第7話 冒険者になる理由②

通常冒険者は数日ダンジョンに潜って、数日休んでというサイクルを繰り返す不規則な職業だ。


そのため兼業というスタイルを取ることはほとんどない、というかこれまでにそんな冒険者はいなかっただろう。


冒険者が本業で休みの日に他の仕事をする、という逆の形ならたくさんいるかもしれないが。

ここにいる全員が完全週休二日制で休みの曜日もかぶっている。

つまり冒険の日程を週末の二日に固定できるというわけだ。


「で、二つ目の理由なんだが、パーティのバランスだ。まずはこの表を見てほしい」


そう言ってアレクは懐から一枚の羊皮紙を取り出した。


「なになに…『パーティの職業バランスと死亡率の関係性について』だと?数字がたくさん書いてあってよくわからんな…アレクこれどういう意味だ?」

「これは首都の学者たちが昨年発表した研究レポートだ。要はどんな職業を組み合わせてパーティを作ったら死ににくいかって話だな」


アレクが持ってきたのは首都で研究された最新のレポートで、アレクがこのメンバーでなら冒険者としても成功出来るのではないかと確信するに至った根拠の1つだった。


「この表を見る限りアタッカーが一人、タンクが一人、魔術師が一人、ヒーラーが一人、レンジャーが一人の計五人、ないしはそれに一人加えた六人が一番死亡率が低いと書いてあるね。

なるほど…だからこの五人か。タンクはどっちがやるつもりなんだい?」


「ギルにやってもらうつもりだよ。まあ実際にやってみないと判断出来ないとも思ってるけどな」

「???ちょっとロイとアレク、二人で話してないで私たちにも分かるように説明しなさいよー」


そういってミリアはほっぺたを膨らます。幼く見えるが実際彼女はこの中では一人だけ一歳下だ。


「すまんすまん、俺が思うに体の大きなギルはタンク、勉強の得意なロイは魔術師、身軽で回りに気を配れるミリアはレンジャー、実は面倒見が良くて優しいルミエラはヒーラーにぴったりだって思ってるんだ」


アレクはこれまで実力のある冒険者パーティ相手に商売をした経験から、性格や雰囲気、能力といったものが職業の適性にけっこう反映されるということを理解している。


学者が書いたレポートを見る前から実は考えていたプランだったが、このレポートはアレクの勝算をより高めることとなった。

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