第35話 2度目のダンジョン攻略
荒野の洞窟の攻略は前回よりもはるかに早く進んでいた。
なにせ今回はアレクが最初から前衛として戦っている。ギルが魔物の攻撃を受け止めている間にアレクが斬る。
数が増えればミリアの弓矢で仕留める。魔法をほとんど使うこともなく前回と同じ3階層に到達していた。
その上、ギルとミリアの装備も改善されている。
一つ一つの戦いが遥かに効率的に終わっていった。
「前回アレクが戦わなかった理由がわかったよ…僕とルミエラが魔法使う機会がなかったら潜る意味ないもんね」
「すごく、退屈」
「俺は6レベルだからな。このくらいの階層なら全く問題ないが、もう少し潜ったら2人の出番も増えるから安心してくれ」
現在アレク以外の4人は3レベル。10レベルまでが初心者、10〜20が下級、20〜30が中級、30以上で上級と言われる。
3レベルではまだまだ駆け出しもいいところだが、レベルは身体能力や魔力量などを表す目安であって強さの絶対的な指標ではない、というのがアレクの師であるサイトウの考えだった。
中堅冒険者が酒場でレベルが低い者を馬鹿にしている姿を度々見かけるが、サイトウはアレクにこういって聞かせていた。
「強さというのはな、『勝てる』ことなんだ。強いから勝てるんじゃない。勝てるから強いんだ。そしてそれは武力に限られた話ではない」
アレクはサイトウの言っていることは正しいと本能的に思っている。
レベルは強さの本質ではなくあくまでも一要素に過ぎない。このパーティメンバーの能力を見ればそれがよくわかる。
とはいえ、レベルが1上がるだけでも身体能力が大きく向上することは事実だ。
ジャイアント・トードは推奨レベル5と言われており、想定よりも早く進んできているので3階層からはあまり焦って進まず魔物をしっかりと狩りながら進むことにした。
アレクはあえてあまり戦わないようにし、ロイとルミエラの出番を増やした。
「『スリーピングシャドウ』」
ルミエラの覚えた新しい魔法がコボルトに命中し、眠らせる。
紫色の球体をぶつける事で相手を眠らせることが出来る魔法だが、速度が遅いため今回は背後から不意打ち気味に狙った。
眠りについたコボルトにミリアが襲いかかり永遠の眠りを与えた。
「ルミエラの新魔法いい感じじゃない!すっごくやりやすいわ!」
「えっへん」
ルミエラが大きな膨らみを誇示するように胸を張っ自慢気にしている。実際前回潜ったときよりも遥かに戦略の幅が増えている。
「ロイ、ダマンゴの群れが来たぞ!」
ギルの声に振り返ると奥からキノコ型の魔物であるダマンゴが3匹現れた。
体から射出される胞子を吸うと体が痺れてしまう近接殺しの厄介な魔物だ。
「了解!エアウォール!」
ロイの新魔法である風の壁が胞子を全て吹き飛ばした。
「『ウインドカッター』!」
続け様に放たれた風の刃がマダンゴ3匹を両断した。
「レベルアップのおかげか、魔法の威力が全然違う…アレクの言う通り僕とルミエラはダンジョンに潜らないと強くなったのかわからないね」
新魔法にレベルアップと一気に戦力を伸ばした2人は前回の探索時は魔力量の少なさと使える魔法の少なさから少し足を引っ張る部分もあっただけに克服できて嬉しそうだ。
そうこうしているうちに2日目の夜となり、一行はジャイアント・トードがいるという部屋の前まで辿り着いた。
全員が緊張している。無理もない、アレクすらボスと戦うのは初めてだ。ここまで大きな敗戦はなかったが、油断はできない。
「よし、いくぞ」
仲間達に短く告げて、アレクは扉を開けた。
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