第8話 冒険者になる理由③
急に褒められた四人はそれぞれ嬉しそうに照れていたが、
「最後の理由は冒険するならみんなと一緒がいいなって。それが一番強いかもしれないなあ」
「アレクは時々そういうことをサラッと言ってくるからずるい…」
全員がため息をついてアレクの天然ジゴロっぷりに呆れた。
アレクは基本計算高いがたまにこういう恥ずかしいことを平気で言ってくるところがある。
アレクに好意を寄せる女の子は街でもかなり多いのだが、本人にその気がないのか特定の女の子と付き合っているという話はとんと聞かない。
「まあ、あたしたちを誘った理由はわかったけど。具体的にどう進めるつもりなの?」
「こういう時ミリアは話が早くて助かるぜ。まず、このパーティの目標なんだが…」
そこでアレクは一呼吸おいて言った。
「1億ルピー貯めることだ」
は??とその場にいる全員が驚いた。
5年目の専業冒険者パーティの稼ぎが大体5,000万ルピーと言われている。その倍の金額を週末のみの探索で稼ぎだす。
しかも貯めるということは経費を差し引いた金額でということだから倍どころではない。
「…念のため聞くけれど、それはパーティ全体で1億ルピーということだよね?」
「鋭いなロイ。喜べ、一人1億ルピーだから計5億ルピーが目標だ」
いよいよ気が遠くなる数字だった。やはりアレクは頭を強く打ち付けたのだなとロイは確信した。
「おい、そんな可哀想なものを見るような目で俺を見るなよ…。
ちなみに5億ルピーだが10年以内で貯めきるからな。それ以上は時間的にも、命を懸け続けるのも割に合わないという判断だ」
「まあおまえがやるって言うからには勝算があるんだろうけどよぉ、アレクよ、ちょっと今回は言ってること滅茶苦茶じゃねぇか?俺はそんなに冒険者稼業に詳しくないがそんな簡単なもんじゃねぇだろう?」
「いや、不可能じゃない。これは1年前から考え続けてきたことなんだよ。それにできる出来ないよりも短期間で大金を稼ぐにはこれしかない。目標を達成するにはこれしか…」
全員が黙り込んだ。お互いの夢にかける想いを知っているからこそ、アレクの発言が胸に刺さった。
1億ルピーはあくまでも最低限の目安で、このメンバーの中にはそれ以上の金がなければ夢に届き得ない者もいる。
たしかにアレクの言う通り、やるしかないのかもしれない。全員の目に意志の炎が宿った。やり遂げる意志だ。
みんなの前では言わなかったが、実はアレクはそのやり遂げる意志をパーティメンバーの条件として最重視していた。
せっかく組んでも途中で抜けられたらまた一からやり直しになる。ここにいる全員が自分のやるべきことへ強い責任感を持っていると知っていたから誘ったのだ。
「話を聞く準備が出来たみたいだな。オーケー、どう進めるか現時点での構想はあるが、正直やってみないとどうなるかわからない。だから今回は序盤の話をする」
そこで一呼吸空けて、
「まずは国営の冒険者育成予備校に通ってもらう」
言い放った発言にまたしても全員が疑問符を頭の上に浮かべるのだった。
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