第七章 上京

77 美月の意識が戻る (イラスト付)

第7章

字数 ~60,000字


予告編(512字)


第6章から一年後。彰が東京の大学生になる前に、大ブレイクした美月は18歳で本格的な女優になった。

  彰は気軽に東京であそぶのではなく、『蔦双葉』(アイドルになりたい小学生)の保護者役をしなければいけなかった。それにより彼は『藤間穂花』(雑誌モデル)と知り合い、桜田ST(アイドルグループ)の一期生達との接点もできた。

  ちはるは死去した世界的に有名な黒岩肇監督の後継者と見られていて、彼の愛用していた帽子も持っている。そして『革命』を匂わせることを『半田聖節』は美月に言った。


――「私はそんなに確かじゃないけどね、昔日本はもうすぐ大国になって、西洋の国と競争できるという雰囲気が漂ったみたい。ちはるがよく言ったのはその時代の映画とドラマはその希望と野望も映した。でもやっとその時代が終わって……私がちょっと言っていいかな?」

  「はい」

  「三年前黒岩監督を看病したとき、私はちはると一緒にいて。最初は病院ね、あとは彼が家に移動して……そのとき彼の家だったかな、彼はちはると長く話して、私にちょっと言ったことがあったの」

  「……帽子のことですか」

  彼女は笑った。「帽子じゃない。『日本のこと、君たちに任せたらいい?』って」


―――――――――――――――――――


第77話『美月の意識が戻る』



どこ?


  目を開けると私は知らない部屋にいた。


  さっき、私は倒れたんじゃないか?


  わからないまましばらく周りを見ると女の子が歩いてきて、ちはるさんとは期待しなかったがそれは本当にちはるさんだった。「……起きた?美月ちゃん大丈夫?」

  「うん、私は……」

  「いいよ、ここ私の家だから」

  ちはるの?「でも」

  「心配しないで、いっぱい休んでね。えっと、さっき君の携帯が鳴って、お母さんと表示があったから勝手に取ったごめんね。もう彼女に君はここに泊まるかもと伝えたよ。今?えっと、そろそろ一時だ」

  「……ありがとう。私、失神したの?」

  「そう、急にね。振り向いたらびっくりした」

  「ここまで運んで大変だったでしょ」

  「ううん」


  さっきからミカンの匂いがすると思ったが、今ゆっくりのソファに寝ている私はそばにあるテーブルに見ると、デフューザーから白い蒸気が見えた。多分オレンジオイルの匂いか……ちはるさんが置いた?なぜ?

  そのあと私は起き上がると、ちはるに促されてバスルームを使ってしばらくお風呂で休んでいた。ちはるさんは次に入ったが一、二分後バスルームのドアをちょっと開け、ちはるさんは私のパジャマを忘れたから待ってと言った。だが下着の上にタオルを巻いた私はソファに横になっていつの間にかまた寝ちゃった。



  もう朝か。


  七時過ぎだ、遠くにある掛け時計を見た。


  ちはるさんのマンションは広いだけではなく、インテリアもとてもセンスが良くて、高級マンションと言ったらテレビドラマからしか見たことがない私には予想外だった。一般的にここにソファを置く、ここにテレビ、ここはキッチンという感じでなく、客が私しかいない、店員もいない、自由に使える日本橋の贅沢な店ようで、それは宮殿にも思えた。


  夢みたい……


  私はこのリビングのソファでもうちょっと寝たいけど、タオルじゃなくて……そのとき自分はもうパジャマに着替えていることに気づいた。サテンの長袖のパジャマ、これはちはるさんのものらしいが、いつ?

  と思いながら起きると、背中に変な感じがあって手で確認するとブラのホックも外されたとわかった。


  うん?


  寝転んで外れたわけではないようだし、ただきついとちはるさんが心配してこうしてくれたのかと思ったが、あることが頭に浮かんだ……ちはるさんは普通にネッティーさんや半田さんと付き合うけど、もし『計算高い』ならば私のことは?

  いえ!昨日ちはるには彼氏がいたと聞いたっけ、あの狙撃手の話って……


  でも、もし男子も女子も、


  昨日、私はそうされたか……


  え?


  昨日、ホテルのエレベーターで私の肩で休んでキスした彼女、もしかして私の全身に……


  今までいろいろ優しくしてくれて、こういうことか。


  安心して!ちはるさんはいい人って、彰くんも言ったでしょ。彼女は自分のベッドルームで寝ているらしいから大丈夫じゃない?

  身体をちゃんと洗わなかったからか肩にピンク色っぽいちはるさんのリップのあとがまだ残っていた。しばらく携帯を見ると、昨日のシャンパンのせいか私はまたソファにごろごろしていた。彰くんのメッセージを返信するとお母さんに電話をかけたいけど、酔っ払ってここに泊まっていると言う?ちはるさんはお母さんになんと言ったかわからないし、あとでいいかな。

  ここは静かだった。ちはるは休みの日なら十一時まで寝ると言ったことあるし、今日もそうか。そのときまでなにをしようかと私は考えながらディフューザーの近くにあるファッション雑誌の一冊を取った。

  表紙にいっぱい英語が書かれていて日本語版だと思ったが、開くと韓国語だった。

  三十九階からの眺めは少し遠くにいろんな建物のなかに東京タワーの赤色が見えるのに気づいた。今カーテンを開けて朝の日差しでそれを見ると素敵な風景だと思った。毎日ちはるさんは簡単にこの風景が見られるのか。

  お金持ちになったら一緒に高級マンションに住むとお母さんに冗談で言ったことがあって、こんなところかな。芸能界でもし頑張ってうまくいったら、私は彼女みたいになれるかな……

  またソファに戻って読めない雑誌の写真を見た。勝手に飲み物を取っていいかなと考えていると突然ドアのベルが鳴った。


  え、だれ?


  オートロックと警備がちゃんとしているこのマンションは、怪しい人ではなくて管理人やお隣さんかと思って用事があるのではないかと私は気軽にドアの方に行った。

  少し覗き穴を見て私はドアを開けた、でも……「あ、ちはるの友だちか。彼女いる?」

  私の前に現れたのは女の人だった。長くて明るい金髪の彼女は背が高くて格好よく見えるけど、あまり機嫌はよくなさそうだった。黒いジャケットを手で持って、黒いタンクトップとダメージジーンズ姿で複数の鎖のようなネックレスをつけていた。

  もし彼女が一人ならそれはロック風ファッションだと思うが、彼女と一緒に来た大きな男を見ると背が百八十センチくらいでムキムキの筋肉、だからか近くに立つと彼はそれより十センチは大きく見えた。この女の人みたいに彼の表情も怖く歪んで、いつでも暴力を振るってきそうな見た目で恐ろしかった。「ちょ、ちょっと……」

  この男の言葉をちゃんと聞かずに私はお辞儀してドアをすぐにドンと閉めた。

  だって彼の首に大きな炎みたいなタトゥーがあったじゃないか……?

  

  えー⁉


  少し迷うと私は急いでベッドルームに行ってドアを開けると、思った通りちはるさんは毛布くるまりぐっすりと寝ていた。ちはるさんの身体を揺さぶって起こすと彼女は一緒に寝ないかとささやいた。「もう寝てる場合じゃない、大変だよ!ヤクザだ!」

  「……は?」





――――――――――――――――――――

美月は大丈夫?!


ドアの訪問者のイラスト

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330654643059946

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