第64話 決算直前

前前前夜祭の数日後、アレクたちは再び荒野の洞窟を訪れていた。

今回の探索の目的はミノタウロスの討伐。その一点のみを目的として探索に挑んでいる。


酒場ではサラから当然止められた。これまでよりも遥かに強く引き止められていた。危険すぎるからだ。


しかし、どれだけ止めてもアレクたちはがやめるつもりは無く、ギルドに引き止める権利はないため最終的には了承するしかなかったのだが。


一行は順調に探索を進める。前回10階層まで行ったことで道を把握していたのと今回はとにかく10階層まで早く着くことを目的としていたため、戦闘を最小限にして寄り道もしなかった。

その結果二日目の昼頃には10階層へと到達することが出来た。


禍々しい扉の前で最後の打合せと準備を済ませる。

流石に全員が緊張している様子であった。

アレクはそのまま行かず、全員の緊張をほぐしてから入ることにした。精神面が戦闘に大きく影響を与えるためだ。


「なんだミリア、緊張してるのか?」

「な、なに言ってんのよ。あたしが緊張するわけないじゃない!ビビってるのはギルだけよ」

「ば、馬鹿やろう!誰があんな牛にビビるかよ!世界一の鍛冶屋になる男だぞ俺は!」

「まあ僕は正直怖いけどね。ギルはあいつの攻撃をこれから全部受け止めるわけだから、それでその威勢の良さは尊敬しちゃうな」

「ギル、かっこいい」

「今回の作戦はギル様にかかってますものね…」

「ま、まあ大舟に乗ったつもりでいろよな」

「声震えてるわよ、ギル」

「うるせぇ!ミリアはいつも一言余計なんだよ!」


全員がフッと笑い力が抜けた。頃合いだなと感じたアレクは扉の前に進み、


「よし、勝負と行こうか」


と仲間たちへ語りかけた。


全員が頷くのを確認してから扉を開け、アレクたちは再びミノタウロスと対峙した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る