第39話 ボス戦を終えて

「アレクが刀を引きずりながら歩き始めたときは頭打っておかしくなったのかと思ったけど、そういうことだったのか…でも戦闘中によく気がついたね。僕は撤退するしかないと思ってたよ」

「偶然聞いたカエルの話を思い出したのは運が良かったんだ。しかし、用意周到に挑んだつもりだったが実戦はわからないもんだな」

「いや、実際ジャイアント・トードはちょっと挑むの早かったと思うわよ?アレクの提案に乗ったあたしたちも問題だけど、もう少し安全に行動しないとすぐ死んじゃいそう…」


ミリアの提案はもっともで、計算でギリギリ大丈夫では実戦のイレギュラーに殺されてしまうとアレクも感じていた。

今回は結果オーライだったが反省すべき点が多いのは事実だった。


「まあ、結果的に勝ったからよかったじゃねぇか!今は初めてのボス戦勝利を喜ぼうぜ!」

「大勝利、ブイ」


ギルとルミエラの2人の言葉に全員がふっと気を緩めた。

何はともあれ、初心者狩りと言われるジャイアント・トードを倒したのだ。それも予備校や訓練校に行ったとはいえ、アレク以外は通算2回目の冒険で。

これは過去に類を見ない実績といえるだろう。


「そうだな、みんなありがとう。みんなをパーティに誘って正解だったよ」


アレクは心からそう思った。自分の提案で全員を危険に晒したことで今後はもっと意見を取り入れながら予定を決めていこうと反省したが、同時に仲間たちの頼もしさを実感した今回の冒険でもあった。


「いつもは自信家のアレクからそんなこと言われると調子狂うわね」


ミリアが照れたように言う。頼られるのは悪い気がしない。


「俺は不幸体質だから準備を徹底的にやるだけで、自信家のつもりはないんだけどな。まあ今回は例外になったが…」

「珍しいよね、アレクが博打うつのは。大体勝算あるときしか挑まないもんね」


ロイがからかうように言う。パーティの雰囲気も落ち着き、ある程度休めたところでアレクが立ち上がり言った。


「さ、気を取り直して次のフロアに向かおうか」


その場の全員が「え、」と言って固まる。完全に「さ、帰ろうか」の流れではなかったか。


「まだ時間はある。それなら行けるところまで行かないと損だろ?」


まだ稼げるんだぞ?そう言わんばかりのリーダーに、やはりついて行く人間を間違えたかと後悔しそうな4人だった。

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