第77話 理由
「そういえば、きちんと聞いたことがなかったのですが、皆さんはなぜお金が必要なんですの?」
ミノタウロスとの戦いの翌週、疲れた体を休めるために冒険は休みとし、レイラ、ミリア、ルミエラの3人は新しく出来たカフェでランチを楽しんでいた。
そんな中でレイラは以前から聞くタイミングを逃していた疑問をぶつけてみたのだった。
「あー、そっかレイラが加入してからは冒険のことばかりで将来の夢の話とかしてなかったもんねー」
「してない」
「みなさんがそれぞれ本業を持っているのは知っているので、なんとなくそれに絡んでいるのかなと思っていたのですが・・・」
「あたしは飲食店を持ちたいんだよね。それも小さな店じゃなくて超一流の味で、超一流の接客を兼ね備えた店をね。だから今も自分の腕を磨いているし、初期投資もそれなりの金額が必要なの」
「はぁー、そういうことでしたの。だから冒険者でお金を貯めているんですのね」
飲食店を経営するために冒険者になるような女性はそうはいないだろう。
しかし一流の料理人・スタッフを揃えるには人件費だけでも莫大な金額がかかる。ミリアのことだから金持ち相手の商売だけではなく、幅広い層に食べて欲しいだろうし、そうなると初期資産はいくらあっても不足ではない。
ルミエラはどうなのだろうと思い、ちらと目配せする視線に気づいたルミエラはゴクンと口の中のものを飲み込み、
「孤児院を、大きくしたい」
と言葉少なに語った。
「孤児院、ですか?」
「ルミエラは元々孤児だからね。自分が生まれ育った孤児院をもっと大きくして、同じような境遇の子供をもっと大勢救えるようにしたいんだって。流石シスターって感じの夢だよね〜」
「そうなんですの・・・ギルさんとロイさんはどうなんですか?」
「ギルは超一流の鍛冶屋になりたいんだって。ドワーフにしか使えない鍛冶専用の特殊なスキルがあるんらしいんだけど、それをヒューマンで再現するには高価な設備が必要みたい。あとはレベルアップで腕力が上がるのも冒険者をやるメリットみたいだね」
「ロイは、自分の学校を作りたいって。教育を、変えたいらしい」
「それは確かにロイさんぐらい賢くないと出来ないかもしれないですね・・・」
「まあロイは昔から色々と思うところがあったみたいよー。教育を変えることで才能ある人材をしっかりと伸ばすことができるのと、努力できる環境を平等に与えたいってところから来てるから、そういう意味ではアレクの目標ともリンクしてる部分があるのかな」
「アレクさんの目標ですか?そういえば聞いたことなかったですけど、なんですの?
レイラの考えに寄り添ってくれるアレクは一緒にいて心地が良い。そんなアレクの望みが何であれ、力になりたいと思っている。
「アレクは妹を生き返らせたいのよ」
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