第33話 シルバーバレット
次の日は全員が仕事を休み、装備や魔導書を買いに街へ出かけた。魔導書は予定どおり100万ルピーずつ使い、全てとは言わなくともいくつか新しく使えるようにしてほしいというアレクの指示の下、習得に向けた読み込みを開始していた。
残ったアレク、ミリア、ギルの三人は武器と防具を買いにギルが働く鍛冶屋かつ武器・防具屋である『シルバーバレット』を訪れていた。
「おやっさーん、きたぜー」
「おお、ギルか。客として来るのはなんだか違和感あるな」
そういって店の奥から出てきたのはドワーフのダンガン。モジャモジャのひげに小柄だが筋骨隆々の体で、これぞドワーフという姿だ。ギルの師匠で街でも評判の鍛冶師でもある。性格は職人気質で頑固な面もあるが、話せばわかる人でギルはとても信頼を置いている。
「おまえなら説明はいらんだろ。好きなもの見ていけ」
「おう!いいもの買って帰らせてもらうぜ!」
三人は防具コーナーに行き物色を始めた。防具に使える予算は三人で200万ルピーの予定だ。普通の冒険者ならアレク達のレベルであればこれだけの金額は出せない。せいぜい10分の1の20万ルピーくらいだろう。
ダンガンはギルからこの話を聞いたとき驚いたが、理にはかなってるとも思った。
(冒険者の死亡率は始めてから三ヶ月くらいが最も高い。三ヶ月過ぎればある程度慣れてきて危険の見極めができるからだ。そういう意味では最初死なないように良い防具を使うという判断は悪くない。まあ金がなきゃできねぇんだが…)
アレクのことはギルから度々聞かされていたが、かなりのキレ者のようだ。今日実物を見て、武人としてのオーラを身にまとっていることには驚かされたが。
(頭使うのが得意だから参謀タイプかと思っていたが、どうも立ち姿からしてかなりできそうだな。冒険者になる前から良い師匠の元で修行を積んでいたのか)
ギルから冒険者を副業としてやりたいと聞かされたときは鍛冶の道をす片手間でこなす気かと怒りを覚えたが、冒険者をするのも鍛冶の道を極め、自分の店を持つための手段だと聞き納得した。ただ成功するかは今日まで懐疑的だったのだが、
(これはもしかすると大当たりのパーティを引いたかもしれんなぁ)
リーダーのアレクが大人物だとするなら、彼が集めた他の仲間も優秀なのだろうとダンガンは思っている。ダンガンは自分の読みが的中することをこのあと少しずつ知っていくことになるのであった。
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