83 美月 vs. コスプレパーティ(お泊り) (イラスト付)
六時くらい結城朋子さんと半田聖節さんも着いて、実はネッティーさんも来る予定だったが、お父さんの体調がよくないそうで彼といるそうだ。そしてできた品と残りの野菜を見ると、適当にラタトゥイユを作るかと私は提案した。「美月ちゃん作れるの?いいよ」
ちはるだけでなく、私が料理をしていると結城さんと半田さんも見に来てちょっと恥ずかしかった。そしてオーブンに入れたときに半田さんは私が料理が上手だと褒めた。「今度うちに来たらなんか作ってくれる?」
「え、聖ちゃんも料理が上手じゃない?」結城さんが聞いた。
「適当な料理だけできるんだよ」
ここに来た結城さんはかわいいワンピース姿で、微笑んだり笑ったりしていた彼女にはえくぼがよく見えた。ネットで調べて彼女の身長は半田さんと同じくらい百五
十七センチ、私より二、三センチ低いけど、それは全然魅力と関係ないと気づいた。今芸能界には背が百五十センチに近い有名な女優も数人いて、見たドラマで彼女たちは百七十センチ前後の俳優でも簡単に共演して釣り合うと思った。
結城さんがよくもらったわがままな女子の役は本人と結構違うけど。彼女と半田さんの会話をしばらく聞くと『地獄オムレツ』という料理名を聞いた。
それは半田さんのオリジナル料理で、インスタント麺を作るときのスープで半熟のオムレツを作って、オムレツを麺の上にかけて七味を入れて、辛い麺のスープが一番おいしそうだった。
この話でちはるは明日の朝にこれを作ったらいいかと聞くと、半田さんは不健康だと否定した。「朝っぱらからちはるは食べる気なの?」
結城さんは笑顔で言った。「あたし食べたいよ。めっちゃおいしいでしょ」
今の半田さんを見ると、彼女は大きめのブラウスと普通のズボン姿で、ほかの女優と比べると彼女はもっとカジュアルだが、持ってきたスーツケースはなぜかちょっと大きかった。
美容商品かなとさっきから思っていると、振り向くとそれを開けていた半田さんが取り出したのは服装ばかりだった。
いいえ。こんな派手な色なんて、コスプレの衣装だ……
半田さんはそれを確認していそうだった。そしてテーブルに食べ物と皿を運びながら、半田さんは本当にコスプレ・パーティーをしないかとちはるに聞いた。「しないよ!……あれ、君はマジで持ってきたの?」
半田さんはちはるに答えた。「だってもう買ったのに使う機会がなかったから」
「自分が着てインスタでアップして」
「事務所がだめと言ったんだー。ねえ、ともちゃんは?着ない?」
「どれ?」結城さんは聞いた。朋子はともちゃんと呼ばれている。
半田さんはスーツケースの方に歩いて行って、白と赤い色の衣装を見せると言った。「これ、『ロロウェン・アード』の、どう?」
「えー、全身なら面倒くさいじゃない。耳だけでいいよ」
そして半田さんは私に向いた。「浅井は?」
え?
コスプレ、か……
バスルームの鏡を見ると、私はなんだ。
半田さんの笑顔のせいか、断れない私はこの衣装をもらった。
白いトップと下はブルマくらい短い緑色のパンツを履いて、薄い合繊だから、緑だとわかるけど何度も自分の下着の色が見えないかと鏡で確認した。これは人気の『彼女がラスボスだと知ってたら決してコクらなかった』、通称『ラボコク』のアニメからだそうで、いろんな冒険者のなかに私は最前線で戦うキャラクターだった。実は茶色のロングブーツもあるが、私はただ同じ緑色のマントのフードを頭に被って裸足でバスルームを出た。
そとで半田さんも別のコスプレ衣装に着替えた。彼女は微笑んで言った。「かわいい!浅井の足はきれいね!」
結城さんも私にかわいいと言うとちはるも呼んできて、そして半田さんは私の後ろ姿を見ると続けた。
「思った通りだ、浅井は本当にコスプレイヤーに向いてるね。このコスプレの金髪のかつらを被ってメイクをするとマジいける……え、そうよ。浅井の顔と身長は多くのコスプレが似合うよ」
本当にそうかと私はまた衣装を見ながら思うと、ちはるキッチンから歩いてくると言った。「かわいいけど、彼女を邪道に誘わないでよ」
邪道……?
七時くらい食卓についた私たちの姿は、私がその緑色のブルマのまま、半田さんならボディスーツのようにフィットした短い白いドレスと青いロングブーツで、結城さんが狼の耳のヘアピンだけを付けてもかわいくて、普通なのはちはるだけだった。少し夕食を食べはじめると記念として半田さんは私たちの写真を撮った。
半田さんのドレスは本当に短くて、彼女はインナーパンツを履いたはずだと思ったが、私は立ち上がってキッチンに歩いたときに彼女の足をチラッと見ると、まだこんなに見える短さなんてインナーパンツより、パンツしかないじゃないか……
みんなはワインを飲んでいるので、少し酔っていると思いながら私も一杯もらった。乾杯してグラスを合わせたときに、前にロイさんのパーティーで教わった通りに自分のグラスを低くしたが、今はだれも気にしてなさそうだった。
食事中にワインがおいしいとみんなは賛成してから、これはいい味かと私も覚えようとした。すると結城さんは言った。「みんなと付き合えて嬉しかったね」
「私もよ。なんで?」ちはるは聞いた。
「え、あたしのマネージャーさんも言ってたね、芸能界ってほかの業界と同じように仕事のことばかりで、だれかと仲良くできても仕事の間の関係だし、長く付き合えているのは有名な俳優同士で仲間みたいなイメージって。そう思ってたからこんな中学生の友だち同士みたいなお泊りができるのは想像しなかったんだ……視聴者も気づかないうちに三十代、四十代になると、ほとんどの女優は消える、普通の仕事をする人も多いし……あたしならそのときにまだ舞台の仕事があったらいいけど、舞台人間なんてなったらちはるは嫌でしょ」
「言ってなかったよ。舞台はすごいでしょ、嫌なのはただそんなお偉い様たちってさ。舞台の反対側に道を渡ったらもう普通のじいさんばあさんと変わらないから舞台での力に中毒する彼らだ」
ちはるは言うと、結城さんはワインを少し飲んで答えた。「君は言いすぎたんじゃない?十代二十代の役者が多いししっかりしないと動物園になっちゃうよ……このままに君たちとあそびたいけど、心配してるね。もし将来あたしは無職になったら君は距離を置かないの?」
「そんな嫌なことしないよ」
「本当?」
「芸能界なんて確かなことがないからさ、いつ私は売れなくなるかもわからないし、同じようにともちゃんに言いたいよ」
(つづく)
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咲いている花のように、女優としての自分は一瞬だけだと美月は気づいた。
この夜、みんなとの時間もそうだ。
そして人生も…
次の話は恋バナになります!
(『彼女がラスボスだと知ってたら決してコクらなかった』のタイトルは小さなヒントです)
コスプレ姿(部分的)の美月のイラスト
https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330655186481594
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