第50話 呪術師 『ダレン・エンペスト』

『エンペスト家』と聞いて真っ先に人々が思い浮かべる人物は過去の大戦で大きな功績を残した『ダレン・エンペスト』だろう。


彼は呪術のエキスパートで、戦場で華々しく活躍することはなかったが、敵国の将官たちを数多く暗殺した。


物理的な距離とは無関係に殺害するその能力は一族でも最も才能に溢れた彼にしか使えなかったのだが、エンペストの名は敵国にとって恐怖の象徴となった。


そして大戦での功績を認められ、ダレン・エンペストは子爵となった。貴族位としては悪くないが、同じく大戦で名を上げたクレストア家が伯爵家となったことに大きな不満を持っていたという噂話は当時から存在している。


ダレンの名は当時から敵味方問わず恐れられていた。そのことが強大な権力を与えることを躊躇させたのではないか、と語る歴史家もいるが真相は分からない。


現在はダレンに匹敵する呪術を使える者はいないが、エンペスト家に呪術を使える者は今なお残っている。


「わたくしの曾祖父は、孫である祖父が魔力を持たずに生まれてきたとき、こんなことを言っていたそうです」


レイラは口に出してはいけない言葉を吐き出すかのように言った。


「『ダレンの呪いじゃ』と」

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