第48話 レイラ・クレストア②

「なんだか聞き覚えのある金額なんだけど、これは偶然なのかい?僕の予想ではまた君の根回しか、不幸体質が発動している気がするんだけど」


「根回しなんて出来るわけないし、不幸体質は俺のせいじゃないっつーの!しかも貴族の家のゴタゴタなんて俺が関係してるわけないだろ!」


「まあ、アレクが不幸なのは置いとくとして、それで大金が必要なのはわかったけどどうしてあたしたちなの?他にもたくさん冒険者がいると思うけど」


「皆様も短期間に大金を稼ぎ出す必要があると以前別の冒険者の方から聞いたからですわ。目的が同じなら話が早いかと思いまして」


そこでアレクは合点がいった。以前仲間たちとダンジョンに潜る前、パーティに入れてもらった冒険者たちがいる。彼らには信用してもらえるようにこちらの事情をある程度話していた。


大いに共感してくれた彼らは酒場でもアレクたちのことを話題にしていたのだろう。それを偶然レイラが聞いたのかもしれない。


「たしかにあたしたちはみんな大金が必要なんだけど、でも他の冒険者達だってお金のためにやっているわよ?それだけの理由で決めていいの?」


ミリアは今の仲間たちのバランスを気に入っていた。なのでそこに入ろうとしてきたレイラに対してやや攻撃的になっている。他の理由があるのかは、本人もよくわかっていない。


「新米冒険者たちでは今後どうなるかわからない。ある程度長くやっている冒険者達ではわたくしが実力不足かつパーティのバランスを崩しかねないので入れてもらえないでしょう」


たしかにレイラにちょうど良いパーティというのはなかなかないだろう。

将来性を考慮してベテランパーティに入れればいいが、危険が伴う。


「その点皆様はたった二回目の冒険でジャイアント・トードを討伐し、仲間関係も良好なので今後に期待ができる。そしてレベル7のわたくしと同じくらいの実力と見受けられますわ」


たしかに、アレクたちは今全員がレベル7だった。レイラの話した内容は至極まともで別の理由があるようには思えなかった。


「まあ確かに、俺も5年以内に一人1億ルピーという目標を再提案しようと考えていたところだったから丁度いいのかもしれない」


「10年じゃ、なかったの?」


「10年だと時間があるって感じて緊張感が薄れるし、命をかけつづけるのはそれだけでリスクがある。それに、短期間で稼ぎ出す方法にいくつか当てができたんだ」


「アレクはこの女を信用するの!?元貴族で貴族位剥奪されたって普通じゃないわよ!怪しすぎるわ!」


ミリアがレイラを指差しながら感情的になって叫ぶ。こういう話もするかもと思い、今日は2階の防音個室部屋を借りているので問題はないがあまり人に聞かれたくない話だ。


だがミリアの言うこともよく分かる。どう考えたって普通ではない。仲間にするかどうか判断するにはまだ情報が少なすぎる。


「落ち着け、まだ話をすべて聞いていないから判断できない。ただ前向きに話を聞いてもいいかもしれないと思っただけだ」


レイラの実力は試してみないとわからないが、質量魔法の使い手というのは大変魅力的だ。もしパーティに加わるのであれば大きな戦力になりうる。それだけに慎重に判断していく必要があるとアレクは感じていた。

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