第52話 レイラの覚悟

「クレストア家は商売が得意な一族ではありませんでしたが、かつては領民の評判もよく税収も良かったので裕福でした。しかし、代を重ねる毎になぜか我が一族の評判は悪化し、人口が減り、税収も減っていきました。特に悪政を敷いたわけではなく、むしろ税金も安く暮らしやすい土地だったと思います」


レイラは悲しそうに続ける。


「こうして資産を減らしていった我が家は父の代で資産を増やすための博打的な事業に手を出して失敗し、質量魔法の消失と重なってお家取り潰しとなったわけです」


「話を聞けば聞くほどエンペスト家がきな臭いわね…つまりレイラはエンペスト家が呪いをかけて質量魔法の使い手を消して、領地に嫌がらせとかして住民を減らして伯爵位を手に入れようとしたって考えているのね?」


レイラは少し悩んだが、


「正直、その可能性が高いのではないかと思います。実際、我が家が潰れて一番得するのはエンペスト家ですし、ダレンが伯爵家の我が一族を羨んで呪いをかけたのであれば筋が通るかなと」


と話した。ここまでの話は自分や自分の親族の想像の域を出ない。証拠が出てこないのだ。

もし本当にエンペスト家が何百年もかけて乗っ取りを目論んできたとすれば、とてつもない執念である。妄執と言っていい。


「たしかに、その可能性はあるかもしれないな。しかし、もしそうだったとして、証拠が出てきたらレイラはエンペスト家に復讐するのか?」


アレクの問いにレイラは言葉を詰まらせた。数日前に平民となったばかりなのだ。本来は性を名乗ることすら許されない身分。まだ自分の身の回りを、感情を整理しきれていない。


「今はまだ、わかりません。何をされていたのかすらよくわかっていないのです。ただ、長子としてとにかく我が一族を貴族に復位させる責務があります。そのために、冒険者として稼ぎます。今はそれがすべてです」


レイラは覚悟を決めた目をしていた。自分の力で家を復興させる覚悟。生半可な道ではないが絶対に成し遂げると決めていた。

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