58 彰くんはさ……舐められたことある?(イ付)

紗季ちゃんはさっきの話を続けた。「よかったね。彰くんってさ、普通にあくせくする人じゃないのに、美月ちゃんと会うため、東京へ行くためにこんなに頑張ってるのはすごいね……羨ましい」

  「え?」

  「なんでもない!美月ちゃんは買い物していいよ」



都会と比べてあまりバイト先がないため、しばらく知り合いの家族の畑で働くと、紗季ちゃんの誘いで彰くんは彼女の家族が運営している漬物工場で仕事をはじめた。又渡の郊外にあるこの工場は従業員が二十人近くて結構大きく、島根県内以外に商品は隣県の広島と山口、そして東京にも売っている店があった。自家製の味は誇りで、実は私の家でもこの工場のたくあんとたけのこの醤油漬をよく買った。紗季ちゃんの家族は裕福で、気づいたのは彼女の携帯がいつも真新しいモデルだし、たまに付き合うとものを買うときに彼女があまり躊躇しなかったから。

  工場でバイトをして、しかも紗季ちゃんとよく一緒に帰るので、関係がいいんじゃないか。彰くんといるとき、長くほかのことをしゃべると、彰くんは紗季ちゃんのことが好きじゃないかと聞いた。「どういう意味?」

  「わからない、いつも一緒にいるから。テニス部もそうだし、怪しいな」

  「友だちだよ。君の方がよく会うじゃない」

  「だって彼女だし」

  「わかってるよ。怒ってる?」

  「怒ってない、聞いただけ……紗季ちゃんもかわいいし。もし気に入ったら言ってもいいよ」

  「バカ」

  三月に彰くんはデンマークに行くつもりだと聞いて、まだリッケという女の子が彼を待っているんじゃなかと私は冗談を言った。そのあと私は彰くんの家族のために夕食を作っておこうとしたが、できる前に私たちはもうキスをした。


  午後三時、彼のおばあさんは夜までラッキーランスロットの店にいて、お母さんも家に着くのは六時で、ちょっと安心できた。いつものように彼はキスしながらゆっくりと私をさわって、横にいる彼と見つめ合うと私は聞いた。「彰くん……どんな気持ち?」

  「いいでしょ。なんで」

  「こちこちかな」

  「え、男の普通でしょ」

  しばらく彼は私の髪の毛を撫でると私が言った。「ね、ちょっとだけしたら、どう?」

  「ちょっとなに?」

  「彰くんがしたいなら……」


  見つめ合うと彼は言った。

 

  「しないとでしょ。自分も言ったし」

  「うん、でも友だちはしたの……男子と」

  「同級生?」

  「そう、なんか大丈夫ね。心配しすぎたかなと思って」

  「ねえ、美月。私ってさ、君とこんな風にいられるだけでも嬉しいね。普段ただしゃべったり、あそんだりしてもう満足だし、そんなことってしなくてもいいよ」

  「……ごめん」

  彰くんの下にいた私は、同級生から『なでなで』のことを聞いたせいか、恐る恐るやっと彼のズボンを手でさわってちょっと撫でていた。近くにいるときにあまりこんなことをしない私は彼に叱られるかと思ったが、彼はちょっと私にキスして文句は言わなかった。


  彰くんはどんな気持ちか。いつも彼はかわいくて、こんなときも自分を優先しないて控えているようで、彼はこのまま私にしてくれるつもりかな。彼はポルノとか見たと言ったでしょう。男だからほしいと思うけど、なぜ今まで彼はこんなに私に優しいのか。結婚するまで待つ?

  たまに私はそういうイメージがあったけど。結婚式のあと、ホテルの部屋で彰くんは白い花嫁姿の私を丁寧にベッドに横にさせて、『今夜ちょっと痛いね』と言う。

  『ど、どのくらい痛いの?』

  『わからないけど。私はずっと君を抱いて離れないから、安心して』


  ……私はこんな恥ずかしい台詞なんてどこから覚えたのか!


  彰くんは私のことをさりげなく触れる、なぜか私の手が、彼のそこをさわればさわるほどもっと変な感触になった。私は聞いた。「これでいいの?」

  彰くんは私を見た。「うん。でも君は東京から帰ったあとちょっと変ね……だれかと寝た?」

  「ぜ、全然!」

  「なら、なんで?」

  「彰くんのこと、心配してるの。いつもこんなにしてくれて嬉しいけど、私はあまりなにも……」

  「君の顔を見たら興奮してたよ」

  彼に頬にキスをされながら私は言った。「彰くんはさ……舐められたことある?」

  「へ、へー⁈」

  「た、多分、そんな動画みたいに……」

  「なんで急に……!」

  「えっと!聞いただけ、学校の人がそう彼氏にすると……彼氏がハマってたって」

  「えー、そんなことしたくないならいいよ」

  「でもしてほしいでしょ?」

  彼は私の顔を見ると答えた。「いいえ、まずい」

  「……私がしないと、彰くんはだれかとしに行くんじゃない?」

  「しないよ!」

  その日、なぜか私はちょっと足りない感じだったからか、普段私たちはただソファにいるが、私は上の階にある彼の部屋のベッドに移動してしばらくキスすると……「ちょっとする?」

  「どう?」彰くんは聞いた。

  「ゆっくりと、ちょっとだけ」

  ちょっとと私は言ってもどういう意味かわからないけど、前みたいに彼と私の素肌が触れることかな。私はちょっとやばいんじゃないか……


  お母さんと家族は私が男子とこうするのを知ったら嫌じゃないかと思って今まで避けていたが、同級生だけでなく、東京にいるときに撮影で知り合った大人たちも彼らはだれかと交際しているそうだし、地方の現場に恋人が一緒に泊まりに来たってそういうことじゃないのか。若者の視点と違ってこれは普通のことかもしれないと思ってきた。しかも大人って収入があるし、今私も稼いでいて……ちょっと大人なのかな。

  横になりながら部屋の周りを見渡すと、三年前くらいにあった地震のせいで部屋の窓が壊れてここに泊りに来て、そのときから本棚にもっと本があること以外あまり変わらなくて、ベッドのシーツはまだ薄緑色のだった。午後のカーテンから差し込んだ明かりで彰くんの顔がはっきり見えて、じっと私を見ると彼はキスした。

  少しずつお互いに脱ぐと、これ以上進みたくないような、私は下着姿で、彼は私の下半身をしばらくさわると聞いた。「するの?」

  「い、嫌ならさ……」

  「嫌じゃないよ。ただ美月の身体に、これ以上……」

  「なに?」

  「え、えっと。ちゃんと説明できないけど。花、みたいに、そのままそこで咲いた方が美しいものってさ。美月はこんなにかわいいし、敢えてそんなことをしなくてもいいよ」

  「そんなことないよ。ただ……彰くんはさ、本当に紗季ちゃんと付き合ってないの?」

  「付き合ってないよ」

  「なら、私のこと嫌?……だって、彰くんは私がかわいいと言ってくれても、いつもそんなお姉さんたちの動画を見ていて……私は胸が大きくないし、舐めもしないし……」

  「違う違う」


  彰くんは私を見ると言った。


  「私はそうできるかもしれないけど、ただ美月は私に貴い……」

  「たっとい?」

  「花って、言ったでしょ」

  「……寂しかったよ」

  「そう……」

  ため息をつくと私は続けた。「ロケに行ったときってさ。一人でいると、君にハグしてほしいなと思っても、君はいなかった。身体って気持ちがいいかどうかより、君がほしかったの。君のキス、君のハグ、じゃ足りないかな。私は彰くんのものになりたい……みたい」





―――――――――――――――――――

次の二つの話は、美月と彰の親密な描写です(えろ注意)


怪しげな彰のイラスト

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330652662032135

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る