第54話 レイラの戦法
次の週末、アレクたちは再び荒野の洞窟を訪れていた。
今回の探索はレイラの実力を試すことが主な目的だった。
レイラはダンジョンには何度か潜ったことがあるということで、冒険者免許も所持していたので、すぐに一回潜ってみようということになった。実力を試すにはそれが一番わかりやすい。
「レイラ、俺たちは君が戦っているところを見たことがない。だから今日がパーティ加入に向けた最終試験みたいなものだ」
「ええ、わかっています。絶対に結果を残して皆様に認められてみせますわ!」
レイラは吹っ切れたようで、かなり気合いが入っている。
初めて会った時は張り詰めているように感じたが、今は少し精神的に落ち着いたように見える。
「魔物共をぐしゃぐしゃにしてやりますわ!」
「…落ち着いて戦ってくれな?」
いささか気合いの入り過ぎた感はあるものの、パーティ全体のモチベーションも悪くない。
今回も週末の2日間での探索となるが、目標は10階層とした。
ボスと戦う前に引き返す予定だが、それでもなかなかのハードスケジュールといえる。
アレクたちにとっては7階層までは来たことがある道で、そのため探索時間を短めに設定していたのだが、レイラがついてこれるのか懸念していた。
だが、その心配は杞憂に終わった。
「えーい!」
ドカンと振り下ろされたハンマーにコボルトがぺしゃんこに潰される。
巨大なハンマーを軽々と振り回すその姿を仲間たちは恐ろしく思いながら見ていた。
「凄いね…僕は質量魔法っていうのは魔物に直接かけて、重くしたり軽くしたりする補助的な魔法だと思っていたんだけど、まさか自分の武器に使うとは」
「最初馬鹿でかいハンマーを担いできた時は心配したが、全然杞憂だったな。基本軽くしておいて振り下ろす瞬間だけ重くするって、かなり凶悪だぞあの戦法は」
またたく間に3匹のコボルトが倒されていった。
攻撃の瞬間以外は動きが素早く隙がないので、このレベルの魔物では太刀打ち出来なかった。
「かつてのクレストア家の当主なら遠方から広範囲の大気を重くして敵を押し潰すようなことも出来たそうですが、今のわたくしの魔力と技術ではこの戦法が精一杯ですの」
レイラは戦闘後にじっと見ていたアレクたちに向けて少ししょんぼりとしながら言う。かつてのクレストア家がどんな魔法か見たことないので分からないが、
(((質量魔法、恐ろし過ぎる…)))
と仲間達は共通認識を覚えたのだった。
伯爵に選ばれるだけの実績と強さはそれだけの能力があったからかと納得がいった。
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