ー ゲーム会編 ー
第八章 ルミナス・ストーリー
98 鵜飼すみれさんを想う・美月の不満・おじいさんからのプレゼント (イラスト付)
コンサートが終わった九時過ぎ、両親と帰ったメンバーもいるが、蔦とほかの数名は少し遅くまで近くのスタバの二階にすわってしゃべっていた。私も彼女たちといた。一期生の先輩が後輩たちにドリンクを奢ったとき、一緒にラテをオーダーしたせいで気づくと私も奢られた。恥ずかしいけど……
そして夜景が見える二階の窓際のテーブルにすわりながら、キャプテンの稲村瞳さんは武藤という三期生のメンバーに言った。「えっとね、携帯をしながらお父さんとしゃべらないでね。相手は気にしないかもしれないけど、ほかの大人にはこれが良く見られないからさ」
「は、はい」
稲村さんは微笑んだ。「それはダメだししたくないね。今後の仕事は印象が大切だから、武藤は本当は丁寧でかわいいって彼らに見せたいよね。気を付けて」
これがアイドルグループか。
かわいいだけの存在でなく、桜田STのメンバーが多いこともあり秩序を守るための厳しさだと感じた。例えば、彼女たちといると何度も元気な「はい!」という後輩たちの返事を聞いた。
しかし、三期生たちの従順さが利用されているのではないかと思った。キャプテンの稲村瞳さんはいい人だし、二期生が入ったばかりのときも地下アイドルのコンサートの見学をすると提案したのは彼女だと聞いた。秋葉原に着いたときからずっと彼女は後輩たちのことしか話さなくて本当にほかのメンバーへの思いやりが強いようだ。事務所の方針があったとしても、この風習を作ったのはみんなのためと考える稲村さんたちらしく、国民的アイドルグループになったのは偶然ではないと思った。
私は稲村さんからテーブルの端にいる鵜飼すみれさんの方を見た。鵜飼さんと蔦は十歳くらいの年の差だけど仲が良さそうだった。二人はさっきのコンサートのことをまだしゃべっている。すると急に鵜飼さんは私の方へ振り向いた。「えっと、保護者さんはコンサートに来る?」
「四月の?」
「うん」
少し考えると私は言った。「まだチケットありますか。早くに売り切ったと読んだことがありますが」
「あるある!しかも私は結構前列の方の席があるの。その席はどう?」
蔦から聞いたのは各メンバーは自分の家族や知り合いのために好きな席を予約する権利があって、もしコンサートの日が近づいても空いている場合は普通に売る席に戻る。でも全席一万円近くじゃないか……
しかもこんなに彼女たちを目の前で見ているから、コンサートに行く必要はないだろう……。「え、なんか、ちょっと人が混んでいるところが苦手なんですけど……」
私はそう
え?
お金がなくてバイトをするかどうか、蔦に言ったからか……顔が熱くなるのを感じる。鵜飼さんは聞いた。
「そうなのですか?えっと、次のコンサートは夏で少し先だから来てほしいな、その時だけのいろんなかわいい衣装がありますし――九千六百円ですけど、私は貸してもいいですよ?」
「はい?」
「え、保護者さんは返すよね」
「いえ、大丈夫です、一万円……くらいあります。コンサートに行く代わりに――えっと、ただグッズを買うだけでもいいですか」
「私の友だちもよく誘っていますね。保護者さんも一緒なら楽しいかなって」
「う、はい」
鵜飼さんはしばらくほかのメンバーと話すと私に続けた。「コンサートのあと、いつかまた保護者さんと会ったら、コンサートの意見を聞きたいですね――今私はすみれですけど、双葉ちゃんも双葉ちゃんですけど、ステージ上で私たちは『桜田ST』です……グループのいろんな仕事があっても、私たちはその日のライブのために練習して、もっと魅力を出すことができているかもしれません」
「いえ、今もすごい魅力的なんじゃないですか」
「え」
鵜飼さんと見合いながら私はそう言った。
なぜかテーブルのみんなは黙った。稲村さん、香取さん、そしてほかの三期生も私に振り向いて、私は変なことを言ってしまったかと思った。
どきどき……
私は蔦をシェアハウスまで送ると、十一時に上り線に乗って自分のアパートに帰った。
もう車内は空いていて私は楽にすわれた。本を持っていないので携帯でニュースを読むと、もう夜中だからか表示されたのはほとんど芸能ニュースだった。有名女優のちはるの新しい映画の記事もあるし、そして桜田STについてのもあった……
今日会わなかったメンバーたちについての話題だけど、記事のなかにテレビ番組用のドレスっぽいカラフルな衣装を着ている彼女たちの写真を見ると、鵜飼さんが言ったかわいいコンサートの衣装のことを思い出した。
彼女なら、この衣装でもかわいいと思うが……
バカ!なに思っているんだ!
コンサート会場で私たちがぶつかったアクシデントをきっかけに話すようになって、仲が少し良くなったみたいだが。
でも国民的アイドルと……?
普通に相手の気持ちくらいならわかるけど、他人のことではなく自分も関わると邪気があるのではっきりと判断できないときが多かった。鵜飼さんはわざと私に注目しそうで、冗談を言うのは彼女の性格だと思うけど、そのハグのせいか私はまだもやもや彼女のことを思っていた。
そのとき彼女は私が赤くなったと言っても、実は彼女もそうじゃなかったっけ?ちょっと暗かったけど気のせいじゃないだろう……
私はただの蔦の付き添いであそぶつもりではないと、鵜飼さんとのことを美月に告白したいが、もし言ったら私の悔いは鵜飼さんを本当に好きになったという意味になって、怒られるんじゃないかな。
もう鵜飼さんと連絡先を交換していても、男から先になにも送らなければ相手もはじまらないと聞くし、セーフか。
……それは鵜飼さんが私を好きだと考えているわけじゃない!
そして最寄り駅のコンビニで携帯を見ると鵜飼さんからのメッセージがあった。
え、
『家に着きましたか?』
『もうすぐです』
と私は返信した。
少し鵜飼さんとやり取りすると、蔦とのメッセージで私がまだ家についていないと知って連絡してみたそうだ。
最後に彼女からスタンプが送られてきて、そのやり取りは終わった。
あまり人だかりが好きじゃない、行列のレストランに絶対並ばない私が桜田STのチケットを買ってコンサートに行く予定だと美月に言うと珍しいと思われたが、蔦の誘いだと説明した。
その頃、蔦の中学校の制服がシェアハウスに届いた。初めての制服だから彼女は嬉しそうで、それを試着して写真を私に送った。その写真の蔦がかわいいと思うので私は美月にも転送して、美月はかわいいと褒めたが、蔦が胸を強調しているんじゃないかとも言った。『え、そう?』
メッセージで私は聞くと、彼女は返信した。『だってそんなに腕を組む必要ないでしょ』
蔦が鏡の前で撮った写真は、女性の美月に言われた通りにも見えるけど。
普通にだれとも付き合えそうな美月なら中学生になった蔦をかわいがる態度をとるかと予想したが、制服のことからも実は彼女は蔦を疑いの目で見ていたかと思った。それは蔦が女の子だというより、私と連絡を取るために『タツくん』と身分を隠したときから、桜田STに入れたことまで色んな計画がありそうで美月は怪しんでいるのかもしれない。
桜田STのコンサートに一緒に行こうと私は美月を誘ったけど、仕事があると断られた。その否定は蔦、または桜田ST全体的への反応かと私は懸念した。そのあと私は美月にあまり桜田STの話を持ち出さないようにしたが。
四月にコンサートに行く準備かのように、混んでいる体育館で大学の方針と情報を聞きながら私は何千人の新入生のなかにすわっていた。私の学部の入学式は朝の時間帯で、みんなと同じく普通の黒いスーツ姿だったがそのままおじいさんとの予定で大学から杉並区にある彼の家に会いに行った。
私が大学に合格した際、プレゼントをあげたいとおじいさんは言っていて、家でお昼を食べると私たちはタクシーに乗って銀座の百貨店和光に行った。
そのプレゼントは腕時計でいいとおじいさんが決めると、安くて大丈夫と私は言うけど、ようやく買ったのは二十万円の時計だった。
おじいさんは資産家だと知っていたが、長い間彼との交流がなくて急に近づいたらお金目当てに見られるかと心配した。十二歳で日本に着いたばかりのときみたいに名門校の『林ヶ坂』に入ることやいろんな援助を私は今まで断っていて、断り続けたら逆に失礼じゃないかという思いもあってやって来たが……。
革のストラップの腕時計、地味な見た目でもレシートの値段を見るとまだ恐ろしかった。店員がおじいさんの名前まで知っていそうで、そのあと私たちは近くにあるコーヒーショップ入っておじいさんはよくここの店に来たことがあると説明した。 「本当に服やスーツを買わないの?」
普通のカフェよりお洒落で静かな場所で、周りを見渡したあと私はおじいさんに向いて言った。「全然大丈夫ですよ。これで十分すぎますから」
おじいさんは笑った。「そんなに大切なことじゃないよ。
「はい、空いています」
「気づいたら彰くんはもう大学生だよね。
「梓さんですか?」
「川崎さんの孫だ。明治大学の一年生かな。頭がいいし、かわいい子だよね」
川崎さんは日本の大手流通会社のヘロン・ホールディングスの元社長で、おじいさんの親友だった。
――――――――――――――――――
後書き
実は彰の家はお金持ちなのか?!
多くの女の子と関わると美月は静かに気に入らなさそうで彰はどうすればいいのか……
しかも
(なぜキャラクターが多いのかと思った方へ m(_ _"m)
それは小説の風景が広いと錯覚を作るためです。現実の世界でいろんな人と出会って、だれが大切になるのか先がわからないのを真似て、この小説のキャラクターもヒントなしで知らない状態にしています。)
イラストは彰の帰りの電車内でのシーンです!
https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330657486424137
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます