第22話 冒険を終えて
ダンジョンから脱出した一行が冒険を終え、ギルドに寄ってクエストクリアの報告をし、ドロップアイテムを換金した時にはもう夜もかなり遅い時間になっていた。
「冒険で稼いだ金は共有財産としてギルドに預かってもらった」
それが一番揉めないから、と語ると全員がうなずいた。
金銭的な裏切りは冒険者パーティ解散理由の中でも上位を占める。金の切れ目は縁の切れ目というが、仲の良いパーティでも金銭が原因で解散してしまうことは多々ある。
ちなみにギルドが調査した解散理由の第1位は「冒険性の違い」によるものだそうだ。
「さて、予定より少し早い帰還になったが、このあとどうする?」
アレクの問いかけにゲンナリした表情でロイが答えた。
「明日も仕事があるから早く解散しよう…」
ロイの発言は全員の総意だった。疲労が限界を超えて気を抜くとその場で寝てしまいそうだった。
「それもそうだな。じゃあ今後のことはチャットに書いておくからステカを後で確認しておいてくれ」
それじゃあな、と言ってアレクは立ち去っていった。戦闘にあまり参加していなかったとはいえ、彼の平然とした様子を見てあのバイタリティはどこから来るんだと全員が苦笑いを浮かべるのだった。
そうしてそれぞれが家に帰り、彼らの初めての冒険は終わりを告げた。
ちなみにギルドで報告を受けたサラはかなり驚いていた。
ゴブリン討伐依頼を達成しただけでなく、全員がほとんど無傷で装備等にもそこまでダメージがなさそうに見えたからということと、アレク達があまりにも淡々としていたからだった。
「普通の冒険者なら初めての冒険が成功したらもう少し嬉しそうにしてるものだけど…
疲れているのもあったけど、妙に落ち着いていたのは普通の初心者より年齢が高いからかしら?」
初めての冒険でたくさんのワームとゴブリン10匹にコボルト3匹を狩って帰ってきた冒険者が
これまでにどれだけいただろうか。それも2日でやったというのだから驚きだ。
それだけに全員大喜びしていないことを不思議に思っていたのだが、サラの予想は少し外れていた。アレク達の目標は「5階層への到達」であり「ゴブリンの討伐」はあくまでもそのついでで、収入を得るための手段だったからだ。5階層への到達をアレクが目標にしたのはそれが金を稼ぐ上で最も効率がいいからだが、通常の初心者はまずクエストクリアを目標に動くから、予想がずれてしまっていた。
アレク以外のメンバーの元気がなかったのは疲れと、目標未達によるモヤモヤが少しあったから。
あれだけの成果を残したのだからもっと喜べばいいのにというサラの考えは、他の比較対象を
知らないミリア達にはわからないことであった。
「久しぶりに期待できそうな冒険者が現れたわね…」
サラの呟きは誰にも聞こえないほど小さかったが、アレクたちにいち早く目をつけたのは間違いなくこのときのサラであった。
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