第23話 初めての冒険、それぞれの感想〜ギル〜
「ああ〜、つかれた〜」
「そんなこと言っても何も起こらないわよ?」
「疲れ果てた幼馴染みが目の前にいてなぜそんな冷たい事言うの?」
「ギルがもう少しイケメンだったら話は別だったかも」
「くっ、結局顔なのか…俺もアレクくらいイケメンだったらアメリアに色んなサービスして貰えてたのか…」
「アレクくんは性格もいいからね〜。ギルが勝とうと思ったらあと3周くらい人生送らないとね」
「俺とアレクの差って性格すら今世じゃ埋まらないの!?」
絶望的すぎる…と落ち込むギルの前でクスクスと笑うアメリア。垂れ目で紫に近いピンク色の長い髪を後ろでアップに結い上げている。今日は胸元のざっくり開いたドレスを着ており特に胸周りが強調されているがそうでなくてもスタイルが良いことは彼女を一目見ればわかるだろう。
ギルは初めての冒険後、幼馴染みの一家が営むカフェ「グローリーズ」を訪れていた。
「ギルちゃん、パンケーキ焼けたわよー」
「おばさんありがとう!これがあったからこの2日頑張れたんだよ…」
「あら私の顔が見たくて頑張ったんじゃないの?」
「うるせー!!気付いたら会計に『接客料』追加してた幼馴染みの接客なんて誰が喜ぶんだよ!大体ここはカフェで、そういう店じゃねーだろ!」
ギルは自宅の隣にあるこのカフェに2日に1回は来ていた。
甘党でグローリーズのパンケーキが大好きと言うことと、
「あら、ギルが来てくれたら私は喜ぶわよ?」
「…そうやってからかわれるのももう15年目ともなると慣れてくるもんだな」
「昔はちょっとからかうたびに真っ赤になってて可愛かったのになー」
「おまえのせいで俺は女の子と話すといつもからかわれているような気になって、女の子と話すの苦手になっていったんだからな!」
「モテないのを私のせいにしないで、あと3周人生を頑張りなさい」
「俺は今世でモテたいんだよ!」
話しながらクスクスと笑うアメリアと真っ赤になって反論するギル。パンケーキよりもこの時間を求めてグローリーズを訪れていることに本人はまだ気づいていない。
「それで、初めての冒険はどうだったの?」
「急に話題変えるなよ…どうもこうもボロボロだよ。アレクは急に手出ししないとか言い始めるし、いきなり毒食らって倒れるし、結局目標の5階層まで到達出来なかったし…」
「毒!?体は大丈夫なの!?」
「アレクからもらった薬飲んだらすぐ治ったよ。その時は気にしてる余裕なかったけど、あいつああなることを予想して準備してたんだな」
荒野の洞窟5階層までに毒を持っている魔物は存在しない。頭の良いゴブリンが剣に毒を塗っている可能性を考慮していたのか、たまたま持っていただけなのか。どちらかわからないが、前者だとしたらやはりアレクは只者じゃない。
「アレク君の準備の良さに救われたのね」
「まあアレクが戦闘に参加していればそもそも毒を食らわなかったんじゃないかとも思うけどな…」
アレクが行うことにはすべて意味が、考えがある。聞けば教えてくれるだろうが、今回の冒険については打ち合わせたかのように誰も深く計画を聞こうとしなかった。
「アレクはパーティのリーダーだからな。まずはリーダーの指示通り動いたらどういう結果になるのか確かめたい気持ちがみんなにあったんだな」
これまでの関わりの中でアレクの実力は理解しているつもりだ。ただ命をかける冒険者という職業の中で瞬間瞬間どういう判断を下せるのか、お互い確かめていた部分が全員にあった。
「それで、結果はどうだったの?」
「これは俺の感覚なんだが…」
今回の冒険を振り返る。お互いの連携、ダンジョンの進み方などまだまだ未熟者な点は多くあるものの、
「俺たち、結構いい線行くと思うぜ」
そう言ってギルはニヤッと笑った。そう感じる確固たる理由は今はわからない。だが成功の予感だけは強く感じていた。
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