20 美月が彰の家に泊まりに来る
もう彼女に触れないつもりだったが、三日後また美月と彼女の家の周りで花を探しながら、だれもいない隙にしばらく見合うと私はまた彼女にキスした……
すぐにだめだと言われたが、彼女は抵抗しなかった。ドキドキしながら、離れてまた一緒に歩くと私は言った。「もうしないかな、美月が嫌なら」
「え、そうなの」
「えっと、悪いでしょ」
「……うん」
美月を見ると、彼女の顔は変わらないように見えたので、さっきのキスは気のせいだったかと私は思った。しばらく黙ると私は聞いた。「明日、うちに来る?」
「大丈夫?行ったばかりだけど」
「いいよ。美月は忙しいの?」
「いいえ、全然」
多分美月と私はいい子のイメージで、それに去年からよく一緒にあそんでいたので周りの人にあまり疑われていないようだった。私たちの家族にも。
初詣にうちの近くの神社に行ったとき、普段は静かな町だが珍しく賑やかな風景になり、きれいで、華やかな着物を着た人もよく見かけて、そこで美月と私の家族は会った。お祈りをしてから、寒いけど私たちの家族と立ち話をして、美月と仲がよいのは嬉しいと言った。「実はみー、美月ちゃんもよく彰くんの話をしていましたね。友だちができてほっとしています……今泉さん、今日もお洒落ですね」
「はい?」
美月のお母さんは私の母に続けた。「服装は控えめのトーンで本当に素敵です。キャリアウーマンで仕事ができるし、またこんなにスタイリッシュで……これはだれも言わないですか」
母は少し考えた。「言われないですけど」
「そうですか。今泉さんに憧れる人は多そうですけど。あ、この前言ったお店ですけど、『クロワッサン村』行きましたよ。また行こうと思っているので、週末とか、空いてますか?彰くんと一緒にどうですか」
「……はい、空いてます。また連絡しますね」
気のせいか、母の顔は赤くなっていた。
そして冬休み、浅井さんに誘われて私たち家族は岡山県を旅行して、そのとき美月のお父さんもいた。着くと夕方で私たちは温泉に入って、食事のあと夜遅くまで旅館のロビーに美月といてもだれも気にしなかったらしい。
そこにはジュースがあって、一回私はいろいろ混ぜて飲んでみると、メロンの匂いは一番合うと言った。「美月も飲む?」
変な色のジュースを見ると美月は笑った。「いやだ。君が作ったのだから飲んでよ」
ソファにすわっていた彼女と私は、旅館の浴衣姿だった。そして十二時前にお互いの部屋に戻るとき、廊下で私たちはキスした。
私の手は美月の腰をさわって、柔らかい浴衣の布を感じながら彼女は言った。「見られちゃうよ」
「だれもいないよ」
「歩いてきたら……」
また少しキスすると、本当に仲居さんが来て私たちは普通にしゃべるふりをした。もう大丈夫だとわかると私はおやすみと言った。「また明日ね」
「うん!おやすみ!」
二泊、一緒に過ごして本当に楽しかった。朝、見たことがない彼女の寝ぼけ眼も見たし、あとは無口そうな彼女が家族といると結構しゃべることもわかった。
四月、中学三年生になるともう一緒に泊まる機会がなくて、五月に起きた地震のせいで、バスルームにいた美月のおじいさんは転んだそうだ。大きな怪我がないのはよかったが、美月の部屋のガラスが割れた以外屋根もちょっと壊れた。それを修理するのはそんなに手間がかからないらしいが、いろんな家が影響を受けたので、忙しい修理業者を待ちながらどうやって美月は家族を説得したかわからないけど、気づいたら彼女は私に電話で聞いた。「彰くん、空いてる部屋ある?」
「……なに?」
結局彼女は私の家に泊まりに来た。
相変わらず帰宅部の美月は、放課後に早く私の家に帰るとすることがないと心配して、その三日間は私も部活をサボって彼女といた。一緒に自転車に乗ってスーパーで野菜とかを買って、家に帰るとキッチンで私は彼女を手伝って料理もした。野菜を洗って、肉を切って、フライパンのジュージューという音を聞きながらしゃべっていた。家族みたいじゃないかと思うと、彼女が制服の上にエプロンをつけているのなんて学校の実習の姿に見えるかな。
その日母以外、おばあちゃんも美月と料理をすると聞いたから早く家に帰った。野菜を買いすぎたせいで三品はいずれも大皿になって、そのなかのレンコンのごま油炒めを食べるとおばあちゃんはうなずいた。「うん、本当においしい!美月ちゃんいつも料理をしている?」
「あ、ちょっとだけです」
きれいに切ったレンコンやそれを料理する姿を見て、実は彼女は毎日食べられるくらいレンコンが好きだとわかった。スーパーに入ったとき、思った通り彼女はレンコンを手に取ったし、褒めたら次の日の夕食はレンコンスープとレンコンチャーハン、そしてレンコンのデザートを作ったらどうするのか。でも私はただ黙っていた。
母も食べると言った。「レンコンもいいね。あとこのキャベツがおいしい。レストランの味みたいね、お母さん」
「そうそう」
おばあちゃんに言うと、母は美月の方に振り向いた。「調味料とか、特別に美月ちゃんはなにかした?」
「ないですけど、火力がちょうどいいように注意しますね。野菜自体は甘みもあるし、おいしいですから」
「あー、すごい。本当にもうお嫁さんになれるね」
「いえ、そんなこと……」
どういう意味?
私の家に空いている部屋はあったけど、いろんなものを置いているし、エアコンのリモコンも古くて表示しないような状態だった。最初、私は母の部屋に寝て、美月は代わりに私の部屋を使うつもりだったが、美月はそれを知ると、大変だから自分はリビングに寝ると言った。いろんな選択を話し母は美月が私と同じ部屋でもいいと言った。「彰はちょっと遅く寝るけど、大丈夫?」
母に聞かれると美月はうなずいた。「……大丈夫です。たまに、私は十二時まで起きています」
「そう?でも彰は二時、三時の日もあったね。だから学校で眠いってよく聞いてて」
「今日は早く寝ますよ!」と私は言った。
――――――――――――――
作家のノート
美月は彰の部屋で夜を過ごす。次は……!
この小説は云々とスローライフのストーリーが続くわけではありません。もしこれが文庫本なら最初の部分とわかるかもしれませんね (-_-;)
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