第65話 vs ミノタウロス

「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


侵入者に気づいたミノタウロスが雄叫びを上げる。

距離はまだあるが、こちらをギロリと睨むとこちらへとゆっくりと歩き出した。


「作戦通り散るぞ!」


アレクの声に仲間たちは一斉に散会した。


といっても、扉から少し進んだ場所にギル、ロイ、ルミエラの3人は残ったままだ。アレク、ミリア、レイラの3人はバラバラになってミノタウロスの背後に回り込もうとしている。


ミノタウロスは一瞬周囲に散らばった敵を見やったものの、特に気にすることなくギルたちの方向へ歩みを進めた。


ミノタウロスからすればアレクたちは全員が取るに足らない相手だ。

であるならば、動かずに固まっている相手から潰してやろうと考えたのだった。


「くらいなさい!」


歩を進めるミノタウロスに向かってミリアが矢を放つ。矢はミノタウロスの後頭部へと吸い込まれるように飛んでいき、命中した。

しかし、それでもまるで気にせずに歩みを進めている。ダメージはまるでないようだった。


「く、やっぱ硬いわね…」

「それなら、わたくしが!」


レイラは質量魔法で軽量化したハンマーを持ち、ミノタウロスの側面から殴りかかった。振り切った瞬間、重さを元に戻し超重量の一撃が叩きこまれたが、


「グオア!」


ミノタウロスは左手を払うように無雑作に振り、ハンマーを弾いた。


「なっ!」


初めて感じる手応えに驚いたレイラは思わずハンマーを手放した。一瞬の硬直。もしミノタウロスにその気があればこの瞬間にもう一撃飛んできてレイラは死んでいたかもしれない。


しかしミノタウロスは追撃をせず、ギルの方へ向かっていった。

この女はいつでも殺せる。そう判断したのだった。


ミノタウロスがギルの目と鼻の先の距離まで近づき腕を振りかぶる。ギルのすぐ後ろにはロイとルミエラが怯えた表情をして立っている。


この位置なら次の一撃で3人とも死ぬ。そう判断したミノタウロスはニヤリと笑うと、万力を込めてギルへと拳をふるった。


その瞬間、ギルは背中に隠していた大きな赤い盾を向かってくる拳に合わせて前へ突き出した。

拳と盾が激突した直後、圧倒的な体重を誇るミノタウロスが後方へと弾け飛んでいた。

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