11 パン(チラ)なんて見てなかったよ!
私のメッセージの『頑張ってね』に対して彼女は昼に答えて、四時くらい学校が終わったからか彼女はまたメッセージを送った。今日私はなにをしたかの質問に、ぶらぶらと言うと羨ましいと返信が来て、新しい学期がはじまって早々にもう宿題があると言った。そして私はどのくらい長く日本にいるか彼女は聞いた。『え、今から』
『引っ越したの?』
『うん。言ったでしょ』
『ごめん、旅行中だと思った』
こんなにメッセージをやり取りした友だちは紗季が初めてで、私の日本語はあまりよくないとわかったらしく、たまに漢字の言葉を送るとき彼女は読み方も付けた。そう見ると日本人のみんなが紗季みたいに日本語の難しさに常識があると期待したが、美月はなんでも私はわかるはずだと思うみたいに送って、日本語は共通語じゃないって忘れたか!
でも、漢字より、もっと恐ろしいのはカタカナだ……『外国風の店はあまり知らないね、でもこの前行ったバイキングはそうかな。シュークリームもあって、パンのコーナーなら普段ないからね。あと彰くんは好きかな、ポテトも頼めて、ポテチの粉もあった!レタスと食べたら美味しい。松江だけど、アットホームだからまた行きたいね』
パン以外、私はなにもわからなかった。
会ったときより彼女はもっとしゃべりたそうだった。私たちの会話はほとんど一般の話だったが、その週彼女は自分で作ったお弁当の写真を送ったから、気に入った音楽とほかの動画のリンクも送りはじめて、ある日彼女のメッセージにまた謎のカタカナ『ユニバ』があった。
検索する前に彼女は『USJ』のことだと解説した、まだあまり助からないけど。『ユニバーサルスタジオジャパンという意味だ』
あー、あのテーマパークか。『生きたいの?』
また誤字。
美月は答えた。『うん、でも体調があまりよくないから行ったことない。彰くん行ったことある?』
『ないよ』
『え、デンマークにはないの?』
『本当に小さい国だから、なにもない』
『そうなの。ユニバ、行った人の動画を見て面白そう。日本のキャラクターもあるね、知ってる?時間が残ってる間に行ってみたい』
時間?『そんなに忙しくないでしょ。もうそろそろ週末だ』
『あ、そうね』
そのあと美月はドライフラワーの写真も見せた。何百本の花か四冊のアルバムにきれいにならんで、夏の宿題として先生に提出したこともあるそうだ。『美月さんは本当に花が好きだね』
と私は聞くと、彼女は返事した。『そこまでじゃないの。ただいい感じなだけ』
『それは好きでしょ』
『え?うーん。そうかな』
ある夜、ずっと連絡が来なくて美月は忙しいかと思うと、十二時くらいに彼女からメッセージが来てちょっとびっくりした。なにをしていたかと私は聞いたが、答えずに彼女はいつものようにやり取りして、楽しかったからか気づいたらもう二時になっていた。美月は寝なきゃと言うと私は返信した。『遅いね。明日大丈夫?』
『なぜかあまり眠れなかったから。彰くんはいいね、毎日休みって』
『そんなことないよ。そろそろ私も入学する』
『どの学校?』
『岩橋かな。まだわからないけど』
『ここに来たら嬉しい』
おやすみを言ったあと、もう彼女は寝たと思ってパソコンの前でだらだらしているとまた美月から『遅く寝る?』というメッセージが来た。返信を打った。『うん、ちょっと』
『ごめんね。今日ありがとう』
『なんで?』
『もう寝たかと思ったけど……いるんだ』
紗季から聞いたのは、もともと美月は島根に住んでいたが、幼い頃に家族で東京に引っ越して、お父さんの海外転勤をきっかけにお母さんと美月と彼女のお兄さんは、実家である今の家に戻った。それは六年前のことだった。美月は、近くの小学校に通って、そして岩橋中学校には数人の同級生と一緒に進学したはずだが、なぜか彼女は友だちがいないそうだ。
でも彼女は結構、活発な性格じゃないか。
『私は帰宅部長だよ』
日本の学生はみんな部活に参加すべきか、次の日に聞いてみたら美月はそうと答えた。体調のことですぐに帰るのを許可されていると彼女は説明した。私は返信した。『あー、だから帰宅部と呼ぶのか。家事をする部かと思った』
『違うよ!』
美月の家に行ってからもう二週間が経った。週末にちょっと会えるかと思っていると、誘う前に彼女は紗季のことを持ち出した。紗季と私は友だちかと質問され、放課後に私たちはよく一緒に勉強したと私は答えた。しばらく黙っている美月に私は勇気を出して誘ってみると、彼女はきっぱりと断った。
え?
このチャットの吹き出しを眺めながら、仲がいいと私は勘違いしていたのかと思った。もともとほかの人と比べると彼女の態度は珍しくて読めなくて、彼女はずっと私のことを嫌だったのか……ごめんと送ると、彼女から『いえいえいえ』のメッセージが返った。『彰くん今空いてる?』
『うん、なんで』
『ちょっと電話していい?』
しばらく待つと美月から電話が来た。そとの暗闇を見ながら、挨拶をして嫌でもう付き合いたくないことの話より、彼女は学校の出来事を伝えた。「学校?」
「うん、松島くんは有名になったの」
忘れかけていた彼女の声は、聞くと妙に近所の風鈴の音を思い出した。でも有名?なにが、と思うと美月は続けた。
「一昨日ね、教室で紗季ちゃんが彰くんのことを友だちに言って、写真も見せて……だから私が彰くんと会うのは大丈夫かなと思って」
「見せたって?」
「あ、携帯の写真。クラスの半分は見たかな」
「は?」
「えっと、紗季ちゃんがしゃべっているときに携帯を友だちに取られてね。でも見られたのは一瞬だけかな」
「……それで?」
「それだけ」
紗季……やっぱり。「言ってくれてありがとうね」
「本当にわざとじゃないから、彼女のこと怒らないでね……うんうん、そう、彰くんは気にしなくてよかった……実はさ、私ちょっと話があるの」
「紗季のこと?」
「えー、違う。私たちが初めて会った日ね、私が寝てたときに彰くんは見た?あまり見られたくないことだけどさ」
「その森ね。なに?」
「あの、明るい色で……覚えてる?」
ん?
「なんというか。普通は美しいけどその白さとか、でも私の秘密だから、だれにも言わないでほしいね……」
まだ彼女の言いたいことがさっぱりわからなかったが、『美しい』と『白さ』と『秘密』を一緒に聞くと頭に意味が浮かんだ。私は早く答えた。「全然見てなかったよ!」
「え?絶対見たでしょう?」
なぜ彼女はこんなに確信してるのか!「私はただ歩きまわっただけで、どうやって見た?」
「私が意識不明のときさ、君は十分に見れたし……」
えー⁈「そんなことないよ、美月さんはちゃんと寝てたし、スカートも結構長いし……」
「スカート?」
「うん!そんなに見えなかったよ」
「本当?でも彰くんは私を見つけたとき見たはずじゃないの?」
「全然!」
「え、珍しいけど」
美月の口調から私は悪いことをしたと思って、ほかのことを少し話してから告白した。「……ちょっと見たんだけど、美月さんの、さっきの話」
「そう?」
「え、うん……白いと思ったけど、ちょっと暗くて本当に白いかな。ごめん!見るつもりじゃなかったんだ!」
美月から聞いたはずだが、少し黙ると急に電話を切った。なんで。私は、そのあと三、四回かけたが彼女は出なかった。
大変だ、彼女は怒っているのか。漫画みたいにこんなことは日常で日本人は平気じゃないか。バカ!ドゥム!
あ、電話!
取るとこちらがなにか言う前に、美月はさっきお母さんが部屋に来たから電話を切ったと説明した。「さっきの、野草と花ことって内緒にしてほしいの」
「野草と花?」
「うん、そう」
え?
だから白いって、花のこと?
寝ていた彼女の周りの花を思い出し、私は答えた。「う、うん!わかった」
「ありがとう。最近変なことが多く起こって、私はもう理解できないけど……あ、彰くんはなんか白いと言ったっけ?あー、花のこと?そう、きれいだよね。森には意外といろんな種類があるよ。今度私はもっと写真を送るね」
ホッとした……
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