76 パーティーの終わり (イラスト付)


ちょうど彼女さんが完食したとき彼氏から連絡が来て、藤間さんはまた現場で会おうねと言うと別れた。



  十二時前に私はパーティーを出た。

  タクシー代を断わって電車に乗ると主張すると、ちはるさんは駅まで送ると言った。

  酔っている彼女は、エレベーターに一緒に立ちながら頭を私の肩に乗せて休憩していた。彼女の髪の毛は柔らかくて、ミラー越しに目を閉じた彼女を見ると、こんなときでもまだきれいだった。今日私は大女優さんとこんなに接近していると思った。


  うん?


  私の首元になにか感じて、向くとちはるさんの唇らしかった。

  偶然にさわったというより、エレベーターがもう着いてドアが開いても彼女はまだキスをしていた。「ち、ちはる……」

  「うー」

  起きたようで、彼女は普通に私と一緒にロビーを歩いていた。まだ私はおずおずとしていたが。

  彼女が私の友だちのように関わっても、ある日私も彼女みたいになれると妄想するのはだめじゃないか。彼女とほかの人たちは別の世界にいるんだ。頑張ってこんな格好をしたら一緒にいられるけど、私は輝いているものではない。進めば私は芸能界の小さな明かりになれるかもしれないが、あと何作に出演するべきなのか、それに演技と言ったら、もう把握できたと思っても結局なにもつかめなかった。自分の役がわからないまま演技したのに、監督さんはOKカットにしてくれた。

  偽物の私を女優と呼べるのか。


  ホテルを出ると一緒に夜道を歩きながら、楽しかったかとちはるは聞いた。「ごめんね、パーティーで一緒にいられなかった。私が誘ったのに」

  「いえ、大丈夫。今日はいろんな人と会えて嬉しかったよ」

  見送ると言ったが、途中でちはるは目を瞑りながら歩いて、ホテルに帰れるかと私は聞くと彼女は頭を振った。「ね、美月ちゃんが家に着いたらメッセージを送ってね」

  「うん、ちはるちゃんも」

  「私は大丈夫だよ」

  歩きながら私は言った。「……実はさ、聞きたいことがあるんだけど」

  「なに?」

  「ちはるはケイラさんと知り合いなの?」

  「……うん」

  「そっか」

  「どこから聞いたの?」

  「いいえ、たまたま。聞いただけ」

  「米沢でしょ」

  「違うよ」

  私たちは見合うとちはるさんが言った。「ほかになにを聞いたの?私は計算高いとか?」

  「いえいえいえ」

  彼女はため息をついた。「じゃあなんで?」

  「ただ今日半田さんも彼女のことを言ったの。私はちはるちゃんに問題ないよ」

  「ならいいけど。正直私は計算高いかもしれない、美月ちゃんは期待の新人だし、美月ちゃんの仲間入りをして『え?!ちはるの友だちは美しい女優ばかり!』ってなったら、芸能界で便利ね。そう思わない?」

  「え、そう?」

  「うん、美月ちゃんは私といたら、ケイラは多分イライラするんじゃないかなと想像したの。楽しかったよ、くだらない世界だけどね。私の日々はこんな感じと言えるし、もし嫌なら美月ちゃんは私に連絡しなくても大丈夫だからね」

  「連絡するよ!」

  「いいえ、自由にしてね。私のことはなんでもいいよ……じゃあ、ここまでかな」

  「待って、どういうこと?」

  「え、もうすぐでしょ」

  先を見ると、そうだ。「ありがとう」

  ちはるさんは微笑んだ。「いいよ。メッセージを忘れないでね」

  「うん!」


  長く彼女は芸能界にいて、好きな人と同様にアンチも多い。ケイラさんの場合は彼女を『ちびモデル』と呼んだそうで、『ちはる』の芸名らしく平凡だと言ったみたいだった。

  でもそれだけか。さっき私への笑顔ではわからない感じがあったかな。

  私はしばらく夜道を歩きながら、計算高いって彼女より私じゃない?彼女は有名だから付き合いたい。悪い方は私で謝るべきなのに逆に謝られて、私はどんなものか。

  月が見える……気づかなかった。きれいね。

  

  ……だめだ。またか。


  ミカンの香水、持っていないか。


  倒れそう……


  こんなきれいな夜なのに……ごめん。


  彰くんも……また会えなくても怒らないでね……





―――――――――――――――――――

美月はまた失神?


米沢(広子)は前にちはるがビンタした同年代の女優です。


また、『ちはる』は芸名なのか?


次の三回は第5章、第6章(上)、(下)の要約です。お楽しみください^^


美月は月を見ているイラスト

https://kakuyomu.jp/users/kamakurayuuki/news/16817330654305136682

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