71 半田聖節 (イ付)


そして拍手を浴びると、ロイさんは腕時計を見て言った。「もう七時だ、今夜はまだ長いね。みんな愛してるよ、楽しんでね!」

  また大きな拍手と指笛が聞こえた。



  その間ちはるさんと半田聖節せつさんが見えなかったのはだれかと話していたのかもしれないが、ロイさんの演奏が終わると彼女たちはこっちに来た。

  ちはるさんは私を半田さんに紹介してくれると、半田さんが私のドラマを見たことがあると言って、彼女は笑顔で何か話そうとしたが、結局それは笑顔だけだった。

  「ちょっとなんか食べる?」やっとちはるさんは聞いた。

  フィンガーフードをきっかけに私は少し半田と話す機会があって、実は彼女たちが食べはじめることが私には許可と同様だった。チーズとトマトが小さな串に刺さったカプレーゼがおいしいと半田さんはちはるさんに言うと、椅子がないかと聞いた。「私の袋を置きたいんだけど……」

  ちはるさんは周りを見ると答えた。「ベッドルームの近くが空いてるかも。行ってみよう?」

  竹内さんも芸能人ではないが半田さんと知り合いのようだった。私たちは一緒にいろんな部屋をまわって、全面がガラス張りの廊下に小さなテーブルと椅子が二脚あって、気づくとちはるさんは隣の部屋から一脚持ってきてくれた。私たちがすわっても、譲ったちはるさんは半田さんの椅子の背もたれに寄りかかって立っていた。

  みんなはそとの東京湾の夜景色を見て美しいと言うと、半田さんが聞いた。「ね、ちはる、私のワンピースどう?」

  「かわいいでしょ、なんで?」ちはるさんは聞いた。

  この柄のある茶色のドレスと、半田さんの前髪のある長めのボブがとても似合ってきれいなのに、彼女はまだ心配しているのか。やっぱり美意識が高すぎるんだ。


  半田聖節せつさんは二十か、二十一歳で、ちはるさんと同年代くらい、芸歴は二人とも大ブレイクしたときはまだ若かった。日本の女優にはかわいい系が多くいて、それは笑顔で魅力を見せているが、半田聖節さんは美人系かもしれない。よく演じた役はクールな美人だったし、覚えているのは最近、二十代の美しすぎる女優ランキングで彼女は二位だった。

  彼女くらいの女優って、簡単に会えないでしょ……

  私はただ深夜ドラマの女優で、ここにいていいのかと考えながら、半田さんを見るとなぜこんなにつやつやなのか、ちはるさんやほかの人もそうだし。しかも、今半田さんはファッションの秘密を教えているじゃない?彼女の服はどのブランドかな?

  ……そして彼女は続けた。「本当にかわいいの?これ、全部GUで買ったんだ」

  え?

  ちはるさんも驚いたようだった。「そうなの?!」

  「そうよ。さっき撮影が終わったところで、家に戻ったら間に合わないし、近くにGUがあったから入ってみたの。今日の服はまだこの袋に入ってるんだ」

  彼女の脚元にある紙袋に入れているらしい。ちはるさんは彼女のドレス生地をさわるとすごいと言った。「まあ、君はきれいだから、パジャマで来ても問題ないよね」

  「いや、女子会じゃないんだからー」

  私が着たら普段着にしかならないのに、彼女はこんなに輝けるのか……


  そのあと半田さんは私に話しかけて、私の東京に引っ越したことについてだったが、私は上手く返答できなかったからかもしれないので、すぐに彼女は竹内さんとしゃべっていた。そしてちはるさんはネッティーさんを探しに行くため私たちは三人になった。

  もうこんなに有名な女優のそばにいるのに、話せない自分は本当に女優同士かと思った。でもそう悩んでいるのは私だけじゃないか……「浅井さん」

  「はい?」

  半田さんは私に言った。「実は私、シロハシを見たことないんですけど」


  うん?


  「えっと!予告編とほかのクリップは見たことがあって。でも放送時間はちょっと休憩してますね」

  「いえ!大丈夫ですよ。そんな真夜中って、寝ないと肌や身体には悪いですよね」

  「まだ寝ないですけど」

  え?これは普通なら、相手の会話に合わせるところじゃないのかな?どうして半田さんは……

  半田さんはぎこちなく笑った。彼女は私と話そうとしたのかと思いながら、少しあとでフィンガーフードの話をした。会話よりちょっと問答の感じだったが、刻んだエビとクリームのロールの話になって、半田さんはおいしいかと聞くと、私は答えた。「……私もまだ食べてないですけど、味はどうかな」

  「そうなんだ!まだ食べてないなら味わからないよね」

  「そうですね!」

  急に私たちは笑って、なにが面白いかわからないと気づくと私は黙った。同じく黙った半田さんは私と見合うと、なぜか彼女は私に謝りたそうに会釈した。

  大変だ、彼女は同じくらい会話が苦手なんじゃないか?

  そのあとちはるさんとネッティーさんが戻るとホッとした。「せいちゃんー!」

  ネッティーさんはそう半田さんを呼んだ。セイって彼女のあだ名か。ネッティーはしばらくGUのワンピースが似合っていることと、ファッショニスタの道をもう歩いていると褒めると、半田さんは笑顔で答えた。「適当だったの。今日ネッティーのメイクきれいね。自分でやった?」

  「そうよ。いい?ちょっと濃いめにしたけど」

  「好きだよ、目がすごくキラキラ。あ、そうそう、あんな感じでしょ……ピピピピピ、『バカな!これは戦闘力が十万くらいじゃないか?!』」

  そう言いながら半田さんは目にありもしないスカウターの機械をつけているように振る舞っていた。そしてネッティーさんが笑った。「戦闘力なんてないよ。君は?戦闘力が何十万?」

  「『わたしの戦闘力は五十三万です!』」

  「私の五倍でしょ!……漫画の台詞?そうだっけ。でも実はね、目ってさ、話すときに相手に見られるから、いつもメイクをするときにこだわってるけど」

  「そうね。それにネッティーは目の色が明るいから、なんのアイメイクでも合うと思うよ」

  「君の目もきれいだよ」

  ちはるさんと竹内さんもメイクの話に参加した。私は長く黙っていたせいか、この会話に面白い意見があると思って、今までの自分の会話での失敗を取り返そうと発言した。

  「……えっと、男子はそんなに目を見ないんじゃないですか」

  みんな私の方を向いた。ネッティーさんは微笑んで聞いた。「どこを見るの?唇もよく言われるけどね」

  「えっと、パンツとか、胸もそうですけど……」

  彰くんと長くいて当然だと思っていた。これは私の勝負の台詞でみんな笑うと期待したが、なぜか急に珍しく静けさがここに訪れた……





―――――――――――――――――――

美月は彰と一緒にいすぎて、男の感性に影響されてしまった……!?


次の5話は、章の終わりまでまだパーティーにいます。美月はどんな出来事に遭遇するのでしょうか。


半田聖節のイラスト

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330653793481961

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