第78話 目標

「妹を生き返らせる?でもそれなら・・・」


「たしかに巨額の借金をして生き返らせることはできるわ。でもアレクの妹は訳ありでね、生きていると命を狙われ続けるのよ。だからあいつは狙い続ける原因がなくなるように、この社会を根本から変えようとしているの」


この世界には蘇生魔法が存在する。膨大な資金と引き換えに、神官によって蘇生を施すのである。様々な条件はあるが、アレクの妹は少なくともその条件を満たしてはいるらしい。

しかし、生き返らせらない。障害があるのである。


「根本から・・・それって・・・?」


「ま、あたしが知ってるのもここまで。これ以上知ると危険が及ぶかもしれないからって教えてくれないのよ。既に一蓮托生の関係だってのに、一人で背負っちゃって・・・」


プクーと頬を膨らませ、ぶつぶつとミリアが拗ねている。その光景を微笑ましいと思いながらもレイラはアレクが何を変えようとしているのか、思いを馳せていた。


「レイラは?」


唐突にルミエラが声をあげた。レイラは直ぐに自分の将来の夢を聞かれたとわかったが、とっさに言葉が出なかった。


「私は、家を再興しなければいけませんので・・・」


「それは、レイラがしたいことなの?」


たしかに、義務だとは思っていたがミリアたちのような前向きな気持ちで向き合えるものかというと疑問である。家の再興という目標自体が大きすぎてその先を考えることが出来なかった。


「今は特にない、かもしれませんわ」


落ち込んだように言う。自分にはやりたいことすらないのか、と少し悲しい気持ちになった。家を再興出来たとして、その先どう生きて行けばいいのだろう。何をしたいのだろう。答えはなかった。


「さみしい人間ですわね、私」


落ち込むレイラをみて、ルミエラは力強く言った。


「大丈夫、アレクといたら見つかる」


その言葉にレイラは顔を上げた。


「そうよー、あたしたちだってこうなりたいって思うことが出来たのはアレクが道を示してくれたからよ。それまではどうしたらいいかわからなくて途方に暮れてたんだから。あいつはめちゃくちゃだけど、一緒にいればきっとなにかしら自分のやりたいことが見えてきたとき、道標になってくれるわ」


すごい信頼だ、と思う。それだけ彼女たちは恩義を感じているのだ。


ここにいれば自分にもいつかやりたいことが見つかるのかもしれない。レイラは少しずつではあるが前向きに考えられるようになっていた。

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