79 ちはるの芸能界仲間とランチ (イラスト付)



私がいるせいでちはるさんはもう起きることにした。結局インスタント麺じゃなくて、六本木のお店から買ったサンドが冷蔵庫にあるので、ちょっとチンしながらドリップコーヒーを作ってと私たちの朝ご飯ができた。

  昨日のことを聞くと、私は失神して倒れたあと、ちはるさんは見かけて助けに来た。最初救急車を呼ぼうとしたが、私はただちょっと休みたいと言ったのでこのマンションに戻って、どうやってここまで私を運べたかわからないが。オレンジの匂いのディフューザーも私の頼んだそうだ……私は意識があったか覚えないけど。

  初めて見たちはるさんのすっぴんは、若くてかわいかった。今年彼女はもう二十一歳だけど、私と一緒にいたら同級生に見えるかもしれない。


  朝食を食べながらちはるさんは弟としばらくメッセージのやり取りをしていた。もう彼は高校生になったから大学で留学するかどうか今は考えているそうで、プログラマーを目指している彼はテクノロジーに詳しくて、ちはるさんはよく彼に相談したことがあると言った。そして昨日のパーティーでいろんな出来事のなかにアタルさんの組といた話を聞くとちはるさんはいっぱい笑った。

  完食するとちはるさんは大きなストロベリーを持ってきて、私が何時に帰りたいかと聞くと言った。「美月ちゃんは夕方までいていいけどね。この間出かけるなら私の服もあるし」

  最初早く帰るつもりだったが、まだ朝だから余裕があってちはるさんと寝転んで映画を観た。ちはるさんがまた持ってきたデザートも食べて、そういう風に時間を過ごして午後三時くらい彼女とお昼は外食して、一緒にぶらぶらして帰るときにはもう夜だった。

  「えっと、坂本さんってさ、どうやってマンションに入れたの?朝、驚いたけど」

  麻布十番駅前で私は聞くと、ちはるさんは答えた。「彼女はたまに来るから、入口で使うカードを持っているね」

  「そっか」

  彼女と坂本綾さんが知り合ったのは中学校時代からと聞いて、坂本さんの不機嫌な顔を思うと、どういう風に仲良くなったのか想像できないが。


  ちはるさんと知り合いなのは前にお母さんに言ったが、昨日の電話で相手の『ちはる』は同じちはるだとわかるとお母さんはびっくりしたようだった。酔っ払った私は彼女の負担になるんじゃないかとも言った。

  「そんな場所でみーちゃんが飲んだのはわかるけど、ちはるちゃんは忙しいと言ったでしょ、こんな休日に邪魔しない方がいいんじゃない?」

  失神して倒れた話は伏せて、ちはるさんが酔っ払って家に帰れなかったことにした。ありがとう、でもそう言ったら、十七歳の私がお酒を飲んでも叱らないお母さんもそうだし……「ちはるは私にいてほしいと言ったけど」

  「本当?」

  「うん……えっと、写真!まだ見せてないの」

  ちはるさんの許可をもらって撮った彼女のマンションの写真をお母さんに見せてうちのインテリアもこうした方がいいと話し合って、お母さんは言った。「ちはるちゃんは何歳?二十一?そうね、芸能人のお宅は豪華だね……何億円かな」

  「聞いてないけど、それ以上かな。なんかさ、本当に宮殿みたいね、お母さん。いつか私もこんなマンションを買えたらもう芸能界をやめるよ」

  「みーちゃんならできるでしょ。でも本当にこんなきれいなマンションがあったらお母さん泊りに行ける?」

  私は携帯から顔を上げた。「できるよ、なぜ」

  「彼氏といるんじゃないの?」

  「え?彼氏はいないよ!」

  「そう?結構イケメンだと思うけど……東京の子より、島根の近所にいる気がする」

  「いないいないいない!」


  ちはるはほかの友だちにも温かくて徐々に彼女が私だけに『計算高い』かどうかの疑惑は緩和していた。王女様のようだが、わがままな振る舞いより彼女はみんなに気を遣うしいつも面倒見が良くて、あとでわかったのは彼女のマンションは芸能界で有名な待ち合わせ場所だった。

  

  この待ち合わせはたまたまで、ロイさんの誕生日パーティーの二週後の四月中旬にちはるは私を誘った。彼女のマンションでのお昼は、会ったことのない有名な芸能人が数人来るので朝からメイクとヘアセットをして時間がかかった。前日から服装を決めたが、また長くミックスアンドマッチを試した。

  その日半田聖節さんは忙しくて来られないと十二時にマンションに着いた時にわかった。ちはる以外に三人いて、そして十分後くらいにもう一人着いた。このあと仕事があるので、アイドル出身の芸能人の滝本さんはきれいなパンツスーツ姿だけど、カジュアルな服装のほかの人たちは女優だからか、説明できない美人のオーラがあって、彼女たちを見ると私はちょっとお洒落してよかった。私はネッティーさんしか知らなかったので彼女のそばにいた。

  実はこの日タレントの名倉さんも来たが、美容院が空いていると連絡が来て、そこに行くためにただ愛犬のダックスフンドを預けに来たそうだ。

  ガブリエルという名前で、みんなはギギと呼ぶけど、たまにここに連れてきて、このマンションは動物禁止だからスーツケースに入れて密輸したと聞いた。黒色と少し茶色の長い毛の種類で飼い主の名倉さんみたいに人懐っこくて、しばらく私たちはギギとあそんでいた。

  そして女優の結城朋子さんはギギの腹をなでながら言った。「あ、ねね、さっきワカモレもオーダーした?」

  ちはるはネッティーさんと話していて、振り向くと答えた。「セットにあるよ。君だけ食べるから足りる?」

  「足りるかな。サルサならこれが一番好き。もっとオーダーして間に合う?」

  今日は六人みんな女子だが、ほかのときは男の人もいたそうだ。紹介されてもあまり慣れていない人がいるせいで、ちょっと離れる機会があると私は携帯で彼女たちの名前で検索してみた。

  犬とよくあそんだ結城朋子さん、私より少し背が低く、かわいくて魅力があって、見たことがないから私より無名かと安心したいけど、意外と彼女の芸歴は長くて、知らない私はずっとそれほどの田舎にいたかと思った……


  デリバリーが来ると、食べる前にちはるはみんなと自撮りして、あとでアップする用だと説明した。そして女優の丸山さんが言った。「……ちはるは頑張ってるね、もう芸能界の大物かと思うけど」

  私の反対側にすわった彼女は、眉毛がちょっと濃いせいで気づいたら私はよく見ていた。

  ちはるは撮った写真を確認しながら答えた。「いいえ、ただお洒落な写真をアップするのは用がないでしょ。実力を見せないとね」

  「……食べはじめよう?」結城さんは聞いた。ギギは彼女の膝にすわっていた。




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後書き


美月は恥ずかしいので、母に自分が彰と付き合っているのをあまり認めたくありません(笑)


イラストはネッティーです。

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330654828699678

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