緒にいた若い男性はさっきちはるとの会話でサントリーで働く人たちらしかった。ちはるさんとロイさんの促しで私たちは連絡先を交換したが、これは浮気かとそのあと私はちはるさんに聞くと、彼女は言った。「好きじゃないなら浮気じゃないでしょ。大丈夫」
彰くんの言った『男のみんな』と違って、彼らは胸とパンツを覗くことしか興味がないわけではなく、丁寧でユーモアがあっていろいろ楽しくしゃべることができた。年齢はロイさんくらい二十代半ばで、今日も彼らは仕事があったそうでワイシャツ姿だった。彼らは仕事や友だちの話を集中して聞きながら、もし私が女優でなければ、ちゃんと勉強してこういう社会人になるのもそんなに悪くなさそうだと思った。
ここのお手洗いの数はあまり足りていないので私は下のロビーからパーティーに戻るとき彼らとまだいたかったが、突然私はほかの組に呼びかけられた……
ホールの隣の部屋に、それはなんと言う部屋かわからないけど、多分ここの一番いいソファのセットがあって、十人くらいが集まっていた。二十代、三十代の男女、もともと知り合いらしく派手に見えた。そのなかにすぐに気づいたのはクールなダンス&ボーカルグループGENESISのメンバー
なにか答える前に彼は立ち上がるとホールに歩いて、戻った彼が私に渡したのは最初に私も取った細長いグラスのピンク色の飲み物だった。
炭酸に見えても、実はこれはシャンパンだった。彼も騙された!?
アタルさんはロイさんとどんな関係があるか確かじゃないが、三十代半ばくらいの彼は髪の毛は明るく染めていて、お洒落に髭も短く伸ばして、なぜかこんな夜でもサングラスをかけていた。 彼は自分のソファに戻ると周りの人に言った。「偶然、一、二ヶ月前に俺は彼女のドラマを見たんだ。ここにいろんな女優がいるけど、旭川さんと会えたのはすごい」
旭川?
いえ、覚えていただいてありがとうございます。
「へー、かわいいね。あなた、こっちにすわって」
ギャルっぽい女子はそう言って立ち上がると私を連れてソファにすわらせた。しばらく彼らは俳優の甲斐泰志さんのカナダでのドライブトリップの話についてしゃべるとアタルさんは私に振り向いて言った。「あ、忘れてた。旭川さん、乾杯!」
「はい」
彼のグラスを合わせると、急に彼は眉間にしわを寄せると頭を振った。「いやいやいや。年上の人との乾杯はね、グラスをちょっと下にしないと。このままじゃほかの人に会ったら大変だね、もう一度やってみて」
そしてちゃんと低くして合わせると、アタルさんは笑顔でナイスと言って仲間とまた話した。
多分『不良』だと思うのは彼らの見た目でそこまで問題はなく、酔っぱらったような笑い声にかこまれたせいか自分はちょっと場違いだと感じた。彼らのなかにすわって、もしお手洗いに行くと抜けて戻らなかったら、気づかれて怒られないか。仕事でこのなかのだれかと会うかもしれないから、こんな失礼なことを起こしたらどう見られるのか。
そしてアタルさんは言った。「俺も行きたいけどな、外国人がちょっと苦手なんだ。前の付き合いであまりうまく行かなかったから」
すると二十六歳くらいの俳優甲斐さんが答えた。「それは平気ですよ。でもカナダでは白人より、中華系の人じゃないかな」
「なんで」
「なんと言うか、ヒップがとてもすごかったし、やるって感じだけじゃなくて、声とか表情とか本当に女って感じですね。そう言ったらまた彼女に会いに行きたいですよ」
「へー、そう?いつも白人がもっと上手いと聞いたけど……いいよ、でも本当に俺が一緒に行ってもいいの?ほかの美人じゃなくて?」
甲斐さんは笑った。アタルさんと違って童顔だと言える甲斐さんは、二十三、四歳のときも高校生役で出演した作品があったけど、普段はこんな話をしているのか……「女はいつでもいいですよ、アタルさん。Bros before hoesと言う表現ってやっぱり間違いないですね。久坂もスケジュールを確認できたら一緒に行きますよ」
それは『女より仲間』という意味と私の隣の女子たちが話していた。久坂はあの『ウソルーム』の主役俳優の久坂匠さんじゃないでしょう?
アタルさんも笑うと手を叩いた。「確かに、確かに!俺は楽しみにしてるね!」
大変。私はいつまでここにいるの……
私をここに引っ張った北条さんの女の子が実は優しくいろいろ話しかけてくれて、気分転換に少し散歩してここに戻ると思った。だがそのとき、前にロビーで見かけたパーカーとロングスカートの姿の女の子がここに現れた。
藤間さんはドラマ『小さな宴』の共演者だ。彼女は食べ物を盛りつけた皿を運んでこの部屋に入ってきて、壁に寄っかかって食べはじめた。幸せそうに一つひとつのフィンガーフードを口に入れると、皿にあるほかのものを手で持って調べるように見て、えらぶと次に食べた。
ここにはほかのゲストもいたが、なぜか急に彼女の視線はほかの人たちを通ってこの組に来て、そして私に止まった。気づいたら私たちの目が合った。
口に食べ物が入ったまま彼女が会釈すると、恥ずかしかったのかまた見ると彼女はもうどこかに行ってしまった。
私が持っているピンクシャンパンを少しずつ飲むと、腕を見ると気のせいかちょっと赤くなった。ほぐれていい感じだと思いながら、また自分の前を見ると藤間さんが戻った。
彼女の皿はもう空になっていたが、手には何かジュースを持っていた。すぐにホールへ進まず、躊躇したように彼女は立ち止まると、私を見た。
少し長く見合って、彼女は手でジェスチャーした。
私?
そのジェスチャーはホールに入るかみたいな意味で、私は少しうなずいた。
どうしよう……
「すみません。友だちの所に行っていいですか」
やっとそう私は言うと、アタルさんは答えた。「あ、ごめん。俺らはつまらない話をするばかりだね。じゃあね、旭川さん」
北条さんと彼女の友だちとしばらく話すと、離れた瞬間にまた大きな笑い声が聞こえた。私がこんな風にこの人たちと楽しんだら芸能界に相応しくないかな。
ホールでグランドピアノの近くに藤間さんがいた。持っている新しい皿にはもう食べ物が補充されて、もう片方の手にはオレンジジュースを持っていた。彼女は置くところを探している様子で、お互いにお辞儀すると私は彼女のグラスを持てるか頼まれた。「あ、はい」
「ごめんね」
彼女は私より少し背が高くて、ネットに書かれていたのは百六十二センチかな。彼女は長い髪の毛を後ろに束ねていて、服装はカジュアルだけど、パーティーのカジュアル服というよりただ普通の外出服だった。彼女は携帯でだれかとやり取りすると、その皿を持つ手で私からグラスを取り戻してありがとうと言った。「浅井さんがここにいるって知らなかったですね」
彼女は一つ上だが丁寧に私としゃべった。私は微笑むと答えた。「私はロイさんの知り合いじゃないですけど、誘われたんです。藤間さんは?ちょっと遅いですね」
「あ、私も友だちから誘われました。まだ……彼がどこにいるかわからないけど。この服のまま来てもいいと言われても、入るとみんなはこんなに豪華で本当に恥ずかしいですね。でも、浅井さんこのドレス似合うね!かわいいですよ」
「いえいえ、そんな!」
「本当にかわいい。えっとね、さっきの彼らは知り合いですか?」
私はまたアタルさんたちの方向を見ると言った。「さっき知り合ったんですけど」
藤間さんはうなずいた。「やっぱり、なんか大丈夫かなと思って。私がお邪魔じゃなきゃいいですけど」
「全然!声かけてくれて本当にありがとう!」
そして……「美月ちゃん!」
振り向くとそれはちはるさんだった。
彼女がちょっと頼みがあると言ったので、私は藤間さんと別れた。それはなにかと思いながら、ちはるさんに付いて行くとある部屋の前にロイさんが待っていた。彼は私を見ると言った。「あー、浅井さん!来てくれてありがとう」
「……どうしましたか?」私は聞いた。
「このベッドルームって、女の子たちは九時からいて施錠もしててまだだれも出て来なかったから。はい、ちはる、鍵」
ちはるさんは鍵を取ると言った。「セックスじゃないでしょ?」
「そう思わないけど、ドラッグか心配していて。ホテルスタッフが来る前になんとかしないと」
「大麻?」ちはるは聞いた。
「大麻はいいでしょ、残ったら飲み込んでも大分問題ないし。ほかのやばいやつなら警察が二十人は殺到してくるし、明日僕はニュースに載りたくないよ」
ドラッグ?
――――――――――――――――――――
美月は何に巻き込まれてしまうのか……?
そして藤間は大食いするために来た??
SNSの藤間は健康的な人物でいつもヘルシーな食べ物の写真をアップしていますが、これは表向きで彼女の秘密は美月にバレた!?
藤間穂花のイラスト(彼女の写真集の表紙)
https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330654132196732
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