80 ランチで芸能界の裏話 (イラスト付)


ちはるは撮った写真を確認しながら答えた。「いいえ、ただお洒落な写真をアップするのは用がないでしょ。実力を見せないとね」

  「……食べはじめよう?」結城さんは聞いた。ギギは彼女の膝にすわっていた。


  元アイドルでスーツパンツを着ている滝本さんは、もうちょっとあとでケイラのインスタグラムをちはるに見せると言った、外国で朝の運動をしているみたいな写真。「もう彼女は君のことを忘れたんだよ……これはどこだっけ、オーストラリアかな」

  ちはるはため息をついた。「まだ私のことを見てると思うよ」

  「そう?」

  「うん。そんな人ね、自分はポジティブだと言うなんて最悪な人だ。自分はポジティブだから気に入らないことを言うやつらはネガティブだと気軽にレッテルを貼るね。前にグラドルのセクシーな撮影は女性差別、なんだっけ、父権社会?と言って、自分は運動やヨガをするときにあんなスポーツブラ姿で谷間をアップして見せ放題なの。なんでこんな変なものはいつもヨガをやって自然食品を食べるのか全然わからない。もう喧嘩を売られたら逃げないでよ」

  

  ちはるが言ったのはケイラ、海外でも大人気のハーフモデルのことで、数年前から陰口がきっかけで彼女たちの敵になったと噂を聞いた。

  普通に『共演NG』みたいなネットの記事があって、この俳優さんたちが嚙み合わない、漫画のライバルみたいに鉢合わせると睨みつけて去ると芸能界に入る前に私は想像したが、実は敵意が記事により十倍あるんじゃないだろうか。ケイラさんとちはるのことも一般人なら知らないが。

  前に同事務所の米沢宏子さんが言った通り芸能人のみんなはそれぞれ自分の組があって、自分たちの価値観を持ち、現場で笑顔で共演しても、裏でだれかと悪口しないわけじゃない。ドラマ『小さな宴』の共演者の藤間穂花さんのことなら、純粋で可憐な女の子だと思うけど、男への依存があるというそんな悪口を聞いた。私もなにを言われているかわからないし。

  そして丸山さんが言いはじめてから、みんなはこのグループ写真のギャラを取らないといけないと話し合って、ネッティーさんは言った。「だから、今日ちはるが奢るでしょ?」

  みんなは笑った。


  女優としての仕事について聞かれると、『白いままに走る』から今私の第二ドラマの『小さな宴』がそろそろクランクアップして、芸歴が少なくて恥ずかしいから次に出演する『静かなプロローグに近い』のドラマのことも言った、ただ脇役だが。

  そして丸山さんが言った。「私は浅井と同じ年齢くらいで芸能界に入ったんだ。この段階はいいよね、『シロハシ』の主役なんて全然普通じゃなかったから、いい役をもらうのは時間の問題だ」

  あとで検索すると丸山沙耶華さんは当時二十三歳とわかって、ちはるの二つ上だった。彼女の眉毛が濃くてもそれは似合ってきれいな女優さんだ。しばらく一緒にいると彼女は積極的だと感じて、長年、十五、十六歳のときから彼女は『ラヴィシュア』という女児向け変身アニメシリーズのホストとして勤めて、派手なピンクなどの色にかこまれた優しいお姉さんの役で、番組の動画を見るとちょっと似合わないと感じた。だんだんと彼女は有名な女優さんになった、こう見ると私のツバサプリンセスの芸歴と似てるんじゃないかな。

  「浅井の事務所はラグーン?」結城さんは食べながら聞いた。もうギギは床に降りた。

  「はい、そうです」

  「土居成実もここにいるね。いい事務所だ」

  丸山さんは結城さんにうなずいた。「ただ脇役でも、売れっ子になると期待されないなら事務所はえらばないね。あの『静かプロローグ』は九時放送でしょ。うん、そう、プライムタイムに浅井を出演させて一般の視聴者に馴染ませるんだ」

  「……プライムタイムって難しいね」

  結城さんはスプーンでもっとワカモレを取ると、私に振り向いて続けた。

  「その時間帯まで俳優を差し入れるのは事務所がすごい力を使うし。えっと、もしそのドラマ、あとは自分の役が好評にならないと浅井の悪いじゃないけど、そう見られるね」

  ちはるは言った。「もっと知名度のある俳優を使った方がいいこと?」

  結城さんは答えた。「そうよ。だから機会は数回来るわけじゃないね、大きな事務所でもダメな子を押すなんて見られたくないし」

  そして少し離れた席から元アイドルの滝本さんが言った。偶然だが、彼女はアイドルに人気の八重歯があってかわいく見えた。「そういえば海みたいじゃないの。アイドルや読者モデルなら結構自分は人気だと思うときがあるね、プライムタイムまで活躍できるのはてっぺんの二、三人くらいだけさって」

  「プライムタイムは海なら、ほかのところはプール?」丸山さんは聞いた。

  「そうそう。人が少ないから目立つよね」

  

  この話はマネージャーの工藤さんも教えたことあるみたいだ。

  

  しばらく会話を聞くと私は言い出した。「このドラマに出演するとき、私はどうすればいいですか、準備とか」

  「運ばかりかな」丸山さんは答えた。

  「そうですか?」

  「みんなと働きやすいなら助かるけど、確保までできないと思う……主役ならばもう制作側が決めたことだよね、それでもほかの空いてる役はいろんな事務所と斡旋したりして。言いたくないけど、そんな斡旋って風俗のことまでもあったよ」

  え?「そ、それは、女優が身体を……?」

  「違う、違う!」

  しばらく静かに食べていたネッティーさんは急に笑い出した。丸山さんはまた説明した。

  「そんなことがあるかわからないけどね。ただ言ったのは歓迎として関係者たちはああいうところにあそびに行くとか、結構あるの」

  白石社長もそんなことする?そう思いながらちはるは言った。「本当に事務所は美月のことに期待しなかったらさ、もう長く前舞台に送ったよ」

  「どういう意味?」

  彼女は私を見ると答えた。「舞台のギャラってまあまあだけど仕事の方が多いね。でも一旦入ったら簡単にテレビドラマの役に戻れないから、事務所に舞台をやってみてねって言われたらだれもが悩むんだ」


  え?


  今まで舞台なんて演技のことにこだわって、実力者が集まるところのイメージがあるけど。だれも入りたくないの?

  そして丸山さんは私の思いを言ってくれたようだった。「だれもは舞台をやったでしょ、君もそうね」

  ちはるは三つの舞台に出演したことがあって、一つは主役のジュリエットの役までだった。ちはるは答えた。

  「全然違うよ、自分は演技力があるとアピールしたくてたまに舞台に出演する有名な俳優たち、とテレビドラマに来れないから舞台に淀んでいる人たちはさ。舞台の役者になりたいと言う人がいても、大体ただテレビの役者になるのは絶望したんだ……(つづき)」




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後書き


美月の思い、ちはるさんから「ちはる」になりました。えぇΣ(゚д゚lll)


美月以外でここにいるのは

ちはる、ネッティー(タレント)、丸山(女優)

結城(女優)、滝本(タレント)、名倉(タレント、美容院に行った)

ギギ(犬…?)


完全なオフのため、いつも丁寧で配慮が必要な芸能人達が本当の顔を見せる⁉

悪口は続きます。次の話は『発言注意』のタグが付きます……


ちはるライバル、ケイラのイラスト

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330654919508314

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