第76話 契約

そしてミノタウロスの討伐へと至る。時間をかけて倒したのでは他の冒険者と同じのため、低レベルかつ最短での討伐を目指した。


事前に計画はテオドラにだけ明かし、出資の約束を取り付けると共に上手く行ったらそれとなく貴族間に噂を広めてほしいと依頼していた。

テオドラに説明した条件は簡単にまとめると以下である。


①『金の有望株ゴールドラッシュ』が今後冒険で手に入れる資産(アイテム、アイテムの売却益など)についてはすべて出資者の物となる。(出資者にはアレクたち自身も含まれる)


②冒険の経費、アレクたちの日当(レベルに比例して上がっていく)、装備を買うなど巨額の支出に備えた貯蓄(獲得資産の50%)を手に入れた資産から差し引き(この残った金額を利益とする)、年4回出資比率に応じて利益を分け合う


③『金の有望株ゴールドラッシュ』が活動を終えるときには、残っている資産を出資比率に応じて分割するものとする。その際には出資金の元本は保証するものとし、支払えない場合は借金となり返済の義務を負う


④万一アレクたちが全員死んだ場合、この契約は無効となり、周囲の人間に返済の義務は発生しない。ただし、パーティメンバーのうち一人でも生き残った場合は協議を行い、冒険者を辞める場合はその時点で貯蓄分含め資産を分割する。


⑤パーティメンバーが冒険者を辞める場合、出資者と協議をし合意が得られなければ辞められない


⑥『金の有望株ゴールドラッシュ』は年4回、活動の内容とかかった費用の内訳を出資者へ報告する義務を負う


⑦追加の出資は別途相談とする


他にも細則はあるものの、契約の大筋としては上記の通りである。

当たり前だが冒険者でこんな契約を持ちかけたのはこの世界の冒険者でアレクが初めてだろう。


それまでもアレクのことを評価していたテオドラだったが、この仕組を考えたアレクの発想の柔軟性に内心では舌を巻いていた。

なにせお互いにデメリットがほとんどない。唯一アレクたちが死ぬ可能性がネックとなるが、簡単に試算すると数年と経たずにリターンが得られそうであった。アレクたちがそこまで危険を犯すとも思えなかったため、最初の出資者として名乗り出たのだった。


(まあ、ミノタウロス戦だけは例外的に危ない橋だと事前に聞かされていたからね、、ここで負けていたら金を落としたとでも思って諦めるさ)


逆に勝利することで数年後には何倍にもなって返ってくるかもしれないのである。分の悪い賭けではなかった。

結果は大成功、ミノタウロス戦の恩恵を一番享受できるのはテオドラとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る