第51話 魔力消失

「魔力を持たずに生まれてきた?たしかに珍しいな」


基本的に生き物は魔力を持って生まれてくる。これは大気中に少量のマナが漂っているためと言われるが、極稀に魔力を持たないで生まれてくる者もいる。


「祖父が聞いた話では、クレストアの一族は代々膨大な魔力をもって生まれてきていたのに、伯爵家となってから生まれる子供は徐々に魔力量が少なくなっていったそうです」


「他に考えられる原因は何も無かったってことか?」


アレクはこのような話を聞いたことがなかったため、一応尋ねたが、


「ええ、そうです。そして私の祖父の代で遂にゼロとなり、父の世代、わたくしの世代まで魔力持ちは誰も生まれず、その中で唯一魔力をもって生まれた例外がわたくしですの」


これは異常と言えた。同一家系でここまで魔力を持たない子供しか産まれてこないことはありえない。


しかも魔力量はある程度遺伝すると言われているので、クレストア家のように以前は魔力量が多かった家系で少なくなることはほとんどない。

ましてやゼロになんて通常はなりえない。


「もし仮にエンペスト家の呪いで魔力を枯らされているとするのなら、計画的に事に及んでいるのであれば、わたくしが魔力を持っていることが公になった瞬間暗殺を目論むかもしれない」


レイラの目にうっすらと涙が浮かぶ。


「そう考えた父はわたくしが魔力をもっていることを隠すことにしました。例えそれで家が貴族でなくなるとしても、娘の命を優先してくれたのです…」


父は自分のことを想い、体を壊しても決してそのことを公にしなかった。

レイラは何度も公表するよう父親を説得したが、父親が首を縦に振ることはなかった。


「直接レイラさんが殺されてしまえば結局家は滅びるし、一族全体のことを考えるとかなり賢明な判断だったんじゃないかな」

「ロイ、フォローのつもりかもしれないけど全然フォローになってないわよ…」


ロイの発言にミリアがツッコむ。ただ、娘の命を守りながら家が存続する可能性も残したこの判断は賢明だったとアレクも思った。

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