第37話 vs ジャイアント・トード②
「アレク、怪我はない?」
「ちょっと打っただけで大したことないよ。回復魔法は取っておいてくれ」
「わかった。無理しないで」
そう言ってルミエラはアレクの元を離れた。作戦は失敗に終わったが、固まっているのは危ない。
防具を新調して良かったとアレクは自分の判断が正しかったことを実感した。
身軽さを重視して革鎧の下にくさりかたびらを着るだけにしたが、衝撃の大部分を吸収してくれたお陰で戦闘への影響は軽微だ。
ギルがウォークライを使い、ミリアが身軽さを活かして攻撃することで、アレクが離脱している間注意を引いている。
ロイは魔法を撃つタイミングを図っているようだが、なかなか効果的な場面は訪れない。
(アレクの心臓への突きが通らないとなると、撤退も視野に入れるべきか…)
ロイは撤退を考え始めていた。
ボスとの戦いは入ってきた扉から出れば離脱可能だ。もっとも、そのためには全員が出れるだけの時間を作らなければならないのだが。
(アレクの様子は…!?何をしてるんだ!?)
ロイが驚くのも無理はない。アレクは今、ジャイアント・トードへ向かって歩いていた。刀をカラカラと引きずりながら。
まだジャイアント・トードが気付いていないが、盾のないアレクでは舌の直撃を防ぐことが出来ない。どう考えても自殺行為だった。
しかし、あとほんの数メートルの距離まで近づいてもなぜかジャイアント・トードは反応しない。離れた場所にいるギルとミリアへ舌を伸ばし続け、眼下に迫ったアレクに注意を向けていない。
アレクは驚くほどの自然さでジャイアント・トードの懐に潜り込むと、そのまま刀を心臓に突き刺した。
先程の超高速の突きとは比べものにならない速度だったが、ズブズブと刀は突き刺さり、そのまま心臓に到達した。
その瞬間、ジャイアント・トードはそれまでの動きをピタッと止め硬直し、そのまま光の粒子となって消滅した。
「勝った…のか?一体何が…」
攻撃を防ぎ続け、全身ボロボロになったギルは状況がわからない。というよりも、アレク以外の全員が作戦は失敗したものと思っていたため、勝利の喜びより困惑が大きかった。
「損害はギルの負傷だけ。実質ゼロだな」
アレクはそう言って笑った。いや、それゼロじゃないだろとツッコむ元気はギルにはなかった。
「少し休んだらなんで倒せたのか、教えるよ。ちょっと疲れた…」
そう言ってアレクは座り込んだ。しばらくしてアレクはなぜ2度目の突きで倒すことが出来たのか語り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます