89 一年後、彰は東京の大学生になる (イラスト付)

(彰の視点で)


翌年、センター試験で夕住園ゆうすみえん大学に合格すると、私は東京に引っ越した。


  高一のときに美月はツバサプリンセスの活躍で芸能界に踏み出してから、高二の彼女は女優になって前みたいに通いではなくて東京を引っ越さなければならなくなった。彼女と会うため私は何回もここに来たが都会に馴染みがあるとは言えなくて、ただ泊まると住むのはちょっと違うことかな。

  私の大学と美月のマンションの間、台東区にあるこのアパートの部屋は、母と見に来て契約した。

  ここは安くて狭いけど、きれいなフローリングときちんとしたキッチンなどがあって、この三階建ての建物の外見と同じくらいこじんまりとしたアパートだった。引っ越したときに家具がなかったせいで東京の短い滞在の間に母が布団を買ってくれて、ノートパソコンも持ってきて実はそれだけで十分に生活できるが、あと床に置かれたゲーム機の箱があった。

  美月は去年から私がほしかったこのゲーム機をプレゼントしてくれた。値段は五万円近くして、ノートパソコンの画面を使ってあそんでみたがちょっと小さくてもったいないと思ったのでテレビも買った。

  引っ越して二週間、私は布団を片付けてデスクの椅子を置いてすわると、持っているゲームから美月のおすすめの『Ravenbane II』をやり続けた。


  有名な暗いテーマのアクションRPGゲームでこの間結構ユーチューブで戦略の動画を見たが、自分でやるとまだ難しかった。初めて死神みたいなボスと戦った日、瞬間移動の攻撃を受けて間もなく死んで、数回やって避け方を攻略したけどボスは別の魔法の攻撃を使って、それはいくつかのパターンがあってまた死んだ。ほかのゲームと同じようにボスの動きのパターンがわかると倒せると信じて、次の日も一時間くらいやるともうすぐ勝てそうだったが、また不意に瞬間移動の攻撃にやられてゲームオーバーになった。

  なんなんだこれ。美月の友だちの女優さんは本当に気軽にやってるのか?


  住宅街にあるこのアパートは、周りにローソンやすき家などがあって食事に困らなかった。そのときには美月も高校を卒業していたが、去年から仕事が増えてあまり空いていないので、デスクを買うときに彼女を誘ったが私は一人で行った。結局はネットでこぎれいな二万円台のデスクをえらんだ。

  デスクをオーダーしたあと私は大きな三省堂書店を長いことぶらぶらして本を買った。

  

  その先週に買った本を近くのカフェでお茶を飲みながら読んでいた。窓のそとの通行人は都会らしくお洒落な冬着の姿だった。日曜日だが、いつものように夕方、島根に帰るために空港に行く準備をする必要がないので、この風景を見ると気持ちが大分違った。今夜なにを食べるか、またゲームをやるか、なにをしても私の自由だ。本当に私は一人でいるんだ。

  家賃は母の負担になるとか、いろいろ思いながら本を読み続けると、携帯が振動していた。

  まだ昼下がりなので、撮影の休憩の合間に美月がメッセージをくれたと嬉しくて、だが見ると違う人だった。私は自分の居場所を答えると次のメッセージが来た。

  『いいよ、松島さんは一緒に来て来てー』

  それは蔦双葉だった。


  私に言った通り、去年蔦は桜田STというアイドルグループのオーディションを受けた。

  彼女はちゃんと練習した曲を歌うと、彼女のアイドル研究によって下手なアピールをした方が勝ち目があるので、審査員の前で彼女はシャイのふりで初めて自転車に乗った経験、何度も転んだおかげで自分はもっと強くなれると語ったそうだ。

  ……実は自転車ではなく、両親が知らないうちに彼女は数回家にあるバイクを乗りまわしたと聞いたけど――意外と最終選考まで彼女は無事に合格してメンバーとしてえらばれ、アイドル活動のために中一のときに彼女も実家の福岡から東京に引っ越した。

 

  『桜田ST』は日本のトップのアイドルグループの一つだ。私は遠くから蔦の事情を聞いて平気だったけど、二期生のオーディションからもう数年間開催しなかったせいか、三期生のオーディションには応募者が驚くほど多く五万人に近かった。ネットで応募した一次から審査が数回行われて、その人数から蔦も期待していなさそうだし、どのくらい彼女は準備万端でもすべては運だと言えて、その期間連絡すると彼女が緊張かストレスかを抱いているみたいだった。

  たまたま探したオーデションの動画で最終に残った十四人の子たちが全員合格と発表されたとき、ほかの女の子が立ち上がって嬉しそうだったが、蔦は一瞬固まったようにすわったままで喜ぶのが少し遅れていた。信じられなかったのかと思ったが三期生に合格すると、蔦は一日に十回桜田STについてのメッセージを送ったのが理解できた。


  このカフェから私は電車に乗って渋谷に行った。



  東京はせわしない都市とよく東京を旅した友だちから聞いたし、ネットに東京の人も書いていて、でもしばらく住むと島根より静かじゃないかと思った。

  渋谷みたいに数千、数万の人がいても、だれも私のことを知らないし、私はこの辺に全日立ってもなにしても地元と違ってだれも話しかけないらしい。私は本当に一人だ。

  いいえ、二人か。

  「松島さん!」

  渋谷駅で、蔦は私を見つけると手を振った。


  ここは一年前私たちが初めて会った場所だ。蔦はふわふわのファーがついたコートとジーパン姿で、以前より彼女はもっと背が伸びて、スニーカーのヒールを考えても美月より高いくらいで、実年齢の中一より高校生に見えそうだった。

  今まで私たちはよくやり取りしてもう話すことはないくらいだと思えたが、交差点の反対側の大きなモニターに流れているCMを見ると蔦はいつものメッセージと同じ明るい口調で言った。「ちはるさんって、すごい売れてますね」

  携帯サービスの大手企業の宣伝で、ここのモニターのために作った版で、赤い色の背景にしばらく笑顔で情報を言ったちはるが見えた。「蔦は彼女のことが好き?」

  「うん、好きです!松島さん見てたかな、あのトリプルAのワイドショーの悩みコーナーって、彼女はすごい面白かったよ、ちょっと前ユーチューブでいっぱい見ました……松島さんも彼女が好きじゃないですか?」

  「え?」

  「だって、きれいでしょ」

  また画面を見ると、ちょうどちはるが渋谷の街の人に振り向いて胸ポケットから携帯を取り出した。音がないけど、字幕に『約束だよ』と書かれていて、彼女の唇もそう動いた。「……いや、きれいって女優さんみんなでしょ」

  「でも松島さんは目が離せなかったみたい」

  「そんなことないよ。行こう?」


  こんなに有名な女優が美月の友だちなのか。



  そして私たちは渋谷109に行った。





――――――――――――――――――

後書き


可能性はほとんどないが、やっと蔦双葉と彰の道が交わった。


彰はちはるのことが本当に好きなのか…?!


イラストはスクランブル交差点のビルの大きな画面にちはるの宣伝が流れているところです。

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330655776202787

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