第36話 vs ジャイアント・トード①
大きな扉を抜けるとだだっ広い空間に出た。天井も高く、これまでの鉱山の通路のような造りとは雰囲気が違った。
薄暗い部屋の中央に、ジャイアント・トードがいた。
これまでの魔物とは大きさからして違う。踏みつけられるだけで大ダメージを負いかねないその巨体が異物の侵入に気づき、こちらへ振り向いた。
「作戦通り、散るぞ!」
アレクの掛け声を元に仲間たちはバラバラに分散した。
一息後には元々アレクたちが居た場所に毒液が噴出されていた。
遠距離攻撃を持つ敵との戦闘経験が少なかったアレクはジャイアント・トードについて事前に情報収集をしていた。
集団で固まっている相手には毒液を吐いてくると聞いていたが、早速情報が役に立った。
5人はジャイアント・トードを取り囲むように散らばった。問題なのはここからで、ロイやルミエラといった回避や防御が得意ではない仲間に攻撃がいかないよう注意を引く必要がある。
「うおお!ウォークライ!」
ギルが魔力を帯びた雄叫びを上げた。戦士としてレベルアップしたことで覚えたスキル『ウォークライ』は相手の注意を引く効果がある。
ジャイアント・トードの視線がギルへ向かう。そして長い舌が勢いよく伸びてギルに襲いかかった。
「うおっ、危ねえ!」
かろうじて盾で弾く。弾かれた舌は逸れて、地面を削った。
「風の槍よ、穿て。ウインドランス!」
ロイの放った風の槍はジャイアント・トードの右後ろ足に突き刺さった。少し出血したが大きなダメージはない。
ロイの方へ振り返った隙にアレクが接近していた。
(狙いは、ここだ!)
『縮地』によって一気に距離を詰めたアレクは心臓がある中央目掛けて高速の突きを放った。
まったく意識外からの攻撃にジャイアント・トードは回避出来ていない。
(もらった!)
そう思ったアレクだったが、刀はジャイアント・トードに突き刺さり、心臓に達する前に止まってしまった。
「なっ」
予想外の事態にアレクは焦りを覚えた。心臓さえ突けばジャイアント・トードなんて楽勝よ、と以前一緒に冒険した中堅冒険者から聞いていたからだ。
まさかこんなに分厚い筋肉に覆われているとは思っていなかった。
ジャイアント・トードは突き刺さった剣を抜こうと体を大きく振った。その衝撃で剣共々アレクも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「アレク!」
ルミエラがアレクの元に駆け寄ろうとする。アレクが接近できるよう注意を分散し、一突きで終わらせるのが今回の作戦だったため、仲間たちは動揺を隠せなかった。
(少し、舐めていたか…)
身を起こしながらアレクは自分の考えの甘さを反省していた。幸い骨は折れておらず、床に叩きつけられたときに打撲した程度だった。
(どう立て直すかな)
作戦の変更が余儀無くされた今、パーティの底力が試される場面が早速来てしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます