第12話 クエストの選び方

「悪い、悪い、遅くなった!」


「ギル遅すぎるよ、2分37秒の遅刻だ」


「細かいしそんな大した遅れじゃねぇだろ!いや、遅刻したのは悪かったが!」


待合せ場所のギルド会館に最後に着いたのはギルだった。


「ロイの言う通り。時間は有限」


「まあそのくらいにしてあげたら?ギルも反省してるみたいだし」


「ミリアは早く冒険したいだけ。子供」


「なっ、誰が心も体も未成年よ!立派なレディだっつーの!」


ちなみにミリアはアレクの次に来た。待ち合わせの30分前。

純粋に冒険を楽しみにしているのはミリアが一番かもしれない。ワクワクすること、未知のことが好きな性格なのだ。


「おいおい、元気なのはいいけどそろそろ本題に入らせてもらうぞ?」


アレクの言葉に一同気持ちを切り替える。お友達気分で緩いままダンジョンに入るとすぐ死ぬと予備校で教官から嫌と言うほど聞かされている。


調子に乗った初心者冒険者を見逃してくれるほどダンジョンは甘くないのだ。


「今回のクエストはゴブリン退治にしておいた。まあダンジョンに潜るのも初めてだから、ダンジョンがどんなものか味わうのが優先でこれはそのついでだな。討伐最低数は10。それ以下だと違約金が発生するから出来るだけ狩りたいな。そして報酬金だが…1万ルピーだ」


全員が本業として給与を得ている。初めての冒険とはいえ、金額は安く感じられた。


「命懸けで働く割には低いな。僕の月収の20分の1じゃないか」


「まあ、そう文句言うなよ。Eランクのクエストの中では最安だからな。ちなみに追加で1匹狩る事に500ルピー貰えるから余力があれば狙って行こう」


「あら?ゴブリンて最弱の魔物って言われてるのにFランクの依頼じゃないの?」


予備校でもそう聞いたような気がする、とミリアは続けた。


「Fランクの依頼は直接的には命の危険がないものになるんだ。薬草の採取や街での手伝いなんかだな。そういった危険の少ない依頼を受けてお金とランクポイントを稼いで、Eランクになってから装備を揃えてゴブリン退治に行くのが『安定した冒険者生活の始め方』という本では勧められていた」


アレクの下調べの綿密さに驚いた4人だったが、


「そんな本があるならそれ通りにした方がいいんじゃねぇのか?」


と言ったギルの疑問は全員が思ったことだった。


「いや、著者を調べたんだがDランク冒険者止まりで引退した人だった。そんなやつが出した攻略本なんて信用出来ない。俺はベテラン冒険者に今自分が初心者ならどうするか聞いて回って計画を立てたからな」


「本業の合間にそんなことまでしてたの!?…アレクあんた相変わらずやるとなったら徹底的ね…」


ミリアの脳裏に浮かんだのは昔ミリアの所属するレストランに嫌がらせをしてきた男の末路だった。

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